LVAD(left ventricle assist device)についてのレクチャがあった。というのもLVAD(やその他のcirculatory support)は心移植までのつなぎとしての治療(bridge to transplant, BTT)として用いられてきたが、いまではdestination therapy、つまりLVADと一緒にどこまでも行こうという治療に代わって来たからだ。
2001年にLVADと内科的治療を比較した論文が出て(NEJM 2001 345 1435)、LVAD群は1年生存率に優れていた(50%)が2年生存率には差がなかった。それでLVADは「LVADで余命一年あげます、それまでに移植するか回復するかしましょう」という治療に用いられてきた。
その後、2007年の論文(NEJM 2007 357 9)では改良されたLVAD(Heart Mate II, HMII)が1年生存率を70%まで向上させることが示された。2009年、旧式LVAD(XVE)とのhead-to-head trialでHMIIの優位性が示され、ここで初めてFDAがLVAD(HMII)をdestination therapyとして認可した。
さてこのHMIIであるが、ローターが約9000rpmで常時回転して左室から動脈まで血液を送る仕組みだ。流量は主に後負荷で規定さるので、左室圧と大動脈圧の差が大きい収縮期により血液が流れる。大動脈圧によっても異なるが3-10L/min程度の流量を出力することができる。
この機械は心臓に埋め込まれているが、drivelineというコードで体外のmonitorに接続され、monitorはさらに電源あるいは二つの体外バッテリーに接続される。二つ合わせたバッテリーの持続時間は約8時間で、患者さんは自由に動くことができQOLが上がる。心移植患者よりLVAD患者のほうがQOLが高いという論文も出た(JACC 2010 55 1826)。
さて、LVAD患者が透析をするとどうなるのか。こないだ一件その経験をした。最初はCVVHDF、そのあとHDをした。結果は良好で、透析中も血行動態はよく保たれた。おそらくそれは、透析中の血圧低下を代償するようにLVADからの流量が増えるからだろうと推測する。また透析で除水するとはいえ前負荷が減りLVAD流量が下がるほどではないということだろう。これからこういう患者さんを診る機会が増えるかもしれない。