2011/09/04

天の恵み

 尿細管の輸入細動脈(afferent arteriole、"A for arrival")と輸出細動脈(efferent arteriole, "E for exit")がGFRを保つために天から授かったのがautoregulationだ。腎血流が低下しても、輸入再動脈を拡張してできるだけ血液を受けられるようにし、かつ輸出細動脈を収縮して少ない血液量でも原尿濾過が起こるような仕組みだ。輸入細動脈を拡張するのはprostaglandin、輸出細動脈を収縮するのはAT(angiotensin)2。乾燥した陸上でも生物が生き延びられるよう発達したと私は考えている。

 天の恵みに感謝するのもよいが、現実生活にはこの働きを障害する事ばかりあって患者さんは腎機能を落とす。NSAIDs(イブプロフェンのような鎮痛剤)はプロシタグランジンの阻害薬だし、高カルシウム血症、Tacrolimus、血管造影剤はどれも輸入細動脈を収縮させ腎障害をおこす。もともと腎血流が少ない患者さんほどこれらの状況で腎障害がおこりやすい。それで、たとえば血管造影剤による腎症を防ぐのに生理食塩水の輔液が用いられる。