日本でもCOVID-19による影響が大きくなっている。
この記事を半年後に読んだ時にこんな大変な時があったねと振り返ることができるように僕らもがんばっていかなくてはならない。
今日は腎移植とCOVID-19について記載していこうと思う。
まずは日本の腎移植においては腎移植学会から提言が出ている。
1. 腎移植は待機可能であることより、生体、脳死、心停止の腎移植は状況が好転するまで停止することが望ましい。
2. 待機困難な例(脱感作処置などが進行中、代替療法が困難、緊急例等)については、可及的にドナー、レシピエントに感染のないことを確認し、かつ感染のリスクを説明したうえで実施する。
3. 外来移植患者、入院移植患者の感染予防、治療については、各施設でのマニュアルに沿って実施する。
※腎移植の実施決定は、施設の状況、患者の状況を考慮し、各施設の責任で行う。
日本では施設の判断にもよるが、現状としては移植治療をストップしている施設が多い。
では、ここからは海外のを参考にしながら、少し移植とCOVID-19を前回と同じように質問形式で診ていこうと思う。
COVID-19の症状としては、
・発熱、咳、息切れ、インフルエンザ様症状(筋肉痛、倦怠感など)、嘔気・下痢・腹痛、嗅覚や味覚の障害
などがある。
移植患者では肺炎に移行しやすいと言われている。
Q:移植患者はウイルス感染のリスクが高いのか?
A:これに関しては、はっきりとしたところまでは分かっていないが、答えはYESである。
まず、健常人と比較して移植患者がCOVID-19感染において重症化するということは証明はされていない。しかし、他ウイルスでは免疫系が低くなっている移植患者では重症化しやすいことが分かっており、おそらくCOVID-19も同様と考えられる。
Q:旅行制限は移植患者では必要か?
A:現在、世界各国でウイルスのPandemicが生じている。なので、基本的には推奨はされない。
もしも行く場合にはCDCのWebsiteから行く場所のCOVID-19の感染がある状況かを確認する必要がある。
基本的にはヘルスメンテナンスを行い、不要不急の旅行を避け、人混みを避けることは非常に重要である。
Q:COVID-19の治療は?
A:これに関しては、以前に記事にした内容を参考にしていただきたい。
その中で移植患者に投与する際に気をつけなくてはいけないことは、
・薬物の相互作用に注意を払う必要がある。HIVの治療薬であるIopinavir/ritonavirに関しては、CYP34Aを阻害することによってカルシニューリン阻害薬やmTOR阻害薬の血中濃度を上昇させうる(下表を参考にしていただきたい)。
・ARBやACE-Iの継続はCOVID-19感染にとって有害であるとも言われているが、現状としてははっきりはしていなく継続は問題ないと考えられている。
・感染のリスクが高い症例では、拒絶のリスクが低ければ、免疫抑制剤の量を減量することが推奨されている。
Q:もし、移植患者が風邪様の症状や呼吸器症状を有する場合のアプローチは?
A:まずは、かかっている移植外来に電話をする。そして、診察が必要な状況であればしっかりとマスクをしてもらって診察を行う。もし、息切れなどの重篤な症状があれば救急車などを呼ぶ(ただ、東京都では救急車での受け入れはかなり制限されている。)。
下記は患者さんがCOVID-19であった場合のフローになる。
・MMFの中止、カルシニューリン阻害薬の減量、高用量ステロイドやステロイド増量の非推奨に関しては移植領域に特筆するべき内容である。
Q:定期外来の移植候補者や移植後の患者に対してのアプローチは?
A:COVID-19の感染と腎臓移植の緊急性を天秤にかけて考える必要がある。移植を延期することで先行的腎移植(PEKT)を希望している人は、叶わなくなってしまうかもしれないが、生体腎移植や緊急性が低い献腎移植は一時的に中止することが推奨されている。
移植後の患者に対しても、基本的には来院に伴う感染リスクを上げてしまうことが考えられるため遠隔診療や状態が安定している人であれば、来院間隔を伸ばすことは推奨される。
Q:もし献腎移植待機患者で、優先順位も高い人がCOVID-19にかかっていたらどうするか?
A:現段階では、COVID-19感染患者が安全に移植ができるかということは分かっていないが、おそらくは良くない結果になることが予想される。
ウイルスの排出期間は正確には分かっていないが、LANCETの報告によると20日間くらいとされている(8-37日)。またPCR検査が少なくとも2回陰性になることが推奨される。
他にも書きたい項目はあるが、またの機会でにしたいと思う。
いちばん大切なのは、これを読んでいただいている医療従事者が感染にかからないことである。
しっかり睡眠をとって、休めるときは休んで日々の診療に取り組もう。決して終わらない戦いはないので、みんなで乗り越えていこう。みんなでキセキを!