Osmola-L-ityとosmola-R-ityは違う。前者は溶媒1kgに溶けた浸透圧物質のモルで、後者は溶質と溶媒を合わせた水溶液1Lに溶けた浸透圧物質のモル。ただ後者は溶質の量などで分母が変わるので、通常私達は前者をあつかい、単位はmOsm/kgH2Oだ。浸透圧ギャップを測るシチュエーションというのはあって、緊急透析(やfamepizoleやethanol)の適応が決まったりするのでこれが外注では困るのだが、測定はふつうの生化学と違い凝固点降下の原理を利用した特別な器械でされるので仕方ない。
ところで血清浸透圧の計算式といえば[Na+] x 2 + [BUN] / 2.8 + [Glu] / 18が使われるが、他にもある。たとえば、36個の計算式を全部比べた論文がある(図、Intensive Care Med 2013 39 302)。すると従来のものはmeanの差が多いもので35mOsm/kgH2Oにも達したのに対し、新しいもの、たとえばZander's formula = ([Na+] + [K+] + [Cl-] + [lactate-] + [Glu] + [HCO3-] + [urea] + 6.5) x 0.985(ドイツなので単位はすべてmmol/l)はmeanの差が0.5mOsm/kgH2O(信頼区間-6.5 - +7.5)だったという。
39個あるといっている論文もある(BMJ Open 2015 5 e008846)。ここでは高齢者が水を与えられずに脱水になっていることを問題視していて、水不足のdehydration(体液量不足によるvolume depletionとは異なる)を診断するスタンダードは血清浸透圧であると言っている。しかし浸透圧を直接測定するにはお金がかかるしナーシングホームなどで気軽にオーダーもできないので、簡便にオーダーできる項目をつかってできるだけ近似した計算式をみつけ、スクリーニングをかけ浸透圧が高ければ水分を取るようにアラートしようというのが論文の趣旨だ(こういう発想が出るのもやはりイギリスでSI単位系を使っているからだろうなと思う)。すると、もっとも正確だったのはKhajuriaとKrahn(Clin Biochem 2005 38 514)の式で、1.86 x ([Na+] + [K+])+ 1.15 x [Glu] + [urea] + 14だったそうだ。