2013/11/08

Mgのいろいろ

 Mgのお話はEGFのところで止まっていたが、他にもCNNM2とかHNF1βとかZXYD2とか色々ある。全部書くのは大変だから、今回勉強になった中で二つ紹介する。一つは遠位集合管にあるMgの再吸収チャネルTRPM6がインスリンにより活性化されること(PNAS 2012 109 11324)。インスリンが間質側のインスリン受容体に結合することで細胞内のCDK5を活性化してTRPM6をリン酸化することで、TRPM6を含む小胞を移動させTRMP6を内腔側に表出させるのだという。

 もう一つは、MgはTRPM6だけでなくparacecullarにも再吸収され、それにはClaudin 16や19などが関わっていることだ。タイトジャンクションがイオンチャネルの役目をしているなんて知らなかった。聴けば、タイトジャンクションといっても壁ではなく、フェンスとでも言おうか、イオンくらいは通れるのだそうだ(Curr Opin Nephrol Hypertens 2010 19 456)。Mg2+、やはり奥が深くてこれからも目が離せない。

DKD

 AKI、CKDが提唱されて間がないのに、今度はDKD(diabetic kidney disease)だ。これは、実は糖尿病性腎症といってもetiologyが多彩なので、それらをひっくるめた概念として主にリサーチの便宜上から提唱されたと私は想像している。たしかに、教科書的な「過剰ろ過→微量アルブミン尿→顕性アルブミン尿→GFR低下」というモデルは、1型糖尿病で当てはまることがあるものの、そうでない病態も多い。腎生検したら別の病変がみられることもあるだろう。

 しかしそれで治療が変わることは余りないということで腎生検を控えることも多いわけだし、そういう人でも腎機能の進行・心血管系イベントなど予後は悪いだろうから、全部一緒にしようというわけだ。この定義だと、実は蛋白尿がなくeGFR低下のみというDKDも結構ある(JAMA 2011 305 2532のNHANES解析によれば、DKDの1/4~1/3)。もっとも、これが抗RAAS薬による蛋白尿の抑制+eGFRの低下なのか?などと言いはじめると話はややこしくなるが。

 どういう人がアルブミン尿のでるDKDで、どういう人がでないDKDなのか?演者の作った表によればおおまかに前者はCKDの進行が早く(CJASN 2012 7 78)心血管系リスクが高い一方、後者は男性や高齢者に多いという。こういった話があるからKDIGOもCKDをCGA(原因、GFR、アルブミン尿)二次元分類しているのだろうが、「アルブミン尿がないなら降圧剤は抗RAAS薬でなくてもよいの?」といった問いに答えるデータは少ないようだ。

2013/11/07

Geriatric Neprhology 24

 ここまで濃密な学びであったが、いままでずっと知りたかった内容だし、教育方法も工夫されていたのでついて来れた。そして、最後を締めくくるのがなんとdebateだった。お題は:

 75歳の患者さん、CKD-EPIのeGFR 50 ml/min/1.73m2、U-alb/U-Cr 25 mg/g。彼女はCKD3期ですか?

 事の発端は、CKDが導入されて生じた患者さんへの不安にある。上記患者さんのような人が米国だけで800万人いるだろうが、今後の腎機能低下の進行は最小限と思われるし、平均寿命にもほとんど影響はみられないと思われる。

 しかし、かかりつけ医が患者さんに「あなたはCKD(慢性腎臓病)3期です、腎臓内科を受診してください」というものだから「え!?腎臓が病気なの?しかも5期までの3期ってことは、あと少しで透析ってこと?」ととても心配してしまう。

 これについて賛成と反対それぞれの立場で主張があった(実際この議論はKDIGOガイドラインを決めるときにもexpert同士であったらしい)。賛成側は、以下の点を指摘した:

①加齢によるGFR低下だけにしては低めなわけだし(JCI 1950 29 496)、そういう状態として名前をつけるのは許されるのではないか
②たとえ進行しなくても、腎機能正常群に対して死亡率・心血管系イベント・ESRDのリスクは2倍程度上がる
③目に見えない腎機能低下とそのもたらす危険について啓蒙活動は必要
④腎機能低下を防ぐためにクスリを避けたり調節したりする注意を喚起できる

 などの点を指摘した。それに対して反対側は以下の点を指摘した:

①Oxford辞典の定義からいってもdiseaseではない
②患者さんに不要な不安を与える、不要な検査を強いることになる
③死亡率・心血管系イベント・ESRDのリスクは、年齢で層化するとごくわずかに下がる(JAMA 2012 308 2349)
④上記リスクは、GFRよりもアルブミン尿がより相関している

 それから測定方法についての話も少し出た。KDIGOにはクレアチニンベースのeGFRが信頼できなければCystatin CあるいはCystatin C + Crで確認せよとある。Cystatin Cは予後予測により有効だが、反対の立場の演者によればそれはeGFR以外の因子を反映しているからで、eGFRをより正確に測定するからではないのだという(JASN 2013 22 147)。

 両者の主張を聞いた後、rebuttalがあり(水掛け論になるのを防ごうのに、Can we move on?とより本質的な問題点を指摘したりこれからすべきことに話を移すのが自然な様子だった)、フロアからのコメントや質問があり、最終的にフロアの投票を行った(debate前と比較した)。結果はさておき、こんな試みは初めてでとても興奮した。


Geriatric Nephrology 23(aka Journal Club)

 腎臓関係の主要誌で「geriatric、elderly、kidney」と検索してみつかった、興味深いいくつかの論文について取り上げ批判的考察を加えるjournal clubまでしてくれるなんて、面倒見のいい学会だ。たくさんレビューしすぎて議論は駈足だったが、フロアから有益なコメントも多かった。

BMC Public Health 2012 12 343(ドイツ)
高齢者にCKDは多い、Cystatin Cでみるとすこし少ない

CJASN 2013 8 33(台湾)
高雄郡は、透析患者の有病率が世界で最も高いらしい
リスク因子の一つ、Long Dan Xie Gan Tangという漢方薬

CJASN 2013 8 939(韓国)
高齢者ではCKD-EPIのeGFR低下による死亡率hazard ratioが若年者より低い*
*数字は小さいが、absolute riskはもっと高いのではないか?

CJASN 2012 7 949(米国)
CKD患者にはECG異常が多く、大きな異常*だと死亡率のリスクが高い
*心室伝導遅延、Q+ST異常、LVH、Afib、1AVB

CJASN 2012 7 588(米国)
CKD-EPIのeGFR低下はインスリン抵抗性と相関していた
(個人的にはLancet 2012 380 601と関連して考えた)

KI 2012 82 482(イタリア)
死亡とESRD、どちらが先に来るか調べた
65歳+35ml/min/1.73m2が目安の点、詳しくは論文の図参照

AJKD 2010 56 122(米国)
AKI*は高齢者に多く、ESRDと死亡の因子
*ベースライン腎機能がしばしば不明なことに注意

KI 2012 82 920(台湾)
高齢者の術後AKI(ICU)は、Crがあまり上昇しなくても予後が悪い?

JASN 2013 24 1166(米国)
高齢HD患者の脳梗塞発症リスクは数ヶ月前に高くなり、透析月がピーク
以後数ヶ月で減るが12ヵ月後も以前より高く維持
Afibはリスク因子として有意でなかった
透析前後というのは不安定な時期だし、透析そのものとの因果関係は不明

JASN 2013 24 1297(米国)
高齢のESRD患者でAVF(内シャント)がベストでないかもしれない*
*USRDSデータの解析

CJASN 2012 7 1163(米国)
ECD(extended criteria donor)腎を移植された高齢者は生命・腎予後が不良だった
→そりゃそうだ

Geriatric Nephrology 22

 Active Medical Management(AMM)とは何か(演者によるレビューはSemin Dial 2012 25 617)?ESRDにたいして透析をせず、かといって緩和ケアでもなく、透析をしない代わりに内科治療をアグレッシブにすることだ。透析を受けた患者さんの2/3が後悔しているというデータもあるし(AJKD 2010 5 195)、治療選択肢をいろいろ説明することはとても重要なことだ。しかし、透析しない場合に看取り以外にAMMもあるとは正直知らなかった。

 ただ、聞いてみると頻回なフォローアップ、アグレッシブな貧血・MBDなどの治療、体液貯留を避ける、タンパク制限、精神・社会的なサポートという訳で、べつに目新しいことじゃない。ただ「日本の透析患者さんは透析を受けながらAMMも受けているのではないか?」という気づきはあった。それでHDとHD+AMMを比較したスタディがあるか演者に訊いたが、ないらしい。HDとAMMを比較したスタディはあるが(NDT 2007 22 1955)。

Geriatric Nephrology 20

 よく「英国には透析の年齢制限がある」というが、そんなことはないようだ。それはさておき、超高齢者であっても透析してからの生存期間には個人差がある。それを美しく示したのがDr. Kurella Tamuraのスタディだ(KI 2012 82 261)。末期腎不全の高齢者が治療選択するのをどのようにサポートするか、そのframeworkを作ろうというのが彼女のテーマの一つで、私はいつか彼女に日本に来てお話をしてほしいなと密かに願っている。
 それはさておき、高齢者の治療選択においては①個人の志向を尊重すること、②エビデンスの有無を調べること(除外されていることも多いから)、③達成したいアウトカムの質を吟味すること、④副作用・負担・煩雑さなどマイナス面も考慮すること、などの原則が提唱されている(JAMA 2005 294 716)。長期生存については、平均寿命や予後(血液透析患者における、おそらく欧米のデータを参照につくられた計算ツールもある)などが参考になる。
 たとえば、AVF(内シャント)とAVG(グラフト)とCVC(長期留置カテーテル)では、CVCで感染リスクが高いことは論を待たない。しかし、余命が2.5年の高齢者を見た場合に、菌血症のリスクはAVFで0.06件/人・年、CVCで0.1件/人・年で、NNTは17だ。ポイントは「高齢者の余命を考えると必ずしもfistula firstではないかもしれない」というように、治療選択には余命やco-morbiditiesを考慮する必要があるということだ。Vascular accessについては、つづく。
 

Geriatric Nephrology 21

 北アメリカでの高齢末期腎不全患者に対するvascular accessの議論は、「カテーテルじゃいけないの?」という質問に答えるためにあるようなものだ。内シャント手術をするのは大変だし、お金も掛かるし、作っても成長しないかもしれないし、せっかく成長しても「内シャントを作っても、腎臓病が悪化して透析が必要になる前に患者さんが亡くなる」というシナリオもある。65歳以上のESRD患者ではアクセスの種類によって死亡率が変わらなかったというスタディ(CJASN 2005 16 1449)もあるようだ。

 ただ、日本の透析患者さんの成績は欧米とぜんぜん違う(だから、不安を与えないよう余命計算モデルのリンクはここに載せていない)。それに、内シャントも日本は術後2-3週間で使うし、使用可否は腎臓内科で判断するし、血液速度もゆっくり(米国は350-400ml/minが普通)など、事情がぜんぜん違う。もっと言うと、お風呂文化とかも関係しているかもしれない(カテーテルだとお風呂に完全にはつかれないだろう)!

 こういう違いは、私も帰国してから気づいた。だから、日本にもUSRDSのようなレジストリがあるなら、いろいろデータを世界に発信したら色々お互いに変わるのではないかと思う。そして、いま私はこうして日本語で日本語を理解する人たちに発信しているが、今回学会で日本との米国の違いを話すたび「面白い」「どっかに書いて送るべきだ」と言われて、世界に日本のことを知らせるのも私の役目かもしれないと考えた。