2015/12/01

CV catheter securement devices

 手技をするときに清潔野をつくって物品を置いていくが、CVラインキットなど大事なものはひとつひとつ気をつけて移さないといけない。小さな部品でもポロッと床に落ちてしまえば、それだけでキットすべてが台無しになって、もうひとつ新しいキットを出さなければならない。というようなことは誰もが失敗して申し訳ない声で「もうひとつキットください」と看護師さんにお願いして学んでいるわけだが、もったいない話だから(安いキットでも1万円ちかくするし)スーパーバイズする時には「気をつけてね!」と言ってあげなければならないなあと思う。
 さて気を取り直して、今回落ちた部品はCVラインの固定のためカテーテルに嵌めるゴム(一針ずつ縫合できるよう左右に羽がついて穴が開いているアレ)だったわけだが、古来から用いられている縫合について考えてみよう。縫合は患者の苦痛、術者の針刺しリスク、糸に雑菌がコロナイズする、縫合してもすこしは動く、など実は欠点も多い。そこでCV catheter securement deviceというのが開発されており、たとえば3M社はSecurement without Sacrificeというキャッチフレーズで糸を使わず固定しさらにクロルヘキシジンジェルで刺入部を覆ったものを売っている(1つ目の図;ただしこれはカテーテルを全部挿入しないといけないが)。
 薬剤で挿入部を覆うほうが感染症を予防するというのは、スタディがおおく今年9月にCochrane Reviewも出ている(DOI:10.1002/14651858.CD010367.pub2)。Securement deviceのほうが抜けにくいかどうかは、Interrad Medical社のSecurAcath®(2つ目の図;刺入部の皮下に錨をつけて固定する)がスタディを組んだ(NCT00903539)が症例数が少なすぎて結果が出なかった(Can J Anesth 2013 60 504)。現在、英国で抜けにくさをアウトカムにしたスタディが組まれている(スタディ番号18974、3M社のデバイスを使うようだ)。針刺しについてはBard Access Systems社のStatlock®(3つ目の図)を対照にCVライン挿入時の針刺し事故を考えた時の費用対効果を分析したスタディがある(doi:10.1136/bmjopen-2012-002327)。