米国腎臓学会誌(JASN、CJASN)はexpress emailが届くので紙媒体が届く前に読むことができる。今日の論文は、CXCL9とCXCL10についてだった。CXCL9とCXCL10は移植拒絶の炎症でIFNγによって誘導されるケモカインだが、その尿中濃度を測定して拒絶との相関を調べる研究だった(doi:10.1681/ASN.2014080797)。それによれば、CXCL9は主にT-cell mediated rejection(とくにIFTA;interstitial fibrosis and tubular atrophy)に相関し、CXCL10は主にantibody-mediated rejection(糸球体とperitubular capillaryの傷害)に相関するという。CXCL10はantibody-mediated rejectionにおいて腎グラフトの予後(death-censored)に相関し、DSA(donor-specific antibody)陽性単独よりもDSA+CXCL10のほうがantibody-mediated rejectionの相関が強まった。これらのバイオマーカーが生検に取って代わるものではないが、プロトコルバイオプシー(何もなくても定期的にやる生検)を減らすのには役立つかもしれない。
クマさんがおしっこしないで冬眠できるのも、じん臓が一日に体液の何十倍もろ過してから不要なものを残して再吸収するのも、じん臓の替わりをしてくれる治療があるのも、すごいことです。でも一番のキセキは、こうして腎臓内科をつうじてみなさまとお会いできたこと。その感謝の気持ちをもって、日々の学びを共有できればと思います。投稿・追記など、Xアカウント(@Kiseki_jinzo)でもアナウンスしています。
2015/05/07
2015/05/03
CKDの集学的治療
総合診療科スタッフから「保存期CKDの集学的治療についてまとめたよいレビュー論文はありませんか?」と聞かれた。また別のスタッフから「CKD bundle(CKDをみたらこれだけは必ずしようという項目の束)を作りたいので協力してくれませんか?」と相談された。
質問を受けてまずKDIGOガイドラインに言及したものの、論文となると一瞬はて?となった。しかし記憶をたどると「ああそうだ、この論文(NEJM 2010 362 56)なんかいいんじゃないか」と思い出した。わたしが腎臓内科フェローになる前、まだ内科レジデントだった頃に読んだ論文だ。
そんなわけでこの論文をサイボウズというコミュニケーションツールで知らせ添付した。ただ私は論文をただ添付して「読んでおいて」と人任せにするのが苦手で、要約を日本語で書いてあげるのを習慣にしている(バイアスは掛かるが、読むのが手間な時もあるだろうから)。この論文のメッセージは2つ、そして隠れたメッセージがひとつある。一つ目のメッセージは「CKDを診たらこれをチェックしましょう」というbundleだ。
①原因
②体液量・血圧
③蛋白尿
④電解質・酸塩基平衡
⑤CKD-BMD(bone and mineral disorder)
⑥貧血・鉄代謝
⑦血糖
⑧尿酸
⑨心血管疾患の予防と治療
⑩ESRDへの備え
フェロー時代、CKDクリニックでは漏らしがないように電子カルテにこれらの項目リストをテンプレートにしておいた(まさにCKD bundleの考え方だ)。
二つ目は、CKD診療の臨床的意義は進行してESRDに至るのを予防することもさることながら、そこまでたどり着かずに心血管疾患で亡くなる数多くの患者さんたちの命を救うことにあるということ(下図参照)。
そして隠れた三つ目は、CKD4期になったら腎臓内科医に紹介しましょうということだ。
質問を受けてまずKDIGOガイドラインに言及したものの、論文となると一瞬はて?となった。しかし記憶をたどると「ああそうだ、この論文(NEJM 2010 362 56)なんかいいんじゃないか」と思い出した。わたしが腎臓内科フェローになる前、まだ内科レジデントだった頃に読んだ論文だ。
そんなわけでこの論文をサイボウズというコミュニケーションツールで知らせ添付した。ただ私は論文をただ添付して「読んでおいて」と人任せにするのが苦手で、要約を日本語で書いてあげるのを習慣にしている(バイアスは掛かるが、読むのが手間な時もあるだろうから)。この論文のメッセージは2つ、そして隠れたメッセージがひとつある。一つ目のメッセージは「CKDを診たらこれをチェックしましょう」というbundleだ。
①原因
②体液量・血圧
③蛋白尿
④電解質・酸塩基平衡
⑤CKD-BMD(bone and mineral disorder)
⑥貧血・鉄代謝
⑦血糖
⑧尿酸
⑨心血管疾患の予防と治療
⑩ESRDへの備え
フェロー時代、CKDクリニックでは漏らしがないように電子カルテにこれらの項目リストをテンプレートにしておいた(まさにCKD bundleの考え方だ)。
二つ目は、CKD診療の臨床的意義は進行してESRDに至るのを予防することもさることながら、そこまでたどり着かずに心血管疾患で亡くなる数多くの患者さんたちの命を救うことにあるということ(下図参照)。
そして隠れた三つ目は、CKD4期になったら腎臓内科医に紹介しましょうということだ。
ESRDと掻痒 2
こないだ後期研修医に「病棟の看護師さんから『ESRD患者さんの掻痒にメンソールの外用剤はどうですか?』と提案されましたが、そういうことするんですか」と質問を受けた。ESRDの掻痒は以前に勉強したときの記憶では内服薬、外用薬、鍼、紫外線にいたるまであらゆる治療が試され小さなスタディでどれもそこそこの効果を上げている(こういう状況は、だいたいコントロールが困難なことがおおいことを意味する)という認識だったがメンソールは知らなかった。たしかに爽快そうで、エビデンスのあるカプサイシンより効きそうな気もするが。
これが病棟看護師さんの口から出るということは、日本では結構トライされている診療なのかもしれない。裏を取ろうと検索してみたら、皮膚科医と外科医が書いた短いレビュー(Semin Cutan Med Surg 2011 30 99)のなかで"The addition of soothing topicals containing menthol or pramoxine can be tried."として触れられ参考文献も付いていた(J Dermatol Treat 2009 20 76)。本当は日本の文献検索ツールである医中誌などを参照したり、日本の経験ある透析医に質問してみるべきなのだろうが、まだその習慣がない。日米ハイブリッド医への道は遠い。
[追加]米国で働いている先生からKIの最近のレビューをいただいた(KI 2015 87 685)。それにも一応メンソールは載っていた。それから活性炭も載っていたのが意外だった。
これが病棟看護師さんの口から出るということは、日本では結構トライされている診療なのかもしれない。裏を取ろうと検索してみたら、皮膚科医と外科医が書いた短いレビュー(Semin Cutan Med Surg 2011 30 99)のなかで"The addition of soothing topicals containing menthol or pramoxine can be tried."として触れられ参考文献も付いていた(J Dermatol Treat 2009 20 76)。本当は日本の文献検索ツールである医中誌などを参照したり、日本の経験ある透析医に質問してみるべきなのだろうが、まだその習慣がない。日米ハイブリッド医への道は遠い。
[追加]米国で働いている先生からKIの最近のレビューをいただいた(KI 2015 87 685)。それにも一応メンソールは載っていた。それから活性炭も載っていたのが意外だった。
2015/05/02
Metformin as a potential endocrine disruptor
病院で医療行為をしているとあたかもそれが病院という閉じた系で完結しているように錯覚することがあるが、当然患者さんがいるのは家庭であり職場であり社会であり、病院もまた社会の一部で外の世界と連結していることは言うまでもない。しかし今回書くのはそれではなく、自分が処方した薬が地球環境や生態系にまで影響を及ぼしている可能性もあるということだ。そんなこと、正直考えたこともなかった。
ウィスコンシン大学の研究結果(Chemosphere 2015 135 38;まさかこんな論文まで読むことになろうとは…マニアだ)によれば、血糖降下薬のmetforminは、性ホルモンとはまったく違う構造を持つにもかかわらずオスの魚(minnow、姫鮠・ひめはや)の生殖器官を女性化するか、またはオスのままだとしても曝露された魚は生殖力(fecundity)が低下したという。その処方があまりにも大量なので下水処理施設で代謝されきれず、河川に流れ込み湖(今回調査されたのはミシガン湖)に高濃度で溜まっているそうだ。
Metforminは米国では2型糖尿病の第一選択薬(日本では抗DPP4などの新薬が好んで使われているが)で、安価で比較的安全(乳酸アシドーシスは主にfenforminの話で、metforminと乳酸アシドーシスの相関は私が最後にチェックしたCochrane reviewでは否定されていた;とはいえ全くおきないとは言わないし、腎機能が低下した例では依然禁忌になっているが)なので環境に与える影響が無視できないほど処方されているということか。
FDA(food and drug administration)はヒトへの安全を管轄する部署だから、日本の環境省にあたるEPA(environmental protection agency)が何らかの規制を掛けるか対策を講じるのだろうか。翻って、病院で発生するバイオハザードと呼ばれる医療感染廃棄物はどこでどのように処理されているのだろう。注射針とか鋭利なものは固い容器に捨てられるが、そのあとどこに行くのだろう。山奥に処理場でもあるのかな。…とここまで考えると、やはり病院は社会の一部だと認識し、病院機能評価やISO14000シリーズなどにも興味が出てくる。
[2016年6月]環境ホルモンビスフェノールA(BPA)は、ポリカーボネート樹脂にふくまれているので、多くのダイアライザのハウジング(外枠)と膜から流出しうる(実際は燃やすのでどうかわからないが)。またBPAは腎不全患者の血中にたまり心血管リスクや糖尿病悪化に関係するといわれている。
それでBPA freeなダイアライザがでている。FB-eco®、PES-eco®、MFX(マキシフラックス)-eco®、FIX(ファインフラックス)-eco®シリーズなど。親水化にもちいられるポリビニルピロリドン(PVP)を使わないダイアライザもある。
なお日本だけで400種類以上のダイアライザ・ヘモダイアフィルタがあるが、膜の材質は7種類だ。技師さんは材質より性能(中分子除去能でI〜V型に分類される)を気にするが、一応特徴を上げると:
ポリスルホン(PS)
トップシェア
生体適合性がおおい
親水化PVPの量が多い、ビスフェノール残基をもつ
ハイパフォーマンス膜(中分子除去、アルブミン漏出、透析液汚染に弱い)
ポリエーテルスルホン(PES)
ビスフェノール残基がない
セルローストリアセテート(CTA)
余計な荷電がなく生体適合性がよい
膜の細孔構造により透析液汚染につよい
焼却してもCO2とH2Oしかでない
抗血栓性
低分子除去にすぐれるが中分子は苦手
ドライタイプ、軽量で保管や輸送にすぐれる
改良型のATA(非対称セルローストリアセテーテト)
エチレンビニルアルコール(EVAL)
生体適合性がよい
親水性が高くPVPコーティングを必要としない
ポリメチルメタクリレート(PMMA)
吸着能に優れる
ポリエーテルポリマアロイ(PEPA)
ポリアリレートとポリエーテルスルホンのポリマーアロイ
疎水性つよい、PVPで親水化、透析液のエンドトキシンが血液に流入しない
ポリアクリロニトリル(PAN)、AN69
積層型(血液圧が高く透析液は血液に入らない;圧が高く破損することも)
陰性荷電のAN69による塩基性たんぱく、とくにサイトカイン吸着
ACEIとの反応(アナフィラキシーショック)←第VII因子の活性化でKallikrein-Kinin系が亢進しbradykininが増加するが、ACEIがあるとbradykininを分解するkininase IIが阻害される
ウィスコンシン大学の研究結果(Chemosphere 2015 135 38;まさかこんな論文まで読むことになろうとは…マニアだ)によれば、血糖降下薬のmetforminは、性ホルモンとはまったく違う構造を持つにもかかわらずオスの魚(minnow、姫鮠・ひめはや)の生殖器官を女性化するか、またはオスのままだとしても曝露された魚は生殖力(fecundity)が低下したという。その処方があまりにも大量なので下水処理施設で代謝されきれず、河川に流れ込み湖(今回調査されたのはミシガン湖)に高濃度で溜まっているそうだ。
Metforminは米国では2型糖尿病の第一選択薬(日本では抗DPP4などの新薬が好んで使われているが)で、安価で比較的安全(乳酸アシドーシスは主にfenforminの話で、metforminと乳酸アシドーシスの相関は私が最後にチェックしたCochrane reviewでは否定されていた;とはいえ全くおきないとは言わないし、腎機能が低下した例では依然禁忌になっているが)なので環境に与える影響が無視できないほど処方されているということか。
FDA(food and drug administration)はヒトへの安全を管轄する部署だから、日本の環境省にあたるEPA(environmental protection agency)が何らかの規制を掛けるか対策を講じるのだろうか。翻って、病院で発生するバイオハザードと呼ばれる医療感染廃棄物はどこでどのように処理されているのだろう。注射針とか鋭利なものは固い容器に捨てられるが、そのあとどこに行くのだろう。山奥に処理場でもあるのかな。…とここまで考えると、やはり病院は社会の一部だと認識し、病院機能評価やISO14000シリーズなどにも興味が出てくる。
[2016年6月]環境ホルモンビスフェノールA(BPA)は、ポリカーボネート樹脂にふくまれているので、多くのダイアライザのハウジング(外枠)と膜から流出しうる(実際は燃やすのでどうかわからないが)。またBPAは腎不全患者の血中にたまり心血管リスクや糖尿病悪化に関係するといわれている。
それでBPA freeなダイアライザがでている。FB-eco®、PES-eco®、MFX(マキシフラックス)-eco®、FIX(ファインフラックス)-eco®シリーズなど。親水化にもちいられるポリビニルピロリドン(PVP)を使わないダイアライザもある。
なお日本だけで400種類以上のダイアライザ・ヘモダイアフィルタがあるが、膜の材質は7種類だ。技師さんは材質より性能(中分子除去能でI〜V型に分類される)を気にするが、一応特徴を上げると:
ポリスルホン(PS)
トップシェア
生体適合性がおおい
親水化PVPの量が多い、ビスフェノール残基をもつ
ハイパフォーマンス膜(中分子除去、アルブミン漏出、透析液汚染に弱い)
ポリエーテルスルホン(PES)
ビスフェノール残基がない
セルローストリアセテート(CTA)
余計な荷電がなく生体適合性がよい
膜の細孔構造により透析液汚染につよい
焼却してもCO2とH2Oしかでない
抗血栓性
低分子除去にすぐれるが中分子は苦手
ドライタイプ、軽量で保管や輸送にすぐれる
改良型のATA(非対称セルローストリアセテーテト)
エチレンビニルアルコール(EVAL)
生体適合性がよい
親水性が高くPVPコーティングを必要としない
ポリメチルメタクリレート(PMMA)
吸着能に優れる
ポリエーテルポリマアロイ(PEPA)
ポリアリレートとポリエーテルスルホンのポリマーアロイ
疎水性つよい、PVPで親水化、透析液のエンドトキシンが血液に流入しない
ポリアクリロニトリル(PAN)、AN69
積層型(血液圧が高く透析液は血液に入らない;圧が高く破損することも)
陰性荷電のAN69による塩基性たんぱく、とくにサイトカイン吸着
ACEIとの反応(アナフィラキシーショック)←第VII因子の活性化でKallikrein-Kinin系が亢進しbradykininが増加するが、ACEIがあるとbradykininを分解するkininase IIが阻害される
2015/05/01
Patiromer
日本に帰って来て気づいたことのひとつが、日本のほうが圧倒的に多くK吸着剤が処方されていることだった。私はK吸着剤は効果が余りない、また腸管の壁に貼り付いて壊死を起こす副作用があると習って、処方することはほとんどなかった。CKD患者さんでRAAS inhibitorを増やしたいが高K血症があるときにはK制限の栄養指導をしたり利尿剤を追加したりすることが多かったし、透析患者さんで高K血症になりやすい場合は透析液のK濃度を変えることもあった。
今日、今年はじめのNEJMにK吸着剤の有効性を示すスタディが出たと知った(NEJM 2015 372 211)。新薬はRelypsa社のpatiromerといい、Ca2+をcounterionとする非吸収性のK+吸着剤で、腸管からのK+排泄が最も行われる(内腔K+濃度の最も高い)遠位結腸で主に働くという。また、osmotic diarrheaのもとになるsorbitolの含有量が既存のsodium polystylene sulphonateにくらべ少ないそうだ。
で、このpatiromerを1日2回内服すると、eGFRが15-60ml/min/1.73m2(ステージ3-4CKD)でRAAS inhibitorを内服している99%白人の高K血症患者さん(約半数が利尿剤も内服している)のカリウムが用量依存的に下がる。すなわち、下がりすぎたら減量する;止めると上がる。11%で便秘の副作用が出たが内服継続を忍容できたという(ただし対象患者さんの約10%が最初の4週間でloss of follow-upになっているからその分はわからないが)。1人が腸間膜静脈塞栓症で死亡したが薬との因果関係はないという。RAAS inhibitorを増やしたいが高K血症のためにできないような症例でよい適応かもしれない。
しかし個人的にこのスタディで最も驚いたことは、対象患者さん243人のうち151人が「中等度から重症の」高K血症(5.5-6.5mEq/l)でありながら、その値でも何も起こらないなら構わないというわけか普通にフォローされていたことだ。確かに腎臓内科医になると6.5mEq/l以下の高K血症がそう怖くはなくなるが、個人的にはここまでカリウムを「高め安定」で外来フォローしたことはない(このスタディはアメリカ、EU、東欧で行われた)。
患者の約4割はRAAS inhibitorを「maximal dose」内服していたことから、これくらいカリウムが高くなっても、そのリスクよりもRAAS inhibitionによるCKD進行予防のメリットを優先するプラクティスがなされているということなのだろうか。因みに高K血症による心電図変化がみられた患者さんはスタディから除外されているが、それは別の治療を受けたということなのか、それとも多少の心電図変化があっても病状とK値が安定していれば平然とフォローされているのか。
次に驚いたのは、COI開示だ。このスタディ自体が薬を作ったRelypsa社のお金で行われたことは当然としても、investigator達が同社の株式を保有していたり、同社のみならずありとあらゆる製薬会社からfeeを貰っていたことだ。Akebia Therapeutics、Janssen、AstraZeneca、Otsuka、Amgen、Merck Sharp、Dohme、AbbVie、Novartis、Sandoz、Boston Scientific、Medtronic、Daiichi-Sankyo、Bayer、Johnson and Johnson、Oxygen Biotherapeutics、Pfizer、Tricida、scPharmatheuticals…、でるわでるわ。スタディに関わるとお金になるんだなと実感した。
今日、今年はじめのNEJMにK吸着剤の有効性を示すスタディが出たと知った(NEJM 2015 372 211)。新薬はRelypsa社のpatiromerといい、Ca2+をcounterionとする非吸収性のK+吸着剤で、腸管からのK+排泄が最も行われる(内腔K+濃度の最も高い)遠位結腸で主に働くという。また、osmotic diarrheaのもとになるsorbitolの含有量が既存のsodium polystylene sulphonateにくらべ少ないそうだ。
で、このpatiromerを1日2回内服すると、eGFRが15-60ml/min/1.73m2(ステージ3-4CKD)でRAAS inhibitorを内服している99%白人の高K血症患者さん(約半数が利尿剤も内服している)のカリウムが用量依存的に下がる。すなわち、下がりすぎたら減量する;止めると上がる。11%で便秘の副作用が出たが内服継続を忍容できたという(ただし対象患者さんの約10%が最初の4週間でloss of follow-upになっているからその分はわからないが)。1人が腸間膜静脈塞栓症で死亡したが薬との因果関係はないという。RAAS inhibitorを増やしたいが高K血症のためにできないような症例でよい適応かもしれない。
しかし個人的にこのスタディで最も驚いたことは、対象患者さん243人のうち151人が「中等度から重症の」高K血症(5.5-6.5mEq/l)でありながら、その値でも何も起こらないなら構わないというわけか普通にフォローされていたことだ。確かに腎臓内科医になると6.5mEq/l以下の高K血症がそう怖くはなくなるが、個人的にはここまでカリウムを「高め安定」で外来フォローしたことはない(このスタディはアメリカ、EU、東欧で行われた)。
患者の約4割はRAAS inhibitorを「maximal dose」内服していたことから、これくらいカリウムが高くなっても、そのリスクよりもRAAS inhibitionによるCKD進行予防のメリットを優先するプラクティスがなされているということなのだろうか。因みに高K血症による心電図変化がみられた患者さんはスタディから除外されているが、それは別の治療を受けたということなのか、それとも多少の心電図変化があっても病状とK値が安定していれば平然とフォローされているのか。
次に驚いたのは、COI開示だ。このスタディ自体が薬を作ったRelypsa社のお金で行われたことは当然としても、investigator達が同社の株式を保有していたり、同社のみならずありとあらゆる製薬会社からfeeを貰っていたことだ。Akebia Therapeutics、Janssen、AstraZeneca、Otsuka、Amgen、Merck Sharp、Dohme、AbbVie、Novartis、Sandoz、Boston Scientific、Medtronic、Daiichi-Sankyo、Bayer、Johnson and Johnson、Oxygen Biotherapeutics、Pfizer、Tricida、scPharmatheuticals…、でるわでるわ。スタディに関わるとお金になるんだなと実感した。
2015/04/30
LAA closure
心房細動の治療はNOAC(non-vitamin K antagonist oral anticoagulant)が広く用いられているが、次の治療として左心耳を機械的に閉じてしまう器具が開発されていたことを遅ればせながら知った。米国内科学会誌のACP Journal Clubで、この器具とワーファリンを比較したスタディを吟味していた(Ann Int Med 2015 162 JC4)からだ。スタディ(PROTECT AFスタディ、JAMA 2014 312 1988)では非弁膜症の心房細動をmeanで3.8年フォローしたら新しい治療が脳梗塞や心血管系死亡の予防においてワーファリンより優れ、出血や手技に伴う合併症もnon-inferiorだったという。NOACと比較したデータはまだないが、抗凝固ができない患者に有効かもしれない。心房細動を原因から絶つ治療として肺静脈出口周囲の焼灼、MAZEなどがあるが、LAA closureはTEEと透視を組み合わせて経静脈的に(心房中隔をこえて)左心耳をデバイスで塞ぐ。Boston Scientific社の商品名をWATCHMANと言う。リズムを絶つのではなく塞栓が生じる元を断つ治療だ。日本でもカテ病院ではすでに始められているのだろうか。
2015/04/28
FrenchとGauge
今日は外科内科カンファがあって、気胸の話だった。初期研修の頃に呼吸器内科ローテーション時に胸腔ドレーンを挿入したのを思い出した。挿入の仕方とトラブルシューティングを外科の先生から聴けて、手技はやっぱり慣れた人がやったほうがいいと思った。ところで、カンファでFrenchとGaugeの話になった。French = 外周×3×π、すなわち外径 = French / 3。Gaugeのほうは 1 inch / Gauge = 内径みたいなことを聴いたが、裏を取ってみるとFrenchはいいがGaugeのほうは実際は針金の太さの規格として19世紀に生まれたStub Iron Wire Gaugeに準拠しており、これは特定の数式で定められたものではないそうだ。
(注:あえて書かなくてもいいだろうが、挿絵について。英語でト音記号はG clef、ヘ音記号はF clefなので、それを掛けた洒落である)
(注:あえて書かなくてもいいだろうが、挿絵について。英語でト音記号はG clef、ヘ音記号はF clefなので、それを掛けた洒落である)
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