ちょっと期待はしていたが、まさか本当に米国腎臓内科学会で3-4人のSGD(Small Group Discussion)、さらにロールプレイまですることになるとは思わなかった。こないだの日本腎臓内科学会東部会も新しい試みがたくさんあって楽しかったが、教育もどんどん進化していく。
SGDで自己紹介してみると欧州、南米、アジアなどさまざまな国から参加者がきており、うちとけてお話できて楽しかった。みんなの意見を聴くのも参考になったし、自分も話をした。来年は日本の学会でもこのようなSGDが取り入れられたら面白いだろうなと思った。
さて、ディスカッションでは透析導入をためらう症例について、SPIRES frameworkで考察した。SPIRESのSはSet-up。PはPerceptions and perspectives。IはInvitation、RはRecommendation、EはEmpathize、SはSummary。そしてどのようなopen-ended questionsを問いかけるか考えた。
さらにそれを踏まえてロールプレイをした。私は医師役だったが、患者さんのニーズや望みを聞き出すのに時間が掛かるのを実感した。まあ3分しかもらえなかったので仕方ないが、recommendationまでたどり着かなかった。それから、この手のマニュアルにいえることだが、意外と使いづらく、参考にして自分なりのアプローチを作るのだろうなと思った。
クマさんがおしっこしないで冬眠できるのも、じん臓が一日に体液の何十倍もろ過してから不要なものを残して再吸収するのも、じん臓の替わりをしてくれる治療があるのも、すごいことです。でも一番のキセキは、こうして腎臓内科をつうじてみなさまとお会いできたこと。その感謝の気持ちをもって、日々の学びを共有できればと思います。投稿・追記など、Xアカウント(@Kiseki_jinzo)でもアナウンスしています。
2013/11/07
Geriatric Nephrology 17
ICUせん妄が長期死亡率に相関する(JAMA 2004 291 1753)と聞いてもあまり驚かないかもしれないが、質問は「ICUが終わった後も引き続き鎮静薬などが不必要に続けられたことが関係しているのか」だ(J Am Geriatric Soc 2013 61 1128)。薬の副作用による入院はとても多く、その約半数は80歳以上だった(NEJM 2011 365 2002)。なお、高齢者で注意すべき薬をまとめたのにBeer Criteriaがある。
ICUせん妄のリスクは数多くあるが、腎機能低下はどうだろうか?スタディによれば相関する(Arch Int Med 2007 167 1629、OR 2.1)。鎮静薬などの排泄が低下するから、患者さんが透析中に寝ていたらまずクスリをチェックしたい。低・高Na血症も関係しているかもしれない、Na濃度変化と死亡率は以前に書いた。
ICUせん妄は一時のことだろうか?丁寧に長期フォロー(ICU入院前の認知機能を確かめたり、うつを除外したりして)したデータによれば、多くの患者さんはMCI(mild cognitive impairment)、TBI(traumatic brain injury)、Alzheimerレベルにまで低下していた(NEJM 2013 369 14)。
ICUせん妄のリスクは数多くあるが、腎機能低下はどうだろうか?スタディによれば相関する(Arch Int Med 2007 167 1629、OR 2.1)。鎮静薬などの排泄が低下するから、患者さんが透析中に寝ていたらまずクスリをチェックしたい。低・高Na血症も関係しているかもしれない、Na濃度変化と死亡率は以前に書いた。
ICUせん妄は一時のことだろうか?丁寧に長期フォロー(ICU入院前の認知機能を確かめたり、うつを除外したりして)したデータによれば、多くの患者さんはMCI(mild cognitive impairment)、TBI(traumatic brain injury)、Alzheimerレベルにまで低下していた(NEJM 2013 369 14)。
Geriatric Nephrology 18(aka RRT in the ICU)
ICU、入院中にRRTすべきかを議論するときの困難は枚挙に暇がない。患者さんの意識がないし、advanced directiveもないし、ICUチームが話をして腎臓内科が参加しないことも多いし、ICUチームに治療の一環と言われて彼らを助けるためにやるのは難しくないが、患者さんにとってベストの治療が何なのかを考えようと思ったら大変だ。
家族からいただく質問の一つは、患者さんのAKIが回復して透析導入しても党籍離脱できるか?というものだ。まず「患者さんが生きて病院から帰れるか分からない」というのが前提だが、壇上の演者に質問したらAKIの回復についてはいくつかのスタディがあり、高齢者ほど回復は厳しいらしい。ただそれも原因にもよるから、ケースバイケースだ。
家族からいただく質問の一つは、患者さんのAKIが回復して透析導入しても党籍離脱できるか?というものだ。まず「患者さんが生きて病院から帰れるか分からない」というのが前提だが、壇上の演者に質問したらAKIの回復についてはいくつかのスタディがあり、高齢者ほど回復は厳しいらしい。ただそれも原因にもよるから、ケースバイケースだ。
Geriatric nephrology 16
ドラマでICUというと、若い患者(主人公)が静かに寝ており、恋人が手を握ると静かに目を開けるシーンを想像するかもしれない。しかし、スタディによればICUの患者さんの60%以上は65歳以上だ(Crit Care Med 2006 34 1016)。そして、透析患者さんも多い(あるスタディでは3%、JASN 2009 20 2441)。透析患者さんは入院率が高く、入室時に非透析患者よりもsickerだ(CJASN 2011 6 613、カナダのデータ)。
AKI患者さんも、高齢者が多い。Dialysis-requiring AKIのデータ(JASN 2013 24 37)が衝撃的だった。そのメカニズムはいくつかある(JASN 2011 22 28によくレビューされている)が、加齢だけでなく薬剤(KI 2012 81 1172によくまとめられている)や慢性炎症や低栄養などさまざまだ。筋肉量低下によりCrが低く(eGFRが高く)見積もられ薬や輸液が過剰になったり、止められるべき薬が与えられてしまう事もあろう(CJASN 2013 8 1070)。腎臓内科の役目はこれらを防ぐことだが、残念ながらあとの祭りなこともある。
AKI患者さんも、高齢者が多い。Dialysis-requiring AKIのデータ(JASN 2013 24 37)が衝撃的だった。そのメカニズムはいくつかある(JASN 2011 22 28によくレビューされている)が、加齢だけでなく薬剤(KI 2012 81 1172によくまとめられている)や慢性炎症や低栄養などさまざまだ。筋肉量低下によりCrが低く(eGFRが高く)見積もられ薬や輸液が過剰になったり、止められるべき薬が与えられてしまう事もあろう(CJASN 2013 8 1070)。腎臓内科の役目はこれらを防ぐことだが、残念ながらあとの祭りなこともある。
2013/11/06
Geriatric Nephrology 15
以前に別の学会で学んだときの演者で声がエレガントで印象的だった方が、ふたたび今回も(やはりエレガントな声で)お話された。彼女は当時、「リハビリ集中治療」によって機能障害を回復させて自宅に帰すという診療を紹介していた。今回も、透析患者のphysical decline and frailtyについてお話していた。
腎機能低下と身体機能低下は相関し(Arch Int Med 2009 169 2116)、透析後にとくに著明に低下する(NEJM 2009 361 1539)。その理由として入院による不動、低栄養、体液貯留などあろうが、透析回診すればすぐにも分かるのは「透析治療によるもの(疲労、痛み、喪失感)」だろう。
転倒は、転倒による身体障害も心配だが、転ぶのではないかという恐れや不安も見逃せない。そして、よく調べられているように死亡率に相関している(血液透析患者では、NDT 2008 23 1396)。そういえばこのあいだAJKDにESRD患者における大腿骨頚部骨折リスクをみたスタディがあった(AJKD 2013 62 747)、そしてそこでもfrailtyが考察されていた。
Frailty、何と訳してよいかわらないが、Fried definitionによれば以下の三つ以上がある状態を言う:①体重減少、②疲労、③筋力低下、④歩行速度の低下、⑤活動性の低下。患者さん自身は気づいていないこともある。Frailtyがあると、死亡率とか転倒とかいろいろよくない。いろんな程度があって、CSHA Clinical Frailty Scaleというスケールがある。
どうしたらいいか?①予防、②治せるなら治す、③あるものでそれなりにやる。①②も大事だが、③のリハビリ的な考えが私は好きだ。立って料理できない人に椅子をあげるような考え方だ。帰ったらリハビリの皆さんとよりよいケアについてお話したい。
腎機能低下と身体機能低下は相関し(Arch Int Med 2009 169 2116)、透析後にとくに著明に低下する(NEJM 2009 361 1539)。その理由として入院による不動、低栄養、体液貯留などあろうが、透析回診すればすぐにも分かるのは「透析治療によるもの(疲労、痛み、喪失感)」だろう。
転倒は、転倒による身体障害も心配だが、転ぶのではないかという恐れや不安も見逃せない。そして、よく調べられているように死亡率に相関している(血液透析患者では、NDT 2008 23 1396)。そういえばこのあいだAJKDにESRD患者における大腿骨頚部骨折リスクをみたスタディがあった(AJKD 2013 62 747)、そしてそこでもfrailtyが考察されていた。
Frailty、何と訳してよいかわらないが、Fried definitionによれば以下の三つ以上がある状態を言う:①体重減少、②疲労、③筋力低下、④歩行速度の低下、⑤活動性の低下。患者さん自身は気づいていないこともある。Frailtyがあると、死亡率とか転倒とかいろいろよくない。いろんな程度があって、CSHA Clinical Frailty Scaleというスケールがある。
どうしたらいいか?①予防、②治せるなら治す、③あるものでそれなりにやる。①②も大事だが、③のリハビリ的な考えが私は好きだ。立って料理できない人に椅子をあげるような考え方だ。帰ったらリハビリの皆さんとよりよいケアについてお話したい。
Geriatric Nephrology 14
重要なことを繰り返し説明するのは常識だ。だから二日目も繰り返し大事なことが繰り返された。高齢化は移民を受け入れる米国でさえ進んでいる。Medicareが始まった頃の平均寿命は60歳台だった。いま、いろんなことのおかげで長生きでき(男性76歳、女性80歳)、退職後の生活も変わった。
米国にCKD患者はどれだけいるのか?3期が760万人、4期が40万人、5期が30万人(AJKD 2003 41 1)。ESRDは高齢者の病気、80歳人口の2000人/100万人(1/5000)がESRD患者だ。だから腎臓内科医は高齢者のケアを知らなければらならない。認知、目や耳、心、セルフケアなど。
だから、geriatric assessment(GA)が有用かもしれない。医療と直接関係しないところも多いし、全部医師が一人でやる必要はない。GAは長生きを目標にしているのではなく、元気でおり、機能を維持し、できるだけ在宅できることを目標にしている。
認知低下のことは以前に書いたが、多くは血管性と考えられ、GFR低下に相関しているからスクリーニングしなければならない。米国にはMMSE、日本には長谷川式があるが、ここではMOCA(Montreal Cognitive Assessment)が紹介されていた、作業能力を問うらしい。うつも大事。
セルフケア、何が出来ますか?予約、移動、薬、食事、など。これらを含めたKEL(Kohlman Evaluation of Living Skills)というスクリーニングがあり、OT療法士さんにお願いするとスコアが返ってくる。スコアが6より多いと自宅で独立して暮らすことは難しいそうだ。転ばないには?透析室に歩いてくるかどうかを見るのもよいし、Timed-up-and-goという簡単なテストもある。
透析医はかかりつけ医か?米国でもそうらしい(ASAIO J 1992 38 M279)、もっとも週三回診察することはないが。そして、主治医であるからこそACP(Advanced Care Planning)を始めなければならない。ESRD患者の死亡率は一般の6倍だ。困難な会話でも、後悔しないように、患者と家族に話しかけなければならない。
米国にCKD患者はどれだけいるのか?3期が760万人、4期が40万人、5期が30万人(AJKD 2003 41 1)。ESRDは高齢者の病気、80歳人口の2000人/100万人(1/5000)がESRD患者だ。だから腎臓内科医は高齢者のケアを知らなければらならない。認知、目や耳、心、セルフケアなど。
だから、geriatric assessment(GA)が有用かもしれない。医療と直接関係しないところも多いし、全部医師が一人でやる必要はない。GAは長生きを目標にしているのではなく、元気でおり、機能を維持し、できるだけ在宅できることを目標にしている。
認知低下のことは以前に書いたが、多くは血管性と考えられ、GFR低下に相関しているからスクリーニングしなければならない。米国にはMMSE、日本には長谷川式があるが、ここではMOCA(Montreal Cognitive Assessment)が紹介されていた、作業能力を問うらしい。うつも大事。
セルフケア、何が出来ますか?予約、移動、薬、食事、など。これらを含めたKEL(Kohlman Evaluation of Living Skills)というスクリーニングがあり、OT療法士さんにお願いするとスコアが返ってくる。スコアが6より多いと自宅で独立して暮らすことは難しいそうだ。転ばないには?透析室に歩いてくるかどうかを見るのもよいし、Timed-up-and-goという簡単なテストもある。
透析医はかかりつけ医か?米国でもそうらしい(ASAIO J 1992 38 M279)、もっとも週三回診察することはないが。そして、主治医であるからこそACP(Advanced Care Planning)を始めなければならない。ESRD患者の死亡率は一般の6倍だ。困難な会話でも、後悔しないように、患者と家族に話しかけなければならない。
Geriatric Nephrology 13
私がフェローのとき、今は亡き恩師が患者さんの家族に「全ての患者さんが透析を受けなければならないというわけではない」と説明していた。透析をしないという選択肢もあるのだということを端的に、かつ色をつけずに示すやり方だなと、横で感心した覚えがある。では、透析をしない・やめるというのはどういうことなのか(もっともこの二つは状況が大きくことなるので一括りにできないのだが)。
ここでは透析をやめるということについて。じつは透析をやめるというのに、はっきりした定義がない。だから研究しようにもそこから始めなければならない。医学的な理由でできなくなったのか、ご本人の意向でしないのか、必要なくなったのか、必要になってもしないという方針で(もちろん変わってもいいわけだが)やめたのか。
透析をやめてどれくらい生きられるのか?数多くのスタディがあるそうだが(NEJM 1986 314 14、NDT 1996 11 133、AJKD 1998 31 464、Arch Int Med 2000 160 2513、NDT 2004 19 686)、だいたい8日間だそうだ。短い場合も長い場合もあり、残腎機能によるのだろう。
透析をやめるケースはどれくらいあるのか?USRDSは死因の報告を義務付けているのでデータがあるが、約20%。英国のRenal Registryによれば、14-15%だった(ただしこちらのレジストリは死因報告の義務がない)。
いずれにせよ、これだけでは数字なので詳しいことが分からない。しかし今日いろいろ聴いて分かったのは、透析は始めるよりも始めない・そしてやめるほうがずっと難しいということだ。やめたほうがいいとかそういうことではないが、医療側が「しない」という選択肢を提示しないことによる苦痛もあるわけだから、透析に関わる者として説明できるようになるべきだと思っている。
ここでは透析をやめるということについて。じつは透析をやめるというのに、はっきりした定義がない。だから研究しようにもそこから始めなければならない。医学的な理由でできなくなったのか、ご本人の意向でしないのか、必要なくなったのか、必要になってもしないという方針で(もちろん変わってもいいわけだが)やめたのか。
透析をやめてどれくらい生きられるのか?数多くのスタディがあるそうだが(NEJM 1986 314 14、NDT 1996 11 133、AJKD 1998 31 464、Arch Int Med 2000 160 2513、NDT 2004 19 686)、だいたい8日間だそうだ。短い場合も長い場合もあり、残腎機能によるのだろう。
透析をやめるケースはどれくらいあるのか?USRDSは死因の報告を義務付けているのでデータがあるが、約20%。英国のRenal Registryによれば、14-15%だった(ただしこちらのレジストリは死因報告の義務がない)。
いずれにせよ、これだけでは数字なので詳しいことが分からない。しかし今日いろいろ聴いて分かったのは、透析は始めるよりも始めない・そしてやめるほうがずっと難しいということだ。やめたほうがいいとかそういうことではないが、医療側が「しない」という選択肢を提示しないことによる苦痛もあるわけだから、透析に関わる者として説明できるようになるべきだと思っている。
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