2017/03/18

心房細動患者に抗凝固薬投与は意外に少ない!!(Association of Preceding Antithrombotic Treatment With Acute Ischemic Stroke Severity and In-Hospital Outcomes Among Patients With Atrial Fibrillation)

以前に透析患者と心房細動について記載をした。


今回、論文で興味深いものがあったので紹介する。


一つはJAMA 2017;317(10):1057-1067の論文である。
我々は一般的には心房細動患者がいれば、CHA2DS2-VAScをつけてリスクを評価し、HAS-BLEDをつけて出血リスクを評価する。どちらがリスクとして高いかをみて抗凝固薬を投与するかどうかを決定する。


この論文は94474人(2012/10-2015/3 1622の病院)の脳梗塞を発症した心房細動のある患者が選択されている。
今回の論文はとくに透析患者というpopulationではない。


脳梗塞発症前の抗凝固薬の導入をみており、脳卒中の重症度はNIHSS scoreによってみている。


94472人中
-7176人(7.6%):治療的ワーファリン投与
-8290人(8.8%):NOACs投与
-79008人(83.6%):治療的なワーファリン投与なし
 -12751(13.5%):脳卒中発症時 ワーファリン治療域には達していない(INR<2)
 -37674(39.9%):抗血小板薬のみ投与
 -28583(30.3%):抗凝固薬の投与なし


CHA2DS2-VASc≧2の高リスクの91155人のうち76071人(83.5%)は治療域のワーファリンやNOACsの内服がなかった。


・中等度~重症脳梗塞患者において治療的ワーファリン投与やNOACs投与をしている症例は、やはり治療的ワーファリン投与ない症例に比べて発症の割合が少なかった。


この論文からは、治療域のワーファリンやNOACs投与患者は15%程度と少なかったというのがわかったし、しっかりと治療域にいれるということは実際の脳梗塞をしっかりと予防する上で重要なのだと感じた。


また、今回の論文からの発展で実際に透析患者では抗凝固薬は推奨されないが、このようにみた研究があって同じように結果を出せたら面白いなと感じた。


次の機会にもう一つ違うものを紹介できればなと思う。



2017/03/16

非糖尿病のCKD患者に厳格な血圧コントロールはいいのか?(Intensive BP control for non DM CKD patient)

日々日常診療をしていると勉強になることが多い。
今日は腎炎の治療中の患者に色々と質問され、とても勉強になった。
本当に日常臨床から学ぶことはすごく多いなと感じる。

今日の話題は、JAMA intern medから出たsystematic and Meta-analysisである。
糖尿病によるCKD患者やタンパク尿が1g以上出ている非糖尿病CKDに関しては降圧が有用であるという報告がある。

今回の論文は非糖尿病患者の降圧に関しては不明確なことが多くsystematic review and meta-analysisで示している。

論文はintensive群を(<130/80mmHg)、通常群を(<140/90mmHg)と分けている。
2016/3/24までのpubmed, medline, embase, cochrane libraryから論文抽出を行なっている。

大人の非糖尿病のCKD患者を抽出し、血清Crが2倍以上になった場合、50%以上GFRが低下した場合、末期腎不全になった場合(ESRD)、死亡率を見ている。


この論文では9つのtrialで8127人の患者をEnrollし、平均3.3年のフォローをしている。
・GFRの年間低下率:intensive群と通常群で差はなかった (mean difference, 0.07; 95% CI, −0.16 to 0.29 mL/min/1.73 m2/y)。
・Crが2倍かGFRが50%以上低下:intensive群と通常群で差はなかった(RR, 0.99; 95% CI, 0.76-1.29)
・ESRD:intensive群と通常群で差はなかった(RR, 0.96; 95% CI, 0.78-1.18)
・複合的な腎合併症:intensive群と通常群で差はなかった(RR, 0.99; 95% CI, 0.81-1.21)
・死亡率:intensive群と通常群で差はなかった (RR, 0.95; 95% CI, 0.66-1.37)

非黒人や尿タンパクが多い症例では、intensive群の方が腎リスクを低下させることがわかった。

今回の論文では、非糖尿病患者の厳密な血圧コントロールは意味がないと出た。
しかし、我々日本人はどうなのだろうか?非黒人であり、これは今後の研究が必要な分野なのかもしれない。




2017/03/15

一度でも腎機能障害になったら妊娠に影響あるの?(Pregnancy Outcomes after Clinical Recovery from AKI.)

今回、妊娠と腎機能障害に関して、上記題名のような論文があったのでご紹介する。

妊娠の時は胎児の成長のために腎臓や胎盤がフル活動する!そのため、GFRが正常時より50%以上上昇するのはそのためである。

以前にも記載したが、早期のCKDであっても妊娠にとって悪影響を及ぼすことはわかっている(CJASN 2010)。
また、AKIがCKD進展のリスクになることもわかっている。

では、完全に腎機能の数字が戻ったAKI既往の患者が妊娠したら、何かリスクは上昇するのかというのを調べたのが今回の論文である(JASN 2016)。

研究デザイン:
後ろ向き研究で9年間追っており、AKIはCreの上昇のみで定義(基礎より1.5倍)
合併症として子癇前症、妊娠高血圧、妊娠期間、胎児の体重、周産期死亡、NICU入室、週数より胎児が小さい
などを見ている。

下記のように見ている。

今回の結果では、AKIの既往の女性では、子癇前症、非正期出産の割合、NICU入室率、胎児の影響が優位に高かったとでている。


Limitationとしては、KDIGOの基準に含まれるような48時間で0.3mg/dl以上のクレアチニン上昇の症例は含まれておらず、コントロールに入っている可能性や、AKIの原因は不明なことが多いなどがあげられている。

なので、妊娠した人に過去に腎臓悪くなったことはありませんか?と聞くのも重要になってくる可能性もある。
腎臓は数字上は正常に戻っても何かしらの影響を与えていると考えると、ますます神秘に満ち溢れていると感じる。



2017/03/14

塩分摂取について ③(about sodium intake : NUTRICODE trial)

今回はもう一つの論文であるNUTRICODE trialについて(NEJM 2015;371:624-634)

今回のこの3つのtrialに関してはQUICK TAKE VIDEO SUMMARYが付いているので見ていただければと思う。

ちなみに食塩相当量の計算には常に注意することが大事である。
例えば食品にナトリウム量で書かれていれば、食塩相当量に直すことは重要である。
食塩相当量(g)=Na摂取量(g)×2.54
なので、注意する。
しかし、2015年の4月1日から、日本の食品基準に関して法律の変更があり義務表示の「ナトリウム」は「食塩相当量」で表示しましょう!ということが提示されている。
なので、変換することを考えなくてもいいかもしれないが、知っておくと何かに役立つかもしれない。

では、本題であるが、
この研究は
国連や世界保健機関(WHO)、米国疾病管理予防センター(CDC)は、食事のナトリウム摂取量と心血管疾患との関連を強調しているが,ナトリウム摂取が世界的にみた影響や年齢,性別,人種,国,高血圧合併等による違いは明らかにはなっていなかった。
そのため、66カ国の患者において尿中ナトリウム排泄から推定したナトリウム摂取量に関する調査を行い、
・世界的なナトリウム摂取量を定量化

・ナトリウム摂取量の血圧への影響
・血圧の心血管死への影響をメタ解析により評価
・基準値を超えるナトリウム摂取量が心血管死に及ぼす影響を年齢別・性別・国別に推定。

結果:
・ナトリウム摂取量に関して:世界の平均ナトリウム摂取量は3.95g/日(地域平均2.18~5.51g/日)。187ヵ国中181ヵ国でWHO推奨の2.0g/日を超過していた。
・減塩の効果:ナトリウム摂取量2.30g/日減少で収縮期血圧は3.82mmHg低下していた。その減塩の影響は高齢者や黒人や高血圧例で若年者や白人や正常血圧例より大きかった。
・血圧の心血管死への影響:血圧の影響度は年齢に伴って低下した。
・基準値を超えるナトリウム摂取量が心血管死に及ぼす影響を年齢別・性別・国別に推定。:世界中で毎年165万人の心血管死がナトリウム摂取過剰によるものであり、61.9%は男性で38.1%は女性であった。心血管死の10人に1人にあたり、このうち84.3%は低~中収入国に見られ、40.4%は70歳以下であった。ナトリウム摂取過剰による心血管死の割合はグルジアで最も高くケニアで最も低かった。

結論:この研究の結果では食塩5g(Na摂取 2g)以上の摂取は心血管死に繋がるとしている。

今回、PURE と NUTRICODEを出したが、PUREでは低すぎると心血管リスクが上昇して、塩分摂取量は7.6gが適切と言っていて、NUTRICODEでは5g未満が適切としている。
PUREは追跡調査研究でありlimitationがある可能性はある。

我が国の推奨は6g未満であり、この結果を踏まえても有用な基準であると認識した。

塩分摂取は様々な領域で取りざたされており、今後さらなる研究が進めば面白いと感じた。






新しい高リン血症の治療

 以前にふれた、NHE3阻害薬tenapanorが透析患者さんの高リン血症をさげるかを調べた治験の結果が発表された(doi: 10.1681/ASN.2016080855)。4週間の内服で用量依存性にリン濃度低下がみられ、10mg1日2回と30mg1日2回でプラセボに対して有意差があった(1.7-1.8mg/dlの効果)。ただし下痢の副作用が多く、30mg1日2回の群では半分が途中で薬をやめていた。TenapanorはLubiprostone(アミティーザ®)のように便秘薬として開発された薬だから無理もなく、著者は「便が硬く通過時間のながい透析患者さんにとっては有益かもしれない」と考えている。

 腸管のNHE3を阻害すると便中のリン含有量が増えることは事実だが、ナトリウムイオンと水素イオンの交換輸送体であるNHE3がどうリンに関係するかはまだわかっていない。腸管にはリン吸収にかかわるナトリウム依存のリン輸送体NPT2bというのがあるから、ナトリウムイオンの再吸収が阻害され腸管内にナトリウムがたまることと関係がありそうに思われる(tenapanorにNPT2bに対する阻害作用はないが;JASN 2015 26 1138)。腸管で塩素イオンの再吸収を阻害するlubiprostoneでも、リンはさがるようだ(コントロールのない一施設スタディはRRT 2016 2 50)。

  このスタディは、いままで「いかに摂取をへらすか」「いかに吸着するか」が基本だった高リン血症治療に新たな考え方をもたらす可能性があると思う。これから研究が進んで、遠位ネフロンのように腸管の溶質吸収とその制御にかかわるさまざまな治療標的がみつかるかもしれない。みつかれば、いまは阻害薬を探す方法は high throughput screeningとかいろいろある。ただ下痢をおこす薬が多そうで、アドヒアランスをたかめるためにも腎臓内科医や透析医は尿量コントロールと同じように便の回数、ブリストル・スケール(図)などもみて調節しながら診療する必要が出てくるかもしれない。




 [2017年6月追加]この薬が日本人の健康被験者を対象に1相治験された(Clin Exp Nephrol 2017 21 407)。両親、父方母方の両親が日本人で、日本で生まれ、5年間以上日本以外に住んでいない20-45歳の被験者83人をカリフォルニア州の治験センターWCCT Globalに連れていきTenapanorないしプラセボを飲んでもらった。

 結果、予測されたように介入群では便Na排泄がふえた。プラセボが4mmol/dに対して30-40mmol/d、食塩換算で2グラムくらいだから、利尿薬ならぬ「利便薬」としても使えるのかも知れない。便リン排泄は、0.8-8.0mol/dふえたとあるが、統計学的有意差や信頼区間は明記されていない。第1相で安全性を示すのが目的だからだろうか。

 安全性といえば、便の回数は180mg1日1回投与群で約6回、15-90mg1日2回投与群で約2回、プラセボで約1回だった。180mg1回投与は、大変そうだ。便の性状は投与群でBristolスケール約5、プラセボで3だった(上の写真)。副作用は下痢が2回嘔吐が1回。白人被験者では頭痛や腹痛もあったが、国民性ゆえ軽微なら訴えなかったのだろうか。

 それにしても、WCCT Globalなんてしらなかった。日本語ホームページによれば、最高約10000ドルの報酬を提供するらしい。それでも元が取れるのだろう。日本市場に入るためには日本人データがあったほうが有利だから、外資企業がこうやって外国で日本人を対象に治験する時代なのだなと驚いた。

2017/03/13

塩分摂取について ② (about sodium intake)

塩分の摂取量については外せない論文は2014年のNEJMに立て続けにでた論文たちである。

・PURE trial
・NUTRICODE trial

は必須論文になると思う。

今回はPURE trialに関して触れる(N Engl J Med. 2014; 371: 601-11.  N Engl J Med. 2014; 371: 612-23)。

今回のPURE trialの目的は
・ナトリウムの摂取量増加は血圧上昇と関連するが、この関連がナトリウム,カリウムの摂取量や地域で異なるのかは明らかでない。
また、心血管疾患合併からみた至適摂取量に関してはわかっていない部分が多い。
これをしっかりと突き詰めようとしたのが、今回の研究である。

今回の研究は大規模コホート研究において,下記を検討している。
1)  ナトリウムおよびカリウムの摂取量(推定24時間尿中排泄量で代替)の実態を地域,国の所得水準別に推定し,血圧との関連を検証。
2)  ナトリウムおよびカリウムの尿中排泄量と死亡,心血管イベント(CVD)の関連を検証。


今回24時間尿中排泄量で代用しているが、その際に用いられているのが、Kawasaki formulaである。

下記にkawasaki formulaを記した。今回、そのほかにTanakaの式、Nervassの式なども提示している。
ある研究では、日本のCKD患者さんではTanakaの式の方がkawasaki の式よりも正確であると言われている。

Kawasakiの式(HypertensRes. 2006;29(6):397-402.)
24-h 尿中Na (mEq/day)=16.3x{(UNa/UCr)x estimated24h-UCr } ^0.5
男性:推定 24h-UCr(mg/day)=15.12x BW + 7.39 x height –12.63 x age –79.90
女性:推定 24h-UCr(mg/day)=8.58 x BW + 5.09 x height –4.72 x age –74.95

Tanakaの式(J Hum Hypertens. 2002;16(2):97-103.)
24-h 尿中Na  (mEq/day) = 21.98 x UNa/UCrx {-2.04 x age + 14.89 x weight (kg) + 16.14 x height (cm) -2244.45}^0.392

Nervassの式(Nephron Clin Prac t2014;128:61-66)
推定 24h尿中Na (mmol) = –68.625 + (体重kg x1.824) + (EM UNa in m
mol/l x0.482)

話は、脱線したが詳細は本文を読んでいただけたらと思うが、
1)については、
方法:
18か国で102,216人の成人を対象とし、早朝空腹時の尿検体を用いて24時間のナトリウム排泄やカリウム排泄を計算。そのうえで電解質排泄と血圧との関係を見ている。
結果:
Na排泄量と血圧に有意な正の関係を認め、排泄量1g増加ごとに、収縮期血圧が2.11mmHg、拡張期血圧が0.78mmHg上昇(p<0.001)。

この相関関係はNaの摂取量が増えるほど顕著になり尿中Na排泄が5g/日以上では2.58mmHg収縮期血圧が上昇し、3-5g/日では1.74mmHg、3g未満では0.74mmHgの上昇であった(P<0.001)であった。
関係が顕著だったのは,高血圧例,高齢者であった。
K排泄量と収縮期血圧には有意な負の関係が認めた。1g増加ごとに0.75mmHg低下(p<0.01)。拡張期血圧の低下は0.06mmHgであった(p=0.33)。
収縮期血圧低下が大きかったのは高血圧例、高齢者であった(p<0.001)

結論:

24時間尿中排泄量から推定したNa摂取量と血圧は正の関係,K摂取量と収縮期血圧は負の関係であった。特にその関係が顕著だったのは高Na食摂取者,高血圧例,高齢者であった。

2)については、
方法:
17か国の101,945人から早朝空腹時の尿検体を採取し、24時間ナトリウム排泄とカリウム排泄を計算し、尿中ナトリウム及び尿中カリウム排泄と死亡率と心血管イベント(CVD)の複合アウトカムとの関係を調べた。

結果:
死亡率と心血管イベントの複合アウトカムの発生は3,317例(3.3%)で、死亡1976例(CVD死650例)、心筋梗塞857例、脳卒中872例、心不全261例であった。

Na排泄量4.00~5.99g/日にくらべ,高値群(≧7.00g/日)は死亡、主要なCVDのリスクが高かった。CVD死、脳卒中による死亡・入院のリスクも高かった。この関連は高血圧例で強く、 6.00~6.99g/日、≧7.00g/日でリスクが有意に上昇した。
また排泄量低値群でも,4.00~5.99g/日群にくらべ
死亡率と心血管イベントの複合アウトカムの発生、死亡、主要なCVDのリスクが上昇した。

K排泄量≧1.50g/日群は<1.50g/日群にくらべ
死亡率と心血管イベントの複合アウトカムの発生のリスクが低かった。

結論:

24時間尿中排泄量から推定したNa摂取量3~6g/日は<3g/日,≧6g/日より死亡や心血管リスクの低下と相関していた。
K排泄量≧1.50g/日は<1.50g/日より死亡や心血管リスクの低下と相関していた。

とても、大規模なコホート研究であり重要なものである。
患者さんに少し、塩分取りすぎちゃダメですよ、カリウムはとってくださいねという意味が理解できてきただろうか?




塩分摂取について① (about sodium intake)

塩分に関しては、僕たちは摂取の制限をしてくださいね!高血圧になりますし。ということを外来で話すことが多い。

まず、塩分を取るとなぜ血圧が上がるのか?
これについてはJASN2014の論文によくのっている。
塩分摂取に対して全員が血圧上昇するかに関してはそうではない。個人差がある。

塩分摂取で血圧が上がる機序の一つが
・塩分摂取過多→腎臓の交感神経系活性上昇→WNK4(With no lysin kinase 4)発現低下→NCC(thiazide-sensitive sodium chloride cotransporter)活性化をおこし、Na保持につながり、血圧が上昇する。


図には書いてあるが、交感神経活性が上昇してWNK4活性が低下する機序も重要である(Nat Med 2011)。
これは、交感神経活性化が起こり、β2ARが活性化、PKAを介してHDAC8の活性を低下させる。これにより、核内のGRE(glucocorticoid-response element)のヒストンアセチル化が増加、グルココルチコイドおよびGRが結合し、これがWNK4の発現低下をもたらす。

そのため、塩分制限はある患者にとっては重要である。

数回塩分についての話をしたいと思う。