ネフローゼで浮腫になるのは低アルブミン血症で膠質浸透圧が下がるからと思っていたが、それと別に腎臓におけるNa貯留が機序として分かったのはつい数年前のことだ(JASN 2009 20 299)。欧州のグループによるこの論文は、ネフローゼで尿中に漏れるplasminがENaCのγサブユニットについたinhibitory peptideをcleaveしてENaCを活性化することを示した。
今月のJASNでは、やはり欧州の尿細管とイオン輸送のボスであるBindels先生のグループが、plasminが今度は遠位尿細管のCaチャネルTRPV5を抑制することを示した論文が出た(JASN 2012 23 1824)。研究によればplasminがPAR-1を介した細胞内シグナリング経路を活性化し、TRPV5のCalmodulin結合サイトのアミノ酸残基(144セリン)をリン酸化して、それによりチャネルの孔が閉じる。
TRPV5-transfected HEK293 cellを使ったりパッチクランプを使ったりして美しい論文だが、ネフローゼで尿Ca排泄が増えるという話はあまり聴かない(著者によれば家族性ネフローゼでnephrocalcinosisの報告があるらしい)。おそらくENaCの次はTRPV5という具合に調べてみたのだろうが、これが糸口になって新たな病態機序が分かれば面白い。
クマさんがおしっこしないで冬眠できるのも、じん臓が一日に体液の何十倍もろ過してから不要なものを残して再吸収するのも、じん臓の替わりをしてくれる治療があるのも、すごいことです。でも一番のキセキは、こうして腎臓内科をつうじてみなさまとお会いできたこと。その感謝の気持ちをもって、日々の学びを共有できればと思います。投稿・追記など、Xアカウント(@Kiseki_jinzo)でもアナウンスしています。
2012/11/30
Stewart Approach
塩素イオンの害について調べていたら(Crit Care 2010 14 226)、Stewart Approachと呼ばれる酸塩基平衡の解釈方法を学ぶことができた。これは、腎臓内科が用いる古典的なHenderson-Hasselbalch(H-H)に代わる新しい解釈で、麻酔科・ICU領域で用いられている。
原理に電離平衡のみならず、電気的中立性と質量保存の法則を取り入れるこの方法によれば、プロトン濃度の決定要因は三つ、SID(strong ion difference)、CO2分圧、弱酸濃度という。H-Hとの決定的な違いは、HCO3が酸塩基平衡のマーカーであってメカニズムではないと言い切るところにある。
SIDは(Na + K + Mg + Ca) - (Cl + lactate)のことだ。高Cl代謝性アシドーシスというが、実際はCl濃度そのものよりもSIDが重要で、たとえCl濃度が高くてもSIDが動かなければプロトン濃度は変わらず、それはICU患者300人のデータでも確かめられた(Anesth Analg 2006 103 144)。
原理に電離平衡のみならず、電気的中立性と質量保存の法則を取り入れるこの方法によれば、プロトン濃度の決定要因は三つ、SID(strong ion difference)、CO2分圧、弱酸濃度という。H-Hとの決定的な違いは、HCO3が酸塩基平衡のマーカーであってメカニズムではないと言い切るところにある。
SIDは(Na + K + Mg + Ca) - (Cl + lactate)のことだ。高Cl代謝性アシドーシスというが、実際はCl濃度そのものよりもSIDが重要で、たとえCl濃度が高くてもSIDが動かなければプロトン濃度は変わらず、それはICU患者300人のデータでも確かめられた(Anesth Analg 2006 103 144)。
2012/11/27
塩素イオンの害
ICU分野は治療の何から何まで入念に有効性が検証されており、生理食塩水もそのひとつだ。Volume overload、高Cl代謝性アシドーシスを起こすのみならず急性腎不全を起こしているかもしれないと考えられている(レビューはCrit Care 2010 14 226)。その機序として、vasoconstrictionが考えられている(動物ではJCI 1983 71 726、人間ではAnn Surg 2012 256 18)。
それで、ICUによっては低Clな輸液、LR、Hartman、Baxter社のPlasma-Lyte®などを用いる。先月JAMAに高Cl輸液群と低Cl輸液群でICUにおけるAKIの違いを調べた論文がでた(JAMA 2012 308 1566)。ICUに「高Cl輸液はICU指導医の許可なしに輸液できない」というシバリを掛ける前と後で比較したもので、学会でも紹介されたらしい。
結果は、シバリを掛けたほうがAKIが少なかった。Volumeは大きなconfounding factorだろうが、著者はCl負荷がAKIのリスク因子と言いたいようだ。それにしてもオーストラリアはICUと輸液についてのスタディをバンバンだす。SAFE(NEJM 2004 350 2247)もそうだし、今月でたHESと生理食塩水を比べたの(NEJM 2012 367 1901)もそう。実際に病院ではどんな輸液をしているのだろう。
[2017年7月追加]0.9%食塩水についてのディベート論文について紹介した投稿、0.9%食塩水とPlasmaLyte®を比較したSPLITトライアルを紹介した投稿も参考になれば幸いです。
それで、ICUによっては低Clな輸液、LR、Hartman、Baxter社のPlasma-Lyte®などを用いる。先月JAMAに高Cl輸液群と低Cl輸液群でICUにおけるAKIの違いを調べた論文がでた(JAMA 2012 308 1566)。ICUに「高Cl輸液はICU指導医の許可なしに輸液できない」というシバリを掛ける前と後で比較したもので、学会でも紹介されたらしい。
結果は、シバリを掛けたほうがAKIが少なかった。Volumeは大きなconfounding factorだろうが、著者はCl負荷がAKIのリスク因子と言いたいようだ。それにしてもオーストラリアはICUと輸液についてのスタディをバンバンだす。SAFE(NEJM 2004 350 2247)もそうだし、今月でたHESと生理食塩水を比べたの(NEJM 2012 367 1901)もそう。実際に病院ではどんな輸液をしているのだろう。
[2017年7月追加]0.9%食塩水についてのディベート論文について紹介した投稿、0.9%食塩水とPlasmaLyte®を比較したSPLITトライアルを紹介した投稿も参考になれば幸いです。
2012/11/23
ネタ帳の紹介
教育熱心な先生がたいてい面白いのは、彼らがただ物知りなだけでなく、相手にとって分かりやすく、面白く、やる気が起こるようにするプロだからだろう。Johnston先生の話も面白かったが、Hoenig先生の話はもっと面白かった。彼女は腎臓内科を何倍も面白くする10のコツ(これは私がつけた題名だが)について話した。そのひとつは透析についてもっと教える、だった。
これは私も同感だ、しかし米国腎臓内科コミュニティには「透析についてレジデントに教えるな、透析診療が嫌で腎臓内科を選ばない人が多いから」という風潮がある。しかし腎代替療法である透析を学ぶことで、腎臓のさまざまな機能を教えることができる。水排泄、さまざまな分子量の老廃物排泄(NEJM 2007 357 1316)、EPO、活性化ビタミンDなど。
また現在では誰でも受けられるが、透析はあくまで生命維持装置である。実際、50年前の米国では慢性腎不全患者に対して透析器械の数が足りず、シアトルのSwedish病院では俗に"God Committee"と呼ばれる委員会が、誰を生かすかという順番を取り決めた。彼女は当時の雑誌記事を紹介しているそうだ。
ほかにも、尿沈査をiPhoneで撮影する(コツが要るが出来るらしい)、JASNのMILESTONES IN NEPHROLOGYシリーズを紹介する、TTKGでもfree water deficitでも一緒に計算する、翌日の検査データを予想する、coffee talk(ちょっとした時間にする話、たとえば「血清Naは140Eq/lなのに、生理食塩水のNaは154mEq/l。はい、議論して!」とか)などが挙げられた。
これは私も同感だ、しかし米国腎臓内科コミュニティには「透析についてレジデントに教えるな、透析診療が嫌で腎臓内科を選ばない人が多いから」という風潮がある。しかし腎代替療法である透析を学ぶことで、腎臓のさまざまな機能を教えることができる。水排泄、さまざまな分子量の老廃物排泄(NEJM 2007 357 1316)、EPO、活性化ビタミンDなど。
また現在では誰でも受けられるが、透析はあくまで生命維持装置である。実際、50年前の米国では慢性腎不全患者に対して透析器械の数が足りず、シアトルのSwedish病院では俗に"God Committee"と呼ばれる委員会が、誰を生かすかという順番を取り決めた。彼女は当時の雑誌記事を紹介しているそうだ。
ほかにも、尿沈査をiPhoneで撮影する(コツが要るが出来るらしい)、JASNのMILESTONES IN NEPHROLOGYシリーズを紹介する、TTKGでもfree water deficitでも一緒に計算する、翌日の検査データを予想する、coffee talk(ちょっとした時間にする話、たとえば「血清Naは140Eq/lなのに、生理食塩水のNaは154mEq/l。はい、議論して!」とか)などが挙げられた。
2012/11/16
腎移植後の再発
腎疾患は腎そのものに原因がある場合もあるが、多くの場合腎外の因子が腎にダメージを与えて起こる。では、腎臓を移植しても同じプロセスがダメージを起こすのでは?最も顕著な例はFSGSだろう。今年Northwestern大学が報告した有名なケースがある(NEJM 2012 366 1648)。
原発性のFSGS患者さんに健康な生体腎を移植したら、二日目には>10g/dの蛋白尿がでて、生検するとfoot processが完全になくなっていた。プロトコルにしたがい移植前後に血漿交換をしたにもかかわらずである。
やがて腎機能も悪化し、このままでは移植腎が廃絶するのは必至で、かつ患者さんには多大な感作リスクが掛かり、二回目の移植可能性が減ってしまう。そこで彼らはこの移植腎を摘出し、ドナーの許可を得てこれを移植リストのトップにいた患者さんに再移植した。すると腎は(FSGSのcirculating factorがないので)正常に機能した。
FSGSの移植後再発は20-30%に見られる(NDT 2010 25 25、あのPonticelliレジメンのPonticelli先生が書いている)。予防に用いる血漿交換はimmunoabsorption with protein A。Circulating factorの除去が目的で、その産生は抑えないのでは?と思われるが、あるRCTスタディ(AJT 2009 9 1081)では治療群が12か月たっても90%の寛解率を示した。
Circulating factorを抑える治療としてはcyclosporine(先発薬なのでtacrolimusよりデータがあるが、比較したスタディはない)、rituximab、galactose IV infusion(Transl Res 2008 151 288)などが用いられている。
IgA腎症はどうか?IgA腎症もまた病原性のある腎外因子が疑われている(その一つはgalactose-deficient IgA1に対する自己抗体、Semin Immunopathol 2012 34 365)ので再発しうる。Mini-review(AJT 2006 6 2535)によれば、生検しないと分からないような再発が50-60%、血尿・蛋白尿・腎機能低下など目に見える再発は13-50%という。血縁ドナーからの生体腎移植で再発リスクが心配されているが、graft survival成績はexcellentで、既存のデータによれば避けるべきではない。
MPGNは免疫染色パターンと補体制御遺伝子の異常によって治療が細分化されるようになった。たとえばCFH/Iが異常なら再発リスクが高く肝腎同時移植、eculizumab、血漿交換が推奨され、MCPが異常なら腎単独移植が推奨される(Semin Thromb Hemost 2010 36 653)。HUSかatypical HUSかは臨床診断が難しいので、補体機能や遺伝子精査が推奨される(HUSなら再発はほぼないが、atypicalなら再発するから)。
MPGNと移植で覚えておくべきは、transplant glomerulopathy(de novo MPGN)。それから、eculizumabはIgG2、IgG4、Kappaで出来ているので、投与後に生検・免疫染色するとこれらが染まる(JASN 2012 23 1229)が異常ではないと、こないだのKidney Weekで報告があった。
抗GBM抗体による腎臓病、それにLupus nephritisで分かっているのは、移植前に病勢がコントロールされているほうが術後成績がよいということだ。腎廃絶後は腎機能を図れないが、抗体価や腎外症状をフォローしたい。たとえば抗GBM抗体では6-12か月抗体価陰性が持続するまで移植を待つよう推奨されている。
糖尿病性腎症だが、再発は高く進行は早い(UCLAのデータはTransplantation 2003 75 66)。Calcineurin inhibitor、ステロイドにより血糖コントロールが悪化するせいもある(NODAT、new-onset diabetes after transplantも多い)。そして糖尿病は腎障害だけでなく心血管系イベント、感染症などのリスクなので、それらによって移植後の生命・QOL予後が低下するかもしれない(CJASN 2011 6 1214)。
原発性のFSGS患者さんに健康な生体腎を移植したら、二日目には>10g/dの蛋白尿がでて、生検するとfoot processが完全になくなっていた。プロトコルにしたがい移植前後に血漿交換をしたにもかかわらずである。
やがて腎機能も悪化し、このままでは移植腎が廃絶するのは必至で、かつ患者さんには多大な感作リスクが掛かり、二回目の移植可能性が減ってしまう。そこで彼らはこの移植腎を摘出し、ドナーの許可を得てこれを移植リストのトップにいた患者さんに再移植した。すると腎は(FSGSのcirculating factorがないので)正常に機能した。
FSGSの移植後再発は20-30%に見られる(NDT 2010 25 25、あのPonticelliレジメンのPonticelli先生が書いている)。予防に用いる血漿交換はimmunoabsorption with protein A。Circulating factorの除去が目的で、その産生は抑えないのでは?と思われるが、あるRCTスタディ(AJT 2009 9 1081)では治療群が12か月たっても90%の寛解率を示した。
Circulating factorを抑える治療としてはcyclosporine(先発薬なのでtacrolimusよりデータがあるが、比較したスタディはない)、rituximab、galactose IV infusion(Transl Res 2008 151 288)などが用いられている。
IgA腎症はどうか?IgA腎症もまた病原性のある腎外因子が疑われている(その一つはgalactose-deficient IgA1に対する自己抗体、Semin Immunopathol 2012 34 365)ので再発しうる。Mini-review(AJT 2006 6 2535)によれば、生検しないと分からないような再発が50-60%、血尿・蛋白尿・腎機能低下など目に見える再発は13-50%という。血縁ドナーからの生体腎移植で再発リスクが心配されているが、graft survival成績はexcellentで、既存のデータによれば避けるべきではない。
MPGNは免疫染色パターンと補体制御遺伝子の異常によって治療が細分化されるようになった。たとえばCFH/Iが異常なら再発リスクが高く肝腎同時移植、eculizumab、血漿交換が推奨され、MCPが異常なら腎単独移植が推奨される(Semin Thromb Hemost 2010 36 653)。HUSかatypical HUSかは臨床診断が難しいので、補体機能や遺伝子精査が推奨される(HUSなら再発はほぼないが、atypicalなら再発するから)。
MPGNと移植で覚えておくべきは、transplant glomerulopathy(de novo MPGN)。それから、eculizumabはIgG2、IgG4、Kappaで出来ているので、投与後に生検・免疫染色するとこれらが染まる(JASN 2012 23 1229)が異常ではないと、こないだのKidney Weekで報告があった。
抗GBM抗体による腎臓病、それにLupus nephritisで分かっているのは、移植前に病勢がコントロールされているほうが術後成績がよいということだ。腎廃絶後は腎機能を図れないが、抗体価や腎外症状をフォローしたい。たとえば抗GBM抗体では6-12か月抗体価陰性が持続するまで移植を待つよう推奨されている。
糖尿病性腎症だが、再発は高く進行は早い(UCLAのデータはTransplantation 2003 75 66)。Calcineurin inhibitor、ステロイドにより血糖コントロールが悪化するせいもある(NODAT、new-onset diabetes after transplantも多い)。そして糖尿病は腎障害だけでなく心血管系イベント、感染症などのリスクなので、それらによって移植後の生命・QOL予後が低下するかもしれない(CJASN 2011 6 1214)。
2012/11/15
Evidence-based management of hypercalcemia
電解質第三弾、高Ca血症。高Ca血症は、悪性疾患などで患者さんの状態が元々良くないうえ、腎不全などをきたし、じつは予後不良だ。San Diego VAのretrospective studyでは約30%が悪性腫瘍によるものだった(Endocrine Practice 2006 12 535、この患者層はほとんどスモーカーだが)。台湾のERが行ったretrospective studyでは、高Ca血症患者の死亡率が23%だった(Am J Med Sci 2006 331 119)。意外な数字だが、副腎不全や結核患者も多かったようだ。
悪性腫瘍による高Ca血症の原因は80%がHHM(PTHrPによる、とくに扁平上皮細胞由来の悪性腫瘍)、20%がosteolytic、1%以下が1,25-OH vitamin D上昇による(NEJM 2005 352 373)。PTHrPはtype1 PTH receptorに結合しPTHと同じく骨の脱石灰化を亢進し尿中のCa排泄を阻害する(JCI 1988 81 932)が、1,25-OH vitamin Dを抑制するのがPTHと反対だ(J Bone Miner Res 2005 20 1792)。
治療はどうか?先月のCJASNにまとまったレビュー(CJASN 2012 7 1722)が出た。まずはカルシウムに毒されたTALと集合管を助ける。どちらもCaSRがあって、高Ca血症で前者ではNaClの再吸収が落ち、後者ではADHが不応になるから、補液でこれを解消する。生理食塩水が用いられるが、volume overloadと低Na血症に気を付ける必要がある。
ループ利尿剤はどうか?生理食塩水との併用は(とくに腫瘍内科領域で)慣習だが、エビデンスは乏しい(Ann Int Med 2008 149 259)。というか、あるのはfurosemide単独使用の小規模スタディだけで、これは1120mg/dという高用量でも1/3の患者しかCaが正常化せず、多くは低Mg血症を発症した。生理食塩水との併用は、だから、奨めるデータも奨めないデータもない。少なくともvolume overload例には正当化できるだろう。
Bisphosphonateはどうか?効く、量に比例して効く(Am J Med 1993 95 297)、とくに強いpamidronate、zolendronate、ibandronateは(ibandronateはFDAが適応を認可していないが)。しかし腎毒性と腎機能低下時のdose adjustmentに留意が必要で、ASCOがガイドラインを出した(CJASN 2012 7 1722、表1)。腎毒性はcollapsing FSGS(とくにpamidronateに多い)、ATN(zolendronateに多い、不可逆的で透析導入になることも)、どちらも繰り返し投与した場合に起こりやすい。
Calcitoninは?サケ(salmon)から作られるというのがユニークだが、まあ効かない、でも害もない。重症の高Ca血症でbisphosphonateと併用したら良かったというデータはある(BMJ 1986 292 1549)。[2015年5月追加]日本では即効性があるとして使われるようだが、推奨量が4単位/kgなのにたいして、日本の保険適応上限は80単位で足りないそうだ。なおBMJのスタディでは10単位を8時間ごと皮下注している。
とまあここまでは知っている話で、ここからが新しかった。Gallium Nitrate(ガリウムは周期表の第13族、アルミニウムと同じ)は破骨細胞を止めるらしく、五日間連続静注でbisphosphonateより効くかもしれないというデータがある(Cancer J 2006 12 47)。ステロイドはリンパ腫による高Ca血症に用いられ、1α-hydroxylaseを阻害して1,25-OH vitamin Dを下げるという(NEJM 1992 326 1196)。
抗PTHrP抗体(Clin Cancer Res 2005 11 4198、日本の研究)、抗RANKL抗体denosumab(Lancet 2011 377 4198)も開発された。RANKL(receptor activator of nuclear factor κB ligand)とはosteoblastがosteoclastに話しかけるシグナルの一つで、これを受けた破骨細胞は成熟し増殖し活性化する(逆のシグナルは以前ここでも紹介したosteoprotegerin)。Bisphoshonate不応の高Ca血症にdenosumabを試した報告(一例、Ann Int Med 2012 156 906)もでた。
悪性腫瘍による高Ca血症の原因は80%がHHM(PTHrPによる、とくに扁平上皮細胞由来の悪性腫瘍)、20%がosteolytic、1%以下が1,25-OH vitamin D上昇による(NEJM 2005 352 373)。PTHrPはtype1 PTH receptorに結合しPTHと同じく骨の脱石灰化を亢進し尿中のCa排泄を阻害する(JCI 1988 81 932)が、1,25-OH vitamin Dを抑制するのがPTHと反対だ(J Bone Miner Res 2005 20 1792)。
治療はどうか?先月のCJASNにまとまったレビュー(CJASN 2012 7 1722)が出た。まずはカルシウムに毒されたTALと集合管を助ける。どちらもCaSRがあって、高Ca血症で前者ではNaClの再吸収が落ち、後者ではADHが不応になるから、補液でこれを解消する。生理食塩水が用いられるが、volume overloadと低Na血症に気を付ける必要がある。
ループ利尿剤はどうか?生理食塩水との併用は(とくに腫瘍内科領域で)慣習だが、エビデンスは乏しい(Ann Int Med 2008 149 259)。というか、あるのはfurosemide単独使用の小規模スタディだけで、これは1120mg/dという高用量でも1/3の患者しかCaが正常化せず、多くは低Mg血症を発症した。生理食塩水との併用は、だから、奨めるデータも奨めないデータもない。少なくともvolume overload例には正当化できるだろう。
Bisphosphonateはどうか?効く、量に比例して効く(Am J Med 1993 95 297)、とくに強いpamidronate、zolendronate、ibandronateは(ibandronateはFDAが適応を認可していないが)。しかし腎毒性と腎機能低下時のdose adjustmentに留意が必要で、ASCOがガイドラインを出した(CJASN 2012 7 1722、表1)。腎毒性はcollapsing FSGS(とくにpamidronateに多い)、ATN(zolendronateに多い、不可逆的で透析導入になることも)、どちらも繰り返し投与した場合に起こりやすい。
Calcitoninは?サケ(salmon)から作られるというのがユニークだが、まあ効かない、でも害もない。重症の高Ca血症でbisphosphonateと併用したら良かったというデータはある(BMJ 1986 292 1549)。[2015年5月追加]日本では即効性があるとして使われるようだが、推奨量が4単位/kgなのにたいして、日本の保険適応上限は80単位で足りないそうだ。なおBMJのスタディでは10単位を8時間ごと皮下注している。
とまあここまでは知っている話で、ここからが新しかった。Gallium Nitrate(ガリウムは周期表の第13族、アルミニウムと同じ)は破骨細胞を止めるらしく、五日間連続静注でbisphosphonateより効くかもしれないというデータがある(Cancer J 2006 12 47)。ステロイドはリンパ腫による高Ca血症に用いられ、1α-hydroxylaseを阻害して1,25-OH vitamin Dを下げるという(NEJM 1992 326 1196)。
抗PTHrP抗体(Clin Cancer Res 2005 11 4198、日本の研究)、抗RANKL抗体denosumab(Lancet 2011 377 4198)も開発された。RANKL(receptor activator of nuclear factor κB ligand)とはosteoblastがosteoclastに話しかけるシグナルの一つで、これを受けた破骨細胞は成熟し増殖し活性化する(逆のシグナルは以前ここでも紹介したosteoprotegerin)。Bisphoshonate不応の高Ca血症にdenosumabを試した報告(一例、Ann Int Med 2012 156 906)もでた。
2012/11/04
Evidence-based management of hyperkalemia
高K血症の心毒性は、resting potentialが上がるので心筋細胞膜のexcitabilityがあがるからとされている。同じことは横紋筋にも起こり、この場合なんと高K血症によりresting potentialがthreshold potentialより高くなり筋細胞が不応になってしまうことがある。それで、低K血症のみならず高K血症が筋力低下でやってくることもある。
高K血症と心電図変化の相関は、実際には教科書にあるほど典型的ではない。スタディによれば、6-9.3mEq/lの高K血症で心電図変化があったのは46%に過ぎず、致死性不整脈になった14例のうち事前に心電図変化があったのは1例だけだった(CJASN 2008 3 324)。
おもしろかったのは、同じK濃度でも、Ca濃度を下げただけでT波の上昇が見られたという症例だった。高K血症でCaを投与するのはthreshold potentialを上げるためだが、たとえば透析患者さんにcinacalcetを投与した場合、Caが下がりthreshold potentialが下がるので心筋のexcitabilityが高まる。
インスリンはKを下げるが、持続(Am J Med 1988 85 507)でもボーラス(KI 1990 38 869)でも低血糖がかなり起こる。グルコースを多くあげるか(AJKD 1996 28 508)、β刺激剤を併用すれば(糖新生が起こるから)いいかもしれない。Beta-agonistの効果は、0.6mEq/l/10mg、0.9mEq/l/20mg程度であまりよくない(Am J Med 1988 85 507)。患者さんがβ遮断薬を飲んでいれば効かないし、虚血性心疾患があれば危険だ。
重曹は、重度アシドーシスでは有効だ。というのも、アシドーシスでは細胞のNHE1チャネルからH+と一緒にNa+が細胞内に入れないので、重曹を上げるとNBCe1チャネルからHCO3-と一緒にNa+が細胞内に入り、Na-K-ATPaseが回りK+を細胞内に取り込むことができるからだ(JASN 2011 22 1981)。
しかし、アシドーシスでなければ、volume expansionによる希釈効果しかなく、その効果は生理食塩水と変わらない。Resin(Kayexalate)は、SorbitolとSorbitol+ResinでK降下作用に差がなかった(Gastroenterology 1995 108 752)。
高K血症と心電図変化の相関は、実際には教科書にあるほど典型的ではない。スタディによれば、6-9.3mEq/lの高K血症で心電図変化があったのは46%に過ぎず、致死性不整脈になった14例のうち事前に心電図変化があったのは1例だけだった(CJASN 2008 3 324)。
おもしろかったのは、同じK濃度でも、Ca濃度を下げただけでT波の上昇が見られたという症例だった。高K血症でCaを投与するのはthreshold potentialを上げるためだが、たとえば透析患者さんにcinacalcetを投与した場合、Caが下がりthreshold potentialが下がるので心筋のexcitabilityが高まる。
インスリンはKを下げるが、持続(Am J Med 1988 85 507)でもボーラス(KI 1990 38 869)でも低血糖がかなり起こる。グルコースを多くあげるか(AJKD 1996 28 508)、β刺激剤を併用すれば(糖新生が起こるから)いいかもしれない。Beta-agonistの効果は、0.6mEq/l/10mg、0.9mEq/l/20mg程度であまりよくない(Am J Med 1988 85 507)。患者さんがβ遮断薬を飲んでいれば効かないし、虚血性心疾患があれば危険だ。
重曹は、重度アシドーシスでは有効だ。というのも、アシドーシスでは細胞のNHE1チャネルからH+と一緒にNa+が細胞内に入れないので、重曹を上げるとNBCe1チャネルからHCO3-と一緒にNa+が細胞内に入り、Na-K-ATPaseが回りK+を細胞内に取り込むことができるからだ(JASN 2011 22 1981)。
しかし、アシドーシスでなければ、volume expansionによる希釈効果しかなく、その効果は生理食塩水と変わらない。Resin(Kayexalate)は、SorbitolとSorbitol+ResinでK降下作用に差がなかった(Gastroenterology 1995 108 752)。
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