血圧コントロールがある時から難しくなった、と言われたら問診で探偵作業が始まる。まず薬の変化(NSAIDsなど)、食生活の変化(食塩など)、腎機能の変化(浮腫、診察なら血管雑音など)等を聞く。それで患者さんが「Licoriceを食べています」と言ったら疑うのがAME(Apparent Mineralocorticoid Excess)症候群に似た病態だ。
Mineralocorticoid receptorは糖質コルチコイドにも鉱質コルチコイドにも結合するが、腎臓では糖質コルチコイドが(11-β-HSD2により)すばやく不活化されるので事実上は鉱質コルチコイドしか結合しない。しかし、先天的に11-β-HSD2欠損があれば糖質コルチコイドが鉱質コルチコイドのように腎臓で働いてしまい、Apparent Mineralocorticoid Excess状態になる。
Licorice摂取でも似たようなことが起こる。Glycyrrhetinic acidという成分が11-β-HSD2を阻害するからだ。生化学的には24時間蓄尿による尿中cortisolとcortison(不活化された代謝産物)の比で診断する。正常はcortisol/cortison比が0.3-0.5だが、AMEやlicoriceでは比が高くなる。実際は病歴で十分、licoriceを中止して様子をみる。