腎臓内科のような専門科に入ると、「学ぶ」だけでなく「知っているかどうか」という知識を見につけることもとても大事だ。たとえば「妊娠中の女性がrenal K wastingによる低カリウム血症になったら考えることは?」と問われれば反射的に「mineralocorticoid receptorの変異によりprogesteroneがaldosteroneに代わりrenal K wastingを起こすから」と答える。治療はK補充とamiloride(妊娠中の女性にはclass B)だ。
スタッフによれば、腎臓内科医が集まる席でのクイズ大会でこの症例が出たが、誰もが「mineralocorticoid receptorの変異」と即答したらしい。でもただ知っているだけなら誰でもできる。それで専門科医なんだからせめて文献をと調べるとmineralocorticoid receptorのS810L変異の女性が妊娠中に異常な高血圧と低カリウム血症をきたしたというのが一本みつかった(Science 2000 289 119)。
mineralocorticoid receptorのS810L変異があると、ligand binding siteにあるhelix 5のside chainが異常になるとか(この辺のくだりは学生時代なら興奮しただろうが、今はそうでもない)で、aldosteroneのみならずステロイドなら何でも、さらにはaldosterone antagonistのspironolactoneにまでも結合してしまう(gain-of-mutation)。
それによりS810L変異がある患者さんは小さな頃から高血圧を発症する。検査値はやや低K、やや高HCO3(ただし変異のない群に比べて有意差はなかったが)でprimary hyperaldosteronismを疑うがaldosteroneレベルは極端に低い。妊娠中は高濃度のprogesteroneがmineralocorticoid receptorを刺激するので、降圧剤にも関わらず血圧は上がり続け、報告された症例では34週までに210/120mmHgになったので緊急帝王切開になった(赤ちゃんもお母さんも無事)。
クマさんがおしっこしないで冬眠できるのも、じん臓が一日に体液の何十倍もろ過してから不要なものを残して再吸収するのも、じん臓の替わりをしてくれる治療があるのも、すごいことです。でも一番のキセキは、こうして腎臓内科をつうじてみなさまとお会いできたこと。その感謝の気持ちをもって、日々の学びを共有できればと思います。投稿・追記など、Xアカウント(@Kiseki_jinzo)でもアナウンスしています。
2012/04/28
angiotensin-(1-12)
他日、「腎臓がない人にもACE阻害剤は有効か?」という禅問答あるいは頓知のような質問に応えるべく色々調べたレジデントがRenal Grand Roundで発表していた。腎臓がなければreninが出ない、reninがなければangiotensin IIも出来ないだろうというわけだ。
結論からいうと、reninがなくてもangiotensin IIはできる(Hypertension 2010 55 445)。手がかりになったのはangiotensin-(1-12)で、これがreninに関係なくangiotensin Iになると分かった。だから腎臓のない患者さんでもACE阻害剤は有効なはずだ。ちなみにangiotensin-(1-12)を2006年に初めて発表したのは宮崎大学のグループだ。
結論からいうと、reninがなくてもangiotensin IIはできる(Hypertension 2010 55 445)。手がかりになったのはangiotensin-(1-12)で、これがreninに関係なくangiotensin Iになると分かった。だから腎臓のない患者さんでもACE阻害剤は有効なはずだ。ちなみにangiotensin-(1-12)を2006年に初めて発表したのは宮崎大学のグループだ。
Spironolactone
心不全科(循環器内科の中でもさらに細分化した分野)のフェローから、「腎機能のない人にspironolactoneを投与して高K血症になるメカニズムはあるのか?」という質問を受けた。spironolactoneはaldosteroneの阻害薬で、 aldosteroneによる遠位尿細管でのK排泄を阻害するのが高K血症をきたす主な理由だ。それで、腎機能がない人には元から遠位尿細管でのK排泄がほとんどないわけだから高K血症にはなるまいというわけだ。
実際に透析患者さんにspironolactoneを投与するとどうなるの?と調べた論文もあって、一本は高K血症になり(NDT 2003 18 2364)、もう一本は有意差が見られなかった(NDT 2003 18 2359)。だから何とも言えないが、後者はopen-label, non-randomized trialでエビデンスの質が低いし、今のところ(高K血症は)起こるという結論にしておこう。
[2020年4月13日追記]スピロノラクトンを含むミネラルコルチコイド受容体阻害薬(mineralocorticoid receptor antagonist, MRA)により、末期腎不全患者の心血管系死を予防しようという期待が高まっている(CJASN2020年4月号の総説、doi:10.2215/CJN.13221019)。
末期腎不全患者は体液貯留傾向によりアルドステロンの産生は抑制されそうにも思えるが、実際には亢進していることが多い。そして、アルドステロン血症が高い血液透析患者ほど心血管死・総死亡リスクが高いことが示されている(Eur Heart J 2013 34 578、ただしHost Hoc)。
では、MRAを使用した試験の成績はどうか?
結論は・・・よいかもしれない(大規模RCTの結果待ち)。
効果のあったスタディ例は、日本の血液透析患者309人を対象にスピロノラクトン25mg/d追加群を(プラセボ対称のない)非追加群と比較したオープン・レーベル試験(J Am Coll Cardiol 2014 63 528)。3年間のフォローで心血管死と入院を62%低下した。
また2016年には、中国の血液透析患者と腹膜透析患者あわせて253人を対象にスピロノラクトン25mg/d追加群をプラセボ群と比較した試験がでて(J Clin Hypertens Greenwich 2016 18 121)、2年間で心血管死・心停止が58%低下した。
一方、2019年にでた米国のSPin-Dスタディ(KI 2019 95 973)、ドイツのMiREnDaスタディ(KI 2019 95 983)は、いずれも血液透析患者を対象にスピロノラクトン追加群(前者は12.5mg・25mg・50mg/d、後者は50mg/d)とプラセボ群を比較したが、プライマリ・エンドポイント(前者は心拡張能、後者は左室重量インデックス)に有意差がなかった。
もっとも、両者は短期間のフォロー(前者は36週後、後者は40週後)であり、安全性を確認するパイロット・スタディの感もある。なおその意味では、前者は高カリウム血症に有意差なく(ただしスピロノラクトン50mg/d群では上昇)、後者も6.5mEq/l以上の高カリウム血症に有意差はなかった(ただし6-6.5mEq/lは介入群で有意に高い)。
これらをうけて現在、2つの大規模RCTが進行中だ。ひとつはALCHEMISTスタディ(NCT01848639)、825人の血液透析患者を対象に2024年完了予定。もうひとつはACHIEVEスタディ(NCT03020303)、2750人の血液・腹膜透析患者を対象に2023年完了予定という。
ブレイクスルーが期待される腎臓内科領域であるが、やはりコストパフォーマンスがよいのは、既存の薬を転用・適応拡大することだ。今後、MRA使用が腎臓内科領域で広がっていくかどうか、注目したい。ただその暁には、新規カリウム吸着薬の使用もぐんと増えるだろうが・・(こちらも参照)。
自分の経験と記憶を瞬時に振り返り、「ある(けどどんなメカニズムか忘れた)」と返答した。そのあと腎臓内科のスタッフに聞くと、やはり同じ返答だった。それで調べてみると、腸管からのK排泄が阻害されると考えられているらしい(Current Hypertension Reports 2004 6 327)。
実際に透析患者さんにspironolactoneを投与するとどうなるの?と調べた論文もあって、一本は高K血症になり(NDT 2003 18 2364)、もう一本は有意差が見られなかった(NDT 2003 18 2359)。だから何とも言えないが、後者はopen-label, non-randomized trialでエビデンスの質が低いし、今のところ(高K血症は)起こるという結論にしておこう。
[2020年4月13日追記]スピロノラクトンを含むミネラルコルチコイド受容体阻害薬(mineralocorticoid receptor antagonist, MRA)により、末期腎不全患者の心血管系死を予防しようという期待が高まっている(CJASN2020年4月号の総説、doi:10.2215/CJN.13221019)。
末期腎不全患者は体液貯留傾向によりアルドステロンの産生は抑制されそうにも思えるが、実際には亢進していることが多い。そして、アルドステロン血症が高い血液透析患者ほど心血管死・総死亡リスクが高いことが示されている(Eur Heart J 2013 34 578、ただしHost Hoc)。
では、MRAを使用した試験の成績はどうか?
結論は・・・よいかもしれない(大規模RCTの結果待ち)。
効果のあったスタディ例は、日本の血液透析患者309人を対象にスピロノラクトン25mg/d追加群を(プラセボ対称のない)非追加群と比較したオープン・レーベル試験(J Am Coll Cardiol 2014 63 528)。3年間のフォローで心血管死と入院を62%低下した。
また2016年には、中国の血液透析患者と腹膜透析患者あわせて253人を対象にスピロノラクトン25mg/d追加群をプラセボ群と比較した試験がでて(J Clin Hypertens Greenwich 2016 18 121)、2年間で心血管死・心停止が58%低下した。
一方、2019年にでた米国のSPin-Dスタディ(KI 2019 95 973)、ドイツのMiREnDaスタディ(KI 2019 95 983)は、いずれも血液透析患者を対象にスピロノラクトン追加群(前者は12.5mg・25mg・50mg/d、後者は50mg/d)とプラセボ群を比較したが、プライマリ・エンドポイント(前者は心拡張能、後者は左室重量インデックス)に有意差がなかった。
もっとも、両者は短期間のフォロー(前者は36週後、後者は40週後)であり、安全性を確認するパイロット・スタディの感もある。なおその意味では、前者は高カリウム血症に有意差なく(ただしスピロノラクトン50mg/d群では上昇)、後者も6.5mEq/l以上の高カリウム血症に有意差はなかった(ただし6-6.5mEq/lは介入群で有意に高い)。
これらをうけて現在、2つの大規模RCTが進行中だ。ひとつはALCHEMISTスタディ(NCT01848639)、825人の血液透析患者を対象に2024年完了予定。もうひとつはACHIEVEスタディ(NCT03020303)、2750人の血液・腹膜透析患者を対象に2023年完了予定という。
ブレイクスルーが期待される腎臓内科領域であるが、やはりコストパフォーマンスがよいのは、既存の薬を転用・適応拡大することだ。今後、MRA使用が腎臓内科領域で広がっていくかどうか、注目したい。ただその暁には、新規カリウム吸着薬の使用もぐんと増えるだろうが・・(こちらも参照)。
5-oxoprolineふたたび
2年前に触れた論文(CJASN 2006 1 441)を、また読み返す機会があった。これはacetaminophenによって5-oxoprolineが蓄積してアニオンギャップアシドーシスをきたした症例をまとめたものだ。前の病院でレジデンシーをしていたときに尊敬するMICUのフェローが教えてくれて読んだが、当時は何のことやらよくわからなかった。いまは少し分かる。
アセタミノフェン(タイレノールのこと)は含硫アミノ酸(システインなど)を枯渇させ、cysteine-glycineが細胞内に少なくなり、それによりdipeptidaseによって出来るはずのglycineも少なくなる。Glycineが少なくなるとglutathione synthaseによって出来るはずのglutathioneが少なくなり、それによりγ-glutamyl-cysteine synthaseの活性阻害が起こらなくなる。
γ-glutamyl-cysteine synthaseが阻害されないので、この酵素活性によりγ-glutamyl-cysteineがたくさんできる。増えたγ-glutamyl-cysteineはγ-glutamyl-cyclotransferaseにより分解され、こうしてできる代謝産物が5-oxoprolineというわけだ。私は大学時代に生化学でglutathioneの代謝経路についてあまりよく勉強した記憶がない。酸化還元反応に関わる大事な経路なのに。
臨床的に知っておくべきことは、報告例がほぼすべて女性ということだ。酵素活性に性差があるのかもしれない。またmalnutrition、肝障害(いずれもglutathioneが減る状態)を合併していることが多い。腎機能が悪化した人も、尿中から5-oxoprolineを排泄できないのでリスクが高い。治療法については、アセタミノフェンの服用を中止する他にはあまり書かれていない。
なお今まで書いてきたのは後天性の5-oxoproline蓄積症だが、先天的な酵素欠損(glutathione synthase、それに5-oxoprolinase)によってなる場合もある。ただしこれらはautosomal recessiveで、homozygoteな人達がかかり、heterozygoteな人達は無症状だ。スタッフは「後天性と思われている人達はheterozygoteで、それにアセタミノフェンによる更なるglutathioneの枯渇が加わって発症するのだ」と言っていたが、そうだろうか。
アセタミノフェン(タイレノールのこと)は含硫アミノ酸(システインなど)を枯渇させ、cysteine-glycineが細胞内に少なくなり、それによりdipeptidaseによって出来るはずのglycineも少なくなる。Glycineが少なくなるとglutathione synthaseによって出来るはずのglutathioneが少なくなり、それによりγ-glutamyl-cysteine synthaseの活性阻害が起こらなくなる。
γ-glutamyl-cysteine synthaseが阻害されないので、この酵素活性によりγ-glutamyl-cysteineがたくさんできる。増えたγ-glutamyl-cysteineはγ-glutamyl-cyclotransferaseにより分解され、こうしてできる代謝産物が5-oxoprolineというわけだ。私は大学時代に生化学でglutathioneの代謝経路についてあまりよく勉強した記憶がない。酸化還元反応に関わる大事な経路なのに。
臨床的に知っておくべきことは、報告例がほぼすべて女性ということだ。酵素活性に性差があるのかもしれない。またmalnutrition、肝障害(いずれもglutathioneが減る状態)を合併していることが多い。腎機能が悪化した人も、尿中から5-oxoprolineを排泄できないのでリスクが高い。治療法については、アセタミノフェンの服用を中止する他にはあまり書かれていない。
なお今まで書いてきたのは後天性の5-oxoproline蓄積症だが、先天的な酵素欠損(glutathione synthase、それに5-oxoprolinase)によってなる場合もある。ただしこれらはautosomal recessiveで、homozygoteな人達がかかり、heterozygoteな人達は無症状だ。スタッフは「後天性と思われている人達はheterozygoteで、それにアセタミノフェンによる更なるglutathioneの枯渇が加わって発症するのだ」と言っていたが、そうだろうか。
CRRT dosing
CRRT(持続透析)のdosingについての論文は知りながら、自分がいったいどれくらいの透析をしているのかも考えず、いつも同じオーダーを出していたことに気付いた。CRRTのdosingはeffluent、すなわちdialysate(透析液)、replacement fluid(filtration用の輔液)、それにvolume removal(除水量)で計り、体重で補正したml/kg/hrで表す。
今使っているPrismaはCVVHDFで、hemodialysisもhemofiltrationも行うが、私はいつもdialysateを2000ml/hr、replacement fluidを1000ml/hrにしていた。これだけで体重70kgの人には3000/70 = 約40ml/kg/hr、除水量が3000ml/dayなら、さらに3000/24/70 = 約2ml/kg/hr、トータルで約42ml/kg/hrのCRRTをprescribeしているわけだ。
CRRT dosingについて初期にでたイタリアの論文(Lancet 2000 355 26)は25ml/kg/hrの群が35ml/kg/hr、45ml/kg/hrの群に比べて生命予後(30-day mortality)が悪いという結果だった。それからいくつもの大規模スタディ(NEJM 2009 361 1627など)が出たが、多くはdoseの違いによる有意差はないという結果だった。
私の考察は「ICUの患者さんは多くの場合に多臓器不全の一環として急性腎不全になるのであり、腎機能をどれだけ沢山replaceしたところで患者さんがより助かる訳ではない、寧ろ患者さんが助かるかどうかは他の臓器・あるいは敗血症など元々の病気プロセスがどうなるか次第だ」というものだ。
これは「CRRTをするからには、全ての数字(電解質、酸塩基平衡、老廃物濃度など)を正常にもどすことが私たちの仕事だ」という考えと相克する。しかし論文を読んでから私は、「CRRTはとてもお金のかかる治療だし、検査値を正常に戻すために(文字通り)湯水のように透析液やreplacement fluidを使っても患者さんが助からないならやめよう」と思った。
しかしなぜCRRTではdoseをeffluentなぞで表すのであろうか。それはほとんどのCRRTがCVVHDFでhemodialysisとhemofiltrationを同時に行うのでclearanceを計算するのが煩雑なことと、マシンの都合上effluentが計算しやすい(透析液、replacement fluid、除水量がすべてひとつのバッグに溜まる仕組み)からだろう。
それで「effluent doseとclearanceは本当に相関しているの?」という疑問を持って調べた論文がある(NDT 2012 27 952)。例えばICUで患者さんは24時間ずっとCRRTにつながれているわけではなく、フィルターが血栓で詰まったとか、やれCTだ手術だと病棟を離れる間などの場合にはCRRTから外れている。またpre-filter replacementによるhemofiltrationでは、血液が希釈されて老廃物の濃度が下がり、それによる除去効率が下がる。
それで調べてみると、35ml/kg/hrと思っていた場合にも実際は(故障、患者さんがICUにいないなどの理由で)28ml/kg/hr程度、pre-filter replacementによる希釈分も考慮すると25ml/kg/hr程度、そして計算によって求めた実際のclearanceは21-23ml/kg/hr程度であった。といっても20ml/kg/hrと思ってオーダーした患者さんに比べると有意に高いclearanceであったから、いままでの大規模スタディの結果を覆すものではないが。
今使っているPrismaはCVVHDFで、hemodialysisもhemofiltrationも行うが、私はいつもdialysateを2000ml/hr、replacement fluidを1000ml/hrにしていた。これだけで体重70kgの人には3000/70 = 約40ml/kg/hr、除水量が3000ml/dayなら、さらに3000/24/70 = 約2ml/kg/hr、トータルで約42ml/kg/hrのCRRTをprescribeしているわけだ。
CRRT dosingについて初期にでたイタリアの論文(Lancet 2000 355 26)は25ml/kg/hrの群が35ml/kg/hr、45ml/kg/hrの群に比べて生命予後(30-day mortality)が悪いという結果だった。それからいくつもの大規模スタディ(NEJM 2009 361 1627など)が出たが、多くはdoseの違いによる有意差はないという結果だった。
私の考察は「ICUの患者さんは多くの場合に多臓器不全の一環として急性腎不全になるのであり、腎機能をどれだけ沢山replaceしたところで患者さんがより助かる訳ではない、寧ろ患者さんが助かるかどうかは他の臓器・あるいは敗血症など元々の病気プロセスがどうなるか次第だ」というものだ。
これは「CRRTをするからには、全ての数字(電解質、酸塩基平衡、老廃物濃度など)を正常にもどすことが私たちの仕事だ」という考えと相克する。しかし論文を読んでから私は、「CRRTはとてもお金のかかる治療だし、検査値を正常に戻すために(文字通り)湯水のように透析液やreplacement fluidを使っても患者さんが助からないならやめよう」と思った。
しかしなぜCRRTではdoseをeffluentなぞで表すのであろうか。それはほとんどのCRRTがCVVHDFでhemodialysisとhemofiltrationを同時に行うのでclearanceを計算するのが煩雑なことと、マシンの都合上effluentが計算しやすい(透析液、replacement fluid、除水量がすべてひとつのバッグに溜まる仕組み)からだろう。
それで「effluent doseとclearanceは本当に相関しているの?」という疑問を持って調べた論文がある(NDT 2012 27 952)。例えばICUで患者さんは24時間ずっとCRRTにつながれているわけではなく、フィルターが血栓で詰まったとか、やれCTだ手術だと病棟を離れる間などの場合にはCRRTから外れている。またpre-filter replacementによるhemofiltrationでは、血液が希釈されて老廃物の濃度が下がり、それによる除去効率が下がる。
それで調べてみると、35ml/kg/hrと思っていた場合にも実際は(故障、患者さんがICUにいないなどの理由で)28ml/kg/hr程度、pre-filter replacementによる希釈分も考慮すると25ml/kg/hr程度、そして計算によって求めた実際のclearanceは21-23ml/kg/hr程度であった。といっても20ml/kg/hrと思ってオーダーした患者さんに比べると有意に高いclearanceであったから、いままでの大規模スタディの結果を覆すものではないが。
2012/04/26
Detective Nephron
ASN(米国腎臓学会)月刊紙、ASN Kidney Newsで最近始まったコーナーが"Detective Nephron"だ。名探偵ネフロンが弟子のL. O. Henle(loop of Henleを文字っている)が持ってくる症例を鮮やかに解き明かす筋書きだ。ネフロンはオフィスでコーヒーを飲んでおり、ヘンレの話を"Ah! This is going to be exciting."とか"Fascinating!"とか言いながら聞く。
ヘンレも腎臓内科の基本は知っているので一生懸命考え、ネフロンに"Good work, my apprentice(弟子)"とか言われるが、ネフロンの豊富な知識と経験によって症例の解答が明らかになる。最後の"Never underestimate the power of the nephrologist."というセリフがカッコいい。
私はこんな風になりたいのである。次々ともってくる症例を聴いただけでたちまち解決してしまうような。そして、わたしはフェローシップが終わるまでにそうなるつもりでいたのだと、約20年スタッフをしている今のスタッフと一緒に働きながらふと気付いた。
毎日よく観察し、よく考え、よく読み、自分の診断能力を高めていくのは素晴らしいことだ。このwebsiteの蓄積も私の財産となるだろう、こうして引き続き爪を研げ。だが1-2年で完成しようなどとは思わない方がいい。Art is long, life is short。探偵ネフロンを目指すなら、あせらないことも肝心だ。
ヘンレも腎臓内科の基本は知っているので一生懸命考え、ネフロンに"Good work, my apprentice(弟子)"とか言われるが、ネフロンの豊富な知識と経験によって症例の解答が明らかになる。最後の"Never underestimate the power of the nephrologist."というセリフがカッコいい。
私はこんな風になりたいのである。次々ともってくる症例を聴いただけでたちまち解決してしまうような。そして、わたしはフェローシップが終わるまでにそうなるつもりでいたのだと、約20年スタッフをしている今のスタッフと一緒に働きながらふと気付いた。
毎日よく観察し、よく考え、よく読み、自分の診断能力を高めていくのは素晴らしいことだ。このwebsiteの蓄積も私の財産となるだろう、こうして引き続き爪を研げ。だが1-2年で完成しようなどとは思わない方がいい。Art is long, life is short。探偵ネフロンを目指すなら、あせらないことも肝心だ。
ところ変われば
AIN(急性間質性腎炎)の治療といえばoffending agentを止めることと、ステロイドだ。うちの病院でも、ステロイドを信じるスタッフと信じないスタッフがいるが、信じるスタッフはたいていprednisoneを用いる。以前紹介したmini-study(Am J Med 65 756 1978)がprednisoneを用いている。AINはとても臨床でとてもよく遭遇するのでステロイドも当然議論になるが、今月のスタッフは別の論文を持ち出した(KI 2008 73 940)。
これはスペインのretrospective studyで、質は低いが曲がりなりにもステロイド投与群で腎機能がより回復した(mean follow-up 18 months)ことを示した。さらにステロイド投与群のうち腎機能が完全に回復した群は完全には回復しなかった群に比べてステロイドの投与が早期であったことが分かった(drug withdrawalからmeanで13日 v. 34日)。
興味深いのはこの論文ではほとんどの症例でステロイドにmethylprednisolone IV (250-500mg daily x 3-4 days)、そのうえでprednisone(1mg/kg/d、8-12週間で漸減)が用いられたことだ。別のヨーロッパの論文でも同様にmethylprednisolone IVが用いられている(NDT 2004 19 2778)。ヨーロッパではmethylprednisolone IVなのだろうか。はたして日本ではどうなのだろう。
これはスペインのretrospective studyで、質は低いが曲がりなりにもステロイド投与群で腎機能がより回復した(mean follow-up 18 months)ことを示した。さらにステロイド投与群のうち腎機能が完全に回復した群は完全には回復しなかった群に比べてステロイドの投与が早期であったことが分かった(drug withdrawalからmeanで13日 v. 34日)。
興味深いのはこの論文ではほとんどの症例でステロイドにmethylprednisolone IV (250-500mg daily x 3-4 days)、そのうえでprednisone(1mg/kg/d、8-12週間で漸減)が用いられたことだ。別のヨーロッパの論文でも同様にmethylprednisolone IVが用いられている(NDT 2004 19 2778)。ヨーロッパではmethylprednisolone IVなのだろうか。はたして日本ではどうなのだろう。
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