日々感じる疑問のうちの1つを考えてみようと思う。
このブログを見ている方の中で腎生検を知らない人はいないだろう。腎生検は診断の助けだけでなく腎臓の予後自体も推定できるのではないかと言われている。手段としては大きく分けて、腎臓内科医が行う経皮的生検と外科医に依頼する開放生検がある。
ただ侵襲的な手技であるため、高齢者の場合など、「生検の適応があっても実行はされない。」という状況が起きてしまうため、ジレンマを感じたことがある人も少なからずいるだろう。
さてそんな腎生検だが、これまで医学生時代から含めていくつかの施設を見てきたが「病院毎にやり方(入院期間、高血圧の管理、抗血小板薬の扱いなど)が異なるのは何故?」と素朴に思っていた。腎生検に関しての解釈などの教科書、レビューなどはたくさんあるが、管理の話に関してはあまり知らないなと思っていた時に出会ったのがこれ(CJASN 2016 11 354)。
特に面白かったのが、biopsy protocol(筆者たちの考えかもしれないが)、出血、いつ出血が起こるのかの3点である。
1 実施前にCBC、凝固能、Cr、T&Sを行う。
2 薬剤歴は必ず確認し出血リスクを助長するものは本人と確認し調整する。
3 IVラインをとる。
4 超音波ガイド下で16Gで穿刺する。
5 実施後は6時間ベット上安静とする。
6 バイタルは最初の2時間は15分毎、次の4時間は30分毎、その後は時間単位で観察する。
7 腎生検後6から8時間後にCBCを1回評価する。
8 退院前に尿検査を提出し新規の尿潜血がないか確認する。
腎生検後の出血に関して、出血のリスクをあげる要因として、14Gの穿刺針の使用、Cr>2.0mg/dl、女性、AKI患者、Hb<12g/dlがある。他の報告では40歳以上、SBP>130mmHgなども考えられるようだ。
合併症が起こるタイミングとしては、67%の重大な出血合併症は8時間以内に起こり、24時間以内で91%になるという。ただ10%ほどの24時間以降に発症した人もいるのが悩ましい。
みなさんの施設ではどうしているだろうか?
これからも時折、当たり前のテーマを少し深く考えていこうと思う。
ここで重要なことは、「施設Aはこうだ、施設Bはこうだ、だからダメだ。」という議論ではなく「標準とは何か」を知った上でより安全に腎生検を実施する姿勢だと思う。
全ては患者さんのために
(写真)とても美しい標本 黒矢印は糸球体
クマさんがおしっこしないで冬眠できるのも、じん臓が一日に体液の何十倍もろ過してから不要なものを残して再吸収するのも、じん臓の替わりをしてくれる治療があるのも、すごいことです。でも一番のキセキは、こうして腎臓内科をつうじてみなさまとお会いできたこと。その感謝の気持ちをもって、日々の学びを共有できればと思います。投稿・追記など、Xアカウント(@Kiseki_jinzo)でもアナウンスしています。
2017/12/30
2017/12/28
あなたのネフロンを数えましょう 1
小柳ゆきさんの『あなたのキスを数えましょう』(1999年)では、好きだった相手とのキスを数え、一つ一つを思い出す。釈尊が愛別離苦を四苦八苦のひとつに挙げているように、忘れようとしても、嫌いになって楽になろうとしても、そう簡単に別れの悲しみは消えない。
だからこその名曲なのだろう。
同じように、腎臓内科の世界にはネフロンを数えようとする人たちがいる。といっても一個一個数えることはできないので、腎生検をして単位体積の皮質あたり糸球体が何個あるかを数え、造影CTで推定した皮質体積に掛け算して求める。
そうして得られた腎臓1個あたりのネフロン数は、以下のようになる(NEJM 2017 376 2349の表2より、示したのは平均値)
18-29歳 97万
30-39歳 93万
40-49歳 85万
50-59歳 81万
60-64歳 75万
65-69歳 72万
70-75歳 48万
数を数えただけで有名雑誌に載るのか?!と思うかもしれないが、さすがに世の中そんなに甘くはない。この論文はシングル・ネフロンGFRについて調べたものであり、さらにその背景には「ネフロン・エンダウメント」という(私の印象では、腎臓内科の裏テーマというか、あまり表に出てこない)概念がある。
これらについて少し書いてみたい(写真は2004年の"Officially missing you"という曲で知られるカナダR&BシンガーTamia)。
だからこその名曲なのだろう。
同じように、腎臓内科の世界にはネフロンを数えようとする人たちがいる。といっても一個一個数えることはできないので、腎生検をして単位体積の皮質あたり糸球体が何個あるかを数え、造影CTで推定した皮質体積に掛け算して求める。
そうして得られた腎臓1個あたりのネフロン数は、以下のようになる(NEJM 2017 376 2349の表2より、示したのは平均値)
18-29歳 97万
30-39歳 93万
40-49歳 85万
50-59歳 81万
60-64歳 75万
65-69歳 72万
70-75歳 48万
数を数えただけで有名雑誌に載るのか?!と思うかもしれないが、さすがに世の中そんなに甘くはない。この論文はシングル・ネフロンGFRについて調べたものであり、さらにその背景には「ネフロン・エンダウメント」という(私の印象では、腎臓内科の裏テーマというか、あまり表に出てこない)概念がある。
これらについて少し書いてみたい(写真は2004年の"Officially missing you"という曲で知られるカナダR&BシンガーTamia)。
腎臓内科 with B 2
腎炎などに対して免疫抑制をかける時には、HBV再活性化が問題になる。歴史的にはリツキシマブでとくに問題になったようで、劇症B型肝炎にいたった症例もある。治療と副作用のリスクを勘案するのはどの病気でもおなじだが、この場合どうすればよいのか?
これについて調べるのはそんなに難しくなくて、「リツキシマブ B型肝炎」とでも検索すればいくらでも資料がみつかると思う。ここでは、日本のガイドラインに載っているアルゴリズムを添付しておく。
ほかにも、HBV感染腎移植レシピエントのマネジメント(肝生検の意義、肝腎移植の選択肢、抗ウイルス薬の選択など)や、透析患者へのHBVワクチンで留意すべきこと(反応がよくない、用量をふやす)なども考慮が必要だ。ちゃんとbrush upしておかなければならない。
これについて調べるのはそんなに難しくなくて、「リツキシマブ B型肝炎」とでも検索すればいくらでも資料がみつかると思う。ここでは、日本のガイドラインに載っているアルゴリズムを添付しておく。
ほかにも、HBV感染腎移植レシピエントのマネジメント(肝生検の意義、肝腎移植の選択肢、抗ウイルス薬の選択など)や、透析患者へのHBVワクチンで留意すべきこと(反応がよくない、用量をふやす)なども考慮が必要だ。ちゃんとbrush upしておかなければならない。
2017/12/26
腎臓内科が必要とされるとき~急性血液浄化を考える~下巻
今回、下巻として、まずはどんな透析方法を用いるかについて話したいと思う。
透析方法に関しては大きく分けるとIRRT(intermittent renal replacement therapy)、CRRT(continuous renal replacement therapy)に分かれる。
まず、この両方のmodarityについてであるが、一般的にはCRRTのほうが血圧変動が少ないので血圧が低い場合に用いられることが多い。
注意点:
※CRRTであっても透析を開始してすぐの血圧低下(initial drop)は生じるという事は念頭に置く必要がある。
※血圧変動がある場合でも効率をあげる必要がある病態(重度高カリウム血症、重度尿毒症など)は血圧を維持して、IRRTを選択する必要がある。
まず、CRRTとIRRTに関しては2007年の論文では血行動態が安定しているものに対しての差は出ていなかった。2013年のsystematic reviewでも大きな差はみられなかった。ほとんどのRCTでの論文でもCRRTの有用性を示している論文はなかった。SSCG(surviving sepsis campaign gudeline)でも、重症感染症とAKIの患者に対しての短期死亡率を比較した場合にCRRTとIRRTの差はなかったとしている。
しかし、2017年のGMSの論文ではCRRTのほうが腎回復や経済学的な面でも良かったという事が言われている。
まだ、どちらのmodarityがいいかに関しては、明確な結論は出てはいないが、KDIGO2012のガイドラインではCRRTは血行動態が不安定な患者や、急性脳卒中や他の頭蓋内圧亢進を生じさせる病態があるAKIや脳浮腫があるAKIの患者には適応となる。
自分の施設でもCRRTの稼働に関しては少ないが、それで困った事は少ないと感じている。
ちなみに日本で多く用いられる血流量などを下図に示す。
では、CRRTになった場合に治療量をどのように決めればいいのか?は悩む部分であろう。
CRRTで決める必要性があるのは血液流量(Qb)、透析液流量(Qd)、濾液流量(Qf)である。
まず、設定するにあたって浄化量(Qd+Qf)のことが悩ましいのではないだろうか?
CRRTの中で、CHFであればQd=0、CHDであればQf=0、CHDFではQd+Qfとなる。
これらの3つに関しては一般的に小分子量物質のクリアランスはほとんど差がないが、中分子量物質のクリアランスに関してはCHF>CHDF>CHDとなる。そのため、目的物質に対してQfをおおくするのか、Qdを多くするのかは変えるのは一つである(たとえば、サイトカインを除きたいならばQfを多くしたりする。)。
注意点:
※血液濃縮や膜劣化を防ぐためにQfはQbの30%未満に設定する必要がある。
※浄化量の保険上限に関しては15-20L/日までになっている。
まず、浄化量をどのくらいにすればいいのかは悩むかと思う。
これについては歴史を知っておく必要性がある。
2000年にC Roncoらの報告で浄化量を25ml/kg/hr、35ml/kg/hr、45ml/kg/hrで比較した際に25ml/kg/mlに比して有意に35ml/kg/hrや45ml/kg/hrが予後が良かった。
そのため、この時点では高流量の浄化量の方が予後がいいという風潮になっていた。
その後、2つのRCTが2008年と2009年に出された。
一つはATN(Acute Renal Failure Trial Network) studyで、1124人をintensive therapy群(循環動態安定:週6回のHD、循環動態不安定:35ml/kg/hrのCVVHDF、または週6回のSLED)とless-intensive therapy群(循環動態安定:週3回のHD、循環動態不安定:25ml/kg/hrのCVVHDF、または週3回のSLED)を施行し、結論としては60日死亡率に差は認めなかった。
もう一つはRENAL(Randomized Evaluation of Normal Versus Augmented Level Replacement Therapy) studyである。これはオーストラリアとニュージーランドで行われ、1508例のAKIをhigher intensive therapy(浄化量が35ml/kg/hrのCHDF)とlower intensive therapy(浄化量が25ml/kg/hrのCHDF)にわけて、90日死亡率を見ているが有意な差は認めなかった。
なので、それまで主流であった浄化量は大容量ほどいいというのではなく、現在の至適の浄化量はKDIGOのガイドラインでの20〜25ml/kg/hrを推奨量としている。
つまり、患者が50kgで浄化量を20ml/kg/hrで設定した場合には、浄化量は1000ml/hrとなる。その浄化量を病態に合わせて、QdとQfに分ければいいということになる。
※CRRTでの透析での注意点として透析液に注意する必要がある。透析液にはリンは含まれていなく、またKは2であり、Mgは1に設定されており下がりやすいため注意する必要がある。
腎臓内科は急性血液浄化ではやはり第一線に立って治療をしていく必要がある。少しでも自信を持って第一線で戦って欲しいと思う。
透析方法に関しては大きく分けるとIRRT(intermittent renal replacement therapy)、CRRT(continuous renal replacement therapy)に分かれる。
まず、この両方のmodarityについてであるが、一般的にはCRRTのほうが血圧変動が少ないので血圧が低い場合に用いられることが多い。
注意点:
※CRRTであっても透析を開始してすぐの血圧低下(initial drop)は生じるという事は念頭に置く必要がある。
※血圧変動がある場合でも効率をあげる必要がある病態(重度高カリウム血症、重度尿毒症など)は血圧を維持して、IRRTを選択する必要がある。
まず、CRRTとIRRTに関しては2007年の論文では血行動態が安定しているものに対しての差は出ていなかった。2013年のsystematic reviewでも大きな差はみられなかった。ほとんどのRCTでの論文でもCRRTの有用性を示している論文はなかった。SSCG(surviving sepsis campaign gudeline)でも、重症感染症とAKIの患者に対しての短期死亡率を比較した場合にCRRTとIRRTの差はなかったとしている。
しかし、2017年のGMSの論文ではCRRTのほうが腎回復や経済学的な面でも良かったという事が言われている。
まだ、どちらのmodarityがいいかに関しては、明確な結論は出てはいないが、KDIGO2012のガイドラインではCRRTは血行動態が不安定な患者や、急性脳卒中や他の頭蓋内圧亢進を生じさせる病態があるAKIや脳浮腫があるAKIの患者には適応となる。
自分の施設でもCRRTの稼働に関しては少ないが、それで困った事は少ないと感じている。
ちなみに日本で多く用いられる血流量などを下図に示す。
![]() |
| 日本内科雑誌 103巻 5号より |
では、CRRTになった場合に治療量をどのように決めればいいのか?は悩む部分であろう。
CRRTで決める必要性があるのは血液流量(Qb)、透析液流量(Qd)、濾液流量(Qf)である。
まず、設定するにあたって浄化量(Qd+Qf)のことが悩ましいのではないだろうか?
CRRTの中で、CHFであればQd=0、CHDであればQf=0、CHDFではQd+Qfとなる。
これらの3つに関しては一般的に小分子量物質のクリアランスはほとんど差がないが、中分子量物質のクリアランスに関してはCHF>CHDF>CHDとなる。そのため、目的物質に対してQfをおおくするのか、Qdを多くするのかは変えるのは一つである(たとえば、サイトカインを除きたいならばQfを多くしたりする。)。
注意点:
※血液濃縮や膜劣化を防ぐためにQfはQbの30%未満に設定する必要がある。
※浄化量の保険上限に関しては15-20L/日までになっている。
まず、浄化量をどのくらいにすればいいのかは悩むかと思う。
これについては歴史を知っておく必要性がある。
2000年にC Roncoらの報告で浄化量を25ml/kg/hr、35ml/kg/hr、45ml/kg/hrで比較した際に25ml/kg/mlに比して有意に35ml/kg/hrや45ml/kg/hrが予後が良かった。
そのため、この時点では高流量の浄化量の方が予後がいいという風潮になっていた。
その後、2つのRCTが2008年と2009年に出された。
一つはATN(Acute Renal Failure Trial Network) studyで、1124人をintensive therapy群(循環動態安定:週6回のHD、循環動態不安定:35ml/kg/hrのCVVHDF、または週6回のSLED)とless-intensive therapy群(循環動態安定:週3回のHD、循環動態不安定:25ml/kg/hrのCVVHDF、または週3回のSLED)を施行し、結論としては60日死亡率に差は認めなかった。
もう一つはRENAL(Randomized Evaluation of Normal Versus Augmented Level Replacement Therapy) studyである。これはオーストラリアとニュージーランドで行われ、1508例のAKIをhigher intensive therapy(浄化量が35ml/kg/hrのCHDF)とlower intensive therapy(浄化量が25ml/kg/hrのCHDF)にわけて、90日死亡率を見ているが有意な差は認めなかった。
なので、それまで主流であった浄化量は大容量ほどいいというのではなく、現在の至適の浄化量はKDIGOのガイドラインでの20〜25ml/kg/hrを推奨量としている。
![]() |
| Crit care 15:207,2011より |
つまり、患者が50kgで浄化量を20ml/kg/hrで設定した場合には、浄化量は1000ml/hrとなる。その浄化量を病態に合わせて、QdとQfに分ければいいということになる。
※CRRTでの透析での注意点として透析液に注意する必要がある。透析液にはリンは含まれていなく、またKは2であり、Mgは1に設定されており下がりやすいため注意する必要がある。
腎臓内科は急性血液浄化ではやはり第一線に立って治療をしていく必要がある。少しでも自信を持って第一線で戦って欲しいと思う。
2017/12/22
腎臓内科が必要とされるとき~急性血液浄化を考える~上巻
腎臓内科医が必要とされる場面は多いと思う。
尿異常、電解質異常、慢性期管理も依頼されるが、やはり急性期の場面で患者さんのアウトカムを救うことは重要なことだと考える。
その中で、今回急性血液浄化に関して考えたいと思う。
AKIで急性血液浄化療法を依頼される場面は多い。ポイントは以下の点と考える。
①いつから開始するか?
②どんな透析方法をもちいるか?
③いつ終了するか?
④抗凝固療法やアクセスの問題?
順を追って話す。
①いつから開始するかに関しては以下のものが考慮される。
・腎代替療法で生命の改善が得られる場合
・絶対適応がある場合
絶対適応に関しては、
・高度アシドーシス(pH≦7.15)
・高尿素窒素血症(BUN≧100mg/dL)、尿毒症症状(脳炎・心膜炎・出血傾向)
・高カリウム血症(K≧6mEq/Lや心電図異常)
・高Mg血症(Mg≧4mEq/L、無尿、深部腱反射消失)
・尿量の減少(乏尿<200ml/12Hや無尿)、体液過剰(利尿薬反応なし)
などになってくる。
たとえば、患者さんにフロセミドを高用量投与しているが、全く尿の反応がない場合は急性血液浄化療法の施行を考えなくてはならない。
では、早期にやった方が良いかに関してはKI2015にでており見ていただくといいが、生命予後・維持透析・ICU入室・入院期間のいずれのアウトカムに対しても有意な差は認めなかった
2016年に有名な論文が二つ出ている。
AKIKI trial(NEJM 2016)
ELAIN trial(JAMA2016)
である。
この2つに関しては、結論ではAKIKI trialは早期群と晩期群では差は認められず、ELAIN trialでは早期群に有意な差をもって良い結論が出た。
結論だけでなく背景も非常に大切である。
AKIKIでは多施設で主に敗血症患者(8割)に対して早期群:KDIGOstage3、晩期群:緊急急性血液浄化療法も基準を満たす場合とした。
ELAINでは単施設で主に銃後患者(5割)で早期群はKDIGO stage2+NGAL、晩期群はKDIGOstage3の患者群をとっている。
なので、正直患者群にもばらつきがあるため、何とも言えない。
最近、重症度で分けてみて急性血液浄化をした場合に、早期群と晩期群はどうかというメタアナリシスがあった(Oncotarget 2017)
図を示す。左が重症患者、右が非重症患者である。
尿異常、電解質異常、慢性期管理も依頼されるが、やはり急性期の場面で患者さんのアウトカムを救うことは重要なことだと考える。
その中で、今回急性血液浄化に関して考えたいと思う。
AKIで急性血液浄化療法を依頼される場面は多い。ポイントは以下の点と考える。
①いつから開始するか?
②どんな透析方法をもちいるか?
③いつ終了するか?
④抗凝固療法やアクセスの問題?
順を追って話す。
①いつから開始するかに関しては以下のものが考慮される。
・腎代替療法で生命の改善が得られる場合
・絶対適応がある場合
絶対適応に関しては、
・高度アシドーシス(pH≦7.15)
・高尿素窒素血症(BUN≧100mg/dL)、尿毒症症状(脳炎・心膜炎・出血傾向)
・高カリウム血症(K≧6mEq/Lや心電図異常)
・高Mg血症(Mg≧4mEq/L、無尿、深部腱反射消失)
・尿量の減少(乏尿<200ml/12Hや無尿)、体液過剰(利尿薬反応なし)
などになってくる。
たとえば、患者さんにフロセミドを高用量投与しているが、全く尿の反応がない場合は急性血液浄化療法の施行を考えなくてはならない。
では、早期にやった方が良いかに関してはKI2015にでており見ていただくといいが、生命予後・維持透析・ICU入室・入院期間のいずれのアウトカムに対しても有意な差は認めなかった
2016年に有名な論文が二つ出ている。
AKIKI trial(NEJM 2016)
ELAIN trial(JAMA2016)
である。
この2つに関しては、結論ではAKIKI trialは早期群と晩期群では差は認められず、ELAIN trialでは早期群に有意な差をもって良い結論が出た。
結論だけでなく背景も非常に大切である。
AKIKIでは多施設で主に敗血症患者(8割)に対して早期群:KDIGOstage3、晩期群:緊急急性血液浄化療法も基準を満たす場合とした。
ELAINでは単施設で主に銃後患者(5割)で早期群はKDIGO stage2+NGAL、晩期群はKDIGOstage3の患者群をとっている。
なので、正直患者群にもばらつきがあるため、何とも言えない。
最近、重症度で分けてみて急性血液浄化をした場合に、早期群と晩期群はどうかというメタアナリシスがあった(Oncotarget 2017)
図を示す。左が重症患者、右が非重症患者である。
この論文では、重症患者には早期にやった方がよかったという結論であった。非重症患者では早期にやっても変わらないというものであった。
なので、個人的には絶対適応であればやる!また重症患者は急性血液浄化をおこなう閾値を下げてもいいのでは?とおもった。
また、1つの話で終わってしまった。次回は、どんな透析方法かを話したいと思う。
2017/12/21
腎臓内科 with B 1
「B型肝炎といえば膜性腎症」と学生時代に教わるだろうが、私は実はその経験がない。溶連菌後の腎炎も典型的なものは経験がない。ワクチンと抗生物質のおかげか、衛生と行政が改善したおかげか(行政の話は、ここでは触れない)。時代とともに病気も変わり、DAAの登場でいずれHCV関連腎症なども診なくなるのだろうか。
そんなB型肝炎だが、まだ問題になる場面がいくつかある。そのひとつはB型肝炎慢性感染の透析患者さんのマネジメントだ(参考文献はJ Trans Int Med 2015 3 93)。B型肝炎はcccDNA(covalently closed circular DNA)が肝細胞の核内に残るので完全には消せないことがおおい。それで、慢性感染HBVの治療閾値はDNA量、ALT値、肝生検所見などで判断する(各地域のガイドラインもまとめた日本のB型肝炎治療ガイドラインはこちら)。
それは透析を受けている受けていないに関わらず一緒だが、透析患者さんではいろいろあってALTが抑制されていることがおおいそうで、通常の閾値がALT正常上限の2倍以上のところを1.5倍にしたり、ALTが正常でも感染による肝障害が疑われるなら肝生検をしたり(安全に行えるならば)、を奨める人もいる(厚労省は透析かどうかにかかわらず31U/l以上としているが)。
いっぽうDNA量については、米国の透析ガイドブックや前掲文献はLog10で4-5を閾値にするのが慣例と記載がある。これについて透析学会の推奨を探しているが、透析と関係ない前掲ガイドラインはLog10で3.3(2000コピー/mm3)以上としている。
というのも、治療の奏効率があまりよくなくて薬の副作用がむしろ問題になるからだ。なので、治療にはさまざまな薬があるが、透析患者さんへの第一選択は逆転写酵素阻害薬ヌクレオシドのエンテカビル(ラミブジン不応がない場合の用量は0.5mg週1回)、耐性があればヌクレオ「チ」ド(ヌクレオシドにリン酸基がついたもの)テノフォビルとしている。
腎臓内科とB型肝炎、もう少し話をつづけます(写真はB型肝炎ウイルスを発見しワクチンを開発した故Baruch Samuel Blumberg先生、wikipedia提供。1976年にノーベル医学生理学賞を受賞されました。冥福をお祈り申し上げます)。
そんなB型肝炎だが、まだ問題になる場面がいくつかある。そのひとつはB型肝炎慢性感染の透析患者さんのマネジメントだ(参考文献はJ Trans Int Med 2015 3 93)。B型肝炎はcccDNA(covalently closed circular DNA)が肝細胞の核内に残るので完全には消せないことがおおい。それで、慢性感染HBVの治療閾値はDNA量、ALT値、肝生検所見などで判断する(各地域のガイドラインもまとめた日本のB型肝炎治療ガイドラインはこちら)。
それは透析を受けている受けていないに関わらず一緒だが、透析患者さんではいろいろあってALTが抑制されていることがおおいそうで、通常の閾値がALT正常上限の2倍以上のところを1.5倍にしたり、ALTが正常でも感染による肝障害が疑われるなら肝生検をしたり(安全に行えるならば)、を奨める人もいる(厚労省は透析かどうかにかかわらず31U/l以上としているが)。
いっぽうDNA量については、米国の透析ガイドブックや前掲文献はLog10で4-5を閾値にするのが慣例と記載がある。これについて透析学会の推奨を探しているが、透析と関係ない前掲ガイドラインはLog10で3.3(2000コピー/mm3)以上としている。
というのも、治療の奏効率があまりよくなくて薬の副作用がむしろ問題になるからだ。なので、治療にはさまざまな薬があるが、透析患者さんへの第一選択は逆転写酵素阻害薬ヌクレオシドのエンテカビル(ラミブジン不応がない場合の用量は0.5mg週1回)、耐性があればヌクレオ「チ」ド(ヌクレオシドにリン酸基がついたもの)テノフォビルとしている。
腎臓内科とB型肝炎、もう少し話をつづけます(写真はB型肝炎ウイルスを発見しワクチンを開発した故Baruch Samuel Blumberg先生、wikipedia提供。1976年にノーベル医学生理学賞を受賞されました。冥福をお祈り申し上げます)。
2017/12/20
We're MYRED!(MYREスタディ)
骨髄腫のcast nephropathyに対してヨーロッパで進行していたHCO-HDのRCTのひとつ(こちらとこちらにも言及あり)、MYREの結果がJAMAにでた。もう読んだ方もおおいかもしれないが、結果はなんと?
立場によっていろんな解釈ができるものだった!
…そもそもMYREという名前からして、mire(「泥沼にはまる」の意味、写真)に寄せていることが私には疑問だったが。
とにかく、どうしてこう歯切れ悪く婉曲的なのかをみてみよう。
スタディは、以前にCKDがなく、骨髄腫で、AKIになり、腎生検でcast nephropathyが確認され、透析適応になった94人の患者(平均68歳、45%が女性)が対象だ。
患者はランダム化され、それぞれがHCO-HD膜(Gambro社のTheralite®、2.1m2)、通常のhigh-flux膜で10日間に8回の透析を受けた。血液流量は250ml/min以上、透析液流量は500ml/min以上、1回の透析は5時間。Albが2.5g/dl以下のときにはアルブミン補充した。
骨髄腫に対しては、両者ともボルテゾミブとステロイドのレジメンを受け、反応不良の場合サイクロフォスファミドが追加でき、6ヶ月以降は治療を選べた(腎機能が戻り65歳未満なら幹細胞移植も)。
結果だが、プライマリ・エンドポイントである3ヶ月後の透析離脱率がHCO-HD群で41%、通常透析群で33%、群間差8%(95%CIは-12%から27%)だった。なので、まあこのスタディで華々しくHCO-HDが広がることは考えにくい。
ただ、このように力を入れてやったスタディだし、どうして結果がでなかったのか、どういう部分は有効なのかという総括が必要だ。まずはサンプル数の少なさだ。サイズをあげれば有意差が出るかもしれない。またランダム化については、HCO-HD群の透析開始時Cr濃度が通常群よりも低かった点に疑問が残る。
HCO-HDはfree light chainを十分に減らせたのだろうか?軽鎖濃度の減少率はHCO-HD群のほうが有意に大きい(3回透析後で70%減、対照群は30%減)。しかし、軽鎖濃度50mg/dl以下までさげた患者の割合には有意差が出ず、それぞれ43%と31%だった。
この数字はプライマリ・エンドポイントのそれと酷似しているので、軽鎖濃度を50mg/dlまで下げれば透析離脱できるのかもしれない。しかしそのためには、すでに化学療法という軽鎖産生を抑える根治的な治療がある。HCO-HDに追加の利益があるのか?
透析離脱について今回のスタディでは、残念ながら有意差が出なかった。ただ3ヶ月時点の寛解率(部分寛解、「とてもよい」部分寛解、完全寛解)でHCO-HD群で89%、対照群で62%と有意差がでて、17.5ヶ月のフォローアップで生存患者数にも有意差が出た(HCO-HD群で19人、対照群で13人、HR 0.76)。
この差にHCO-HD群の何が効いているのか、あるいは交絡があるのか(アルブミン輸液が多かったとか)。興味深いところだ。
十分な根拠がなくても用いられる治療は世の中にたくさんある(注)し、EuLITEスタディの結果もあわせ、HCO-HDも今後の動向に注目だ。
[注]これに関連して、ICUブックの著者マリノ先生はAKI章の冒頭で以下のような言葉を皮肉をこめて書いてもいる。
立場によっていろんな解釈ができるものだった!
…そもそもMYREという名前からして、mire(「泥沼にはまる」の意味、写真)に寄せていることが私には疑問だったが。
とにかく、どうしてこう歯切れ悪く婉曲的なのかをみてみよう。
スタディは、以前にCKDがなく、骨髄腫で、AKIになり、腎生検でcast nephropathyが確認され、透析適応になった94人の患者(平均68歳、45%が女性)が対象だ。
患者はランダム化され、それぞれがHCO-HD膜(Gambro社のTheralite®、2.1m2)、通常のhigh-flux膜で10日間に8回の透析を受けた。血液流量は250ml/min以上、透析液流量は500ml/min以上、1回の透析は5時間。Albが2.5g/dl以下のときにはアルブミン補充した。
骨髄腫に対しては、両者ともボルテゾミブとステロイドのレジメンを受け、反応不良の場合サイクロフォスファミドが追加でき、6ヶ月以降は治療を選べた(腎機能が戻り65歳未満なら幹細胞移植も)。
結果だが、プライマリ・エンドポイントである3ヶ月後の透析離脱率がHCO-HD群で41%、通常透析群で33%、群間差8%(95%CIは-12%から27%)だった。なので、まあこのスタディで華々しくHCO-HDが広がることは考えにくい。
ただ、このように力を入れてやったスタディだし、どうして結果がでなかったのか、どういう部分は有効なのかという総括が必要だ。まずはサンプル数の少なさだ。サイズをあげれば有意差が出るかもしれない。またランダム化については、HCO-HD群の透析開始時Cr濃度が通常群よりも低かった点に疑問が残る。
HCO-HDはfree light chainを十分に減らせたのだろうか?軽鎖濃度の減少率はHCO-HD群のほうが有意に大きい(3回透析後で70%減、対照群は30%減)。しかし、軽鎖濃度50mg/dl以下までさげた患者の割合には有意差が出ず、それぞれ43%と31%だった。
この数字はプライマリ・エンドポイントのそれと酷似しているので、軽鎖濃度を50mg/dlまで下げれば透析離脱できるのかもしれない。しかしそのためには、すでに化学療法という軽鎖産生を抑える根治的な治療がある。HCO-HDに追加の利益があるのか?
透析離脱について今回のスタディでは、残念ながら有意差が出なかった。ただ3ヶ月時点の寛解率(部分寛解、「とてもよい」部分寛解、完全寛解)でHCO-HD群で89%、対照群で62%と有意差がでて、17.5ヶ月のフォローアップで生存患者数にも有意差が出た(HCO-HD群で19人、対照群で13人、HR 0.76)。
この差にHCO-HD群の何が効いているのか、あるいは交絡があるのか(アルブミン輸液が多かったとか)。興味深いところだ。
十分な根拠がなくても用いられる治療は世の中にたくさんある(注)し、EuLITEスタディの結果もあわせ、HCO-HDも今後の動向に注目だ。
[注]これに関連して、ICUブックの著者マリノ先生はAKI章の冒頭で以下のような言葉を皮肉をこめて書いてもいる。
The inability of hemodialysis to curb the mortality rate in acute renal failure has apparently escaped the notice of the "evidence-based medicine" junkies, who preach that an intervation should be discarded if it does not improve mortality.
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