2011/09/04

ミニ講義シリーズ

 今月からコンサルトで、教育熱心で有名な先生と一緒に働いているので再び習得曲線が急峻になった。今回は、知識もさることながら、いかに分かりやすく説明するかというのが勉強になっている。この先生が回診中にレジデントや学生に説明するのを聴くと、分かりやすさにおもわず感心してしまう。

 たとえば、高カリウム血症を診たときにも、「これはAだ、これはBだ、とあてずっぽうなアプローチではいけないよ」と、系統的な説明を始める。まず溶血、つぎに細胞内外のシフトの話をして、それから腎臓でのカリウム排泄の話になる。

 そこには大きく①GFRの低下、②遠位尿細管へのNa delivery、それに③遠位尿細管でのK排泄があるという。①は腎不全、②は心不全や体液量低下、さらに③についてレニン→アンジオテンシン→アルドステロン→アルドステロン受容体→遠位尿細管principal cells→ENaC(尿細管内腔側のNaチャネル)の働きを順を追って説明する。

 そのうえで、レニンが低下するのは糖尿病性腎症(RTA4、糖尿病性神経障害によりレニン産生に必要なsympathetic toneがでない)、アンジオテンシンの働きを抑えるのはACEI/ARB、アルドステロンの産生を抑えるのはheparinやketokonazole、アルドステロン受容体に拮抗するのはspironolactoneやelprenolone、尿細管細胞自体が障害されるのはinterstitial nephritis、そしてENaCを阻害するのはamiloride、triamterene、trimetoprim、それにpentamidineと説明する。

 こんな風に流れるように、しかも各パートごと噛んで含めるように説明するので学生もレジデントもなるほどと感心して聴いている。先生は回診で高カリウム血症に出会うたびにこの説明をするので、非常に慣れている。高カリウム血症に限らず、低ナトリウム血症でも透析の原理でも、このような分かりやすいミニ講義シリーズがのレパートリーがたくさんある。

 私もそういう型を身につけてペラペラ教えられるようになりたいと思っているので、この先生について盗めるだけ盗もう。