2011/09/07

normotensive ischemic acute renal failure

 今度の先生は、気軽に良質の論文を紹介して臨床に応用するのが得意だ。こないだもNEJMのnormotensive ischemic acute renal failureについてのレビューを紹介してくれた(NEJM 2007, 357, 797-805)。これは「血圧が高い患者さんは、収縮期血圧が100-115mmHgに下がっただけでも腎が虚血になる」とか「急性腎不全がearly sepsisの兆候なこともあるから感染を見逃すな」とか賢明な知恵が書いてあるのみならず、分子や細胞レベルで急性尿細管障害を説明しており読んでいて「今見ている患者さんにはそんなことが起こっていたのか!」と勉強になった。

 たとえば、急性腎障害でcastをみるのは、尿細管障害によるNa再吸収障害(尿細管内のNa濃度上昇)がTamm-Horsfallタンパクの重合化を起こしこのタンパクがジェル状になるからだ、とか。腎虚血によるATP不足がbrush borderを喪失させたりNa-K ATPaseや細胞間基質を逆向きにしたりしてしまう(血管側にあるべきものを内腔側にしてしまう)とか。論文の図3では、虚血に伴う尿細管障害の一連のメカニズムが美しく描かれ目からうろこだった。ATNといっても、実際には単に尿細管が壊死を起こすだけではない。もっと多様な病態生理がそこにある。