2015/12/18

D5NS

 治療を即断して救命を図るのはやりがいのあることで、そういうのは英語でheroicと呼ばれるが、同時に一歩さがって冷静沈着な頭で考えることもとても重要だ。この二つを両立することは、いろんな脳内伝達物質がかけめぐっているなかで脳(あるいは脊髄)の別の場所を同時に働かせなければならないので容易ではない。だからOsler卿も平静の心を説いているわけだが、プロなら当然のこととしてやらなければならない。
 さてアルコール性ケトアシドーシス(AKA)には糖と細胞外液が必要だが、日本にはD5NSがなくて、糖入りの外液にはカリウムが入っているので、高カリウム血症があるときなどどうしているのかなと思う。単純に5%糖液と0.9%NaCl液を両方落としてもいいし、一号液(糖とNaClが中途半端に入って等浸透圧になっている)を落としてもいいし、糖入り外液(なんとかD)に含まれるカリウムはわずかなので無視してもいいのだが、0.9%NaCl液500mlに50%糖液40mlを混ぜるのがD5NSに近い(浸透圧は高くなるが)。
 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)にくらべて、AKAは糖をいれてあげるだけでインスリンが出るので高血糖で来院したのでもないかぎりインスリンはあまり必要ない。だからGI療法しなくても糖を入れればケトンの分解によるアシドーシスの是正と内因性のインスリン分泌によって高カリウム血症は治療できるはずである。そんなことを考えながら救急外来で50%糖液を点滴に混注しているとノルエピネフリンが出るが、DKAと同じでそのあと起こる低K、Mg、P血症を予測していなければならない。