2018/07/11

最新の高血圧ガイドラインを振り返って 1

 ご無沙汰しております。

 今日は高血圧のガイドラインについて最新のものを含めて話したいと思う。

 現状の最新(2018年7月現在)のガイドラインは日本のはまだ発行されておらず、2014年のが一番新しい。

 この1〜2年は高血圧診療に関しては世界的にも大きく変わったことは非常に重要な事実である。

 今回は2018年に出たカナダの高血圧のガイドラインを中心に話す。




 まず、血圧測定方法に関してはAOBP(Automated Oscillometric Blood Pressure)という方法が推奨されている。

 では、AOBPとはなんなのか?についてだが、これは「医師や看護師のいない状況で、血圧計内蔵のタイマーを用いて5分間安静にした後に,1分間隔で3回測定する」ものである。
これをすることのメリットは患者の不安の軽減、測定者による測定経験や誤差の軽減につながると言われている。

 この方法が、この高血圧診療を変えている論文の測定方法に用いられている。SPRINT trialACCORD trialはこの方法を用いられている。

 では、この測定が用いることができる血圧計としては

 BPTru ( カナダ、入手できなくなる )
 OMRON HEM 907XL (SPRINTでも使用された、日本でもおなじみ)
 the MicroLife WatchBP Office (台湾 )
 the PRO BP2400

 がある。

 測定場所に関しては、ガイドラインではGrade Cではあるが手首より上腕での測定が推奨されている。

→ただ、全例が手首の測定がダメというわけではない。

 特に肥満患者には、上腕の測定時に腕に比して血圧測定部分が細く狭くなりやすく血圧上昇をしやすくなってしまう。そのため腕での血圧測定が推奨されている。

 これは、カナダのガイドラインでもGrade Dではあるが推奨されている。

 では、ABPM(Ambulatory BP monitoring:24時間血圧測定器)とAOBPはどちらがいいのか??

→これに関しては、カナダのガイドラインではABPMや家庭血圧測定が患者のフォローアップ血圧にはいいということがGrade Dではあるが推奨されている(白衣高血圧のため)

 このABPMかAOBPの比較に関しては2017年にsystematic reviewが出されている。これによるとAOBPはABPMに取って代わることはできないとなっている。

 一つ話題にもなっているneprilysin阻害薬について触れたいと思う。

 これは、収縮機能低下の心不全患者さんに対する薬物として2014年のNEJMで注目されたものである。

 neprilysin阻害薬:ナトリウム利尿ペプチド,ブラジキニンなどの血管作動性ペプチドを分解する酵素である、neprilysinを阻害し、分解を妨げることで血管収縮やナトリウム貯留、リモデリングなどをもたらす神経ホルモンの過剰な活性化を妨げる。

 2014年のNEJMでは、収縮力低下の心不全患者に対してアンギオテンシン受容体拮抗薬とNeprilysin阻害薬の合剤(ARNI:angiotensin receptor blocker-neprilysin inhibition)が死亡および心不全による入院のリスクが有意に低かった。

 カナダのガイドラインでは、Grade Aで適切な治療(β阻害薬やACE-I/ARBなど)をしているにも関わらず症状の残っているような収縮力低下(EF<40%)の心不全患者にARNIの使用を推奨すべきとしている。

 その際に、副作用のことも考えてこれもGrade Aで血清K<5.2mmol/L、eGFR≧30ml/min/1.73m2の人に使用することが推奨されている。

 次は実際の数字の比較などをしたいと思う。

 ただ、我々もどうしても数字に目が行きがちにはなるが、それがどのようにして測定されたか?を常に考えてあげることが重要である。