なんと、成熟足細胞を作った(Nature Protocols 2018 13 1662)。
以前から同研究所はiPS細胞から腎の前駆細胞や、いろんな腎の細胞が混じったorganoidを作る技術はあった。しかし今回のプロトコルは、本物と90%相同の足細胞を大量につくるものだ。
その詳細なやり方が「キドニービーンズのレシピブック」のように論文に載っているのだから、すごい時代だ。なんでも、匠の技で未分化iPSを「糸球体チップ」という糸球体内皮細胞を模したmicrofluidic cell culture systemに作りあげるのだとか。
もちろん腎臓は複雑だから、足細胞を糸球体に植え込むのと、たとえば心筋に心筋細胞を植え込むのとでは話がちがってくる。それでも、足細胞は極めて分化が高くすばらしい機能をもった「賢い」細胞だから(あと、「優しい」から)、荒廃した糸球体に降り立っても、天使のように瀕死の内皮細胞を抱きしめて、ネフロンを作り直してくれるかもしれない。
足細胞が作れるのなら、足細胞以外の細胞も作れるだろう。日本もふくめて世界中で競うように研究しているわけだし、再生腎臓ができるXデーは近いのかもしれない。また、つくった足細胞から足細胞病の理解も進むことが期待される。
まだあまり(少なくとも日本語では)報道されていないが、価値あるニュースとしてとりあげた。続報に期待したい。