2018/10/30

新規尿酸降下薬

 1706年、マサチューセッツ州生まれ。質素・勤勉で、28歳時は著作で痛風予防のために節食節酒を勧めたこともある。しかし立身出世し生活が変化したこともあり、中年以降に痛風発作、腎結石を繰り返す。74歳時に散文詩「痛風との対話」を著す。84歳、胸膜炎のためフィラデルフィアで病没。

Q:これは、誰ですか(写真は彼が使っていた歩行杖)?




 腎臓で尿酸を下げたほうがいいかというのは結論がまだでていないけれど、下げないほうがいいのだろうか?先日紹介したFEATHERトライアルでもちいられたfebuxostatは、実はFDAに心血管系死などの警告が出ている(相関であり、因果関係は調査中)。アロプリノールは生命に関わるSteven-Johnson症候群を起こすことがあり、安価で昔からあるがこのために敬遠されることがある。

 とはいえ、痛風や結石の慢性管理ではさすがに尿酸値を下げたほうがいい。そして、これらを扱うリウマチ内科は新薬がどんどん生まれている分野だから、尿酸についても新しい薬がでてきている。以前紹介した(存在を予言して的中した)Lesinuradは近位尿細管のトランスポーターURAT1を阻害して尿酸排泄を促進する薬だが、今回紹介するPegloticaseは尿酸を分解するウリカーゼそのものだ。

 ウリカーゼはヒトにない酵素(なぜないかについては、進化や適者生存の観点からさまざまな仮説がある)だが、ラスブリカーゼとして既に商品化され腫瘍崩壊症候群に用いられている(こちらも参照)。Pegloticaseはそれをペグ化して半減期を伸ばしたもので、2週間に一度の注射薬だ。

 適応は既存の尿酸降下薬に不応の痛風結節(tophi)をともなう慢性痛風だ。使えばたちまち尿酸値が下がるし、結節も消える。こういうテキメンな下がり方は、コレステロールに対するPCSK9モノクローナル抗体にも似ている(こちらも参照)。

 ただしPeglosicaseはペグ化しているので、人によって抗ペグ抗体ができることがあり、その場合は効果が減弱する(10mg/dl以上のひとが、7くらいまでしかさがらない)。また、副作用としてはinfusion reactionが最も多い。 
 
 米国とカナダの治験(JAMA 2011 306 711)後、2010年にFDAが認可し、2013年にはEUで認可された。2016年にEUの認可が取り消されたが、その理由はメーカー側のcommercial reasonとされている。ちなみに冒頭の患者は、ベンジャミン・フランクリン(写真はスミソニアン博物館サイトより)。もし彼が現在も生きていたら、役に立ったかもしれない。

 Peglosicaseは薬としてまだ完璧ではないけれど、こういう研究の積み重ねで新規クラスの薬がうまれてよい治療につながっていく感じが、腎臓内科でも感じられるようになればいいなと思う(写真は、ファージを用いた方法でモノクローナル抗体技術に革命を起こし、2018年ノーベル化学賞を受賞したGreg Winter卿。抗TNFα抗体、adalimumabの開発者でもある)。