2019/10/07

人を指差す時は 2

 75歳男性。高血圧・高脂血症などの既往あり前医の診療を受けていたが、2ヶ月前から下肢に浮腫がみられた。前医で腎機能正常、尿蛋白・潜血なし、心電図・胸部X線に異常なし(低栄養・肝硬変・甲状腺機能低下症もみられず)。体重の増加はないが、症状持続するためフロセミド処方されるも、改善なし。精査加療目的に、腎臓内科を紹介受診。


Q:診断は?


 腎機能正常、蛋白尿・潜血尿もない(非アルブミン尿の除外はするにしても)となると、正直「腎臓じゃないと思いますけど・・」と言いたくなる。しかし、自分達も総合内科医だと思っている腎臓内科医(こちらも参照)が、よりによって浮腫の症例で総合診療科にスルーパスするわけにもいかない。

 じつは、ここまで浮腫の鑑別疾患が除外されていると、残りはそんなに多くない。主なものは、全身ないし局所の血管透過性亢進か、リンパ還流の障害だ。そう思って問診・診察・検査所見を見直すと、以下が分かった。


  • 浮腫は下腿だけでなく手指にもある
  • 以前から、手指の関節がつっぱって動かしにくい
  • 両手指PIP関節が左右対称に軽度発赤
  • 下腿には圧痕浮腫
  • CRP高値
  • リウマチ因子陰性


 ここまでくれば、RS3PE(Remitting Seronegative Symmetrical Synovitis with Pitting Edema)症候群を最も疑うだろう。しかし恥ずかしながら、筆者は以前にもこの疾患を診た(本ブログにもまとめた)にも関わらず、知識がアヤフヤで、自分で診断を確定する勇気がなかった。

 そこでリウマチ内科にご相談したところ、典型例だったのだろう、すぐさま診断を確定して治療を開始していただけて、とてもありがたかった。人を指差すときには、相手への敬意を忘れないようにしようと思った。

 

元は、Aretha Franklinの1967年ヒット曲、"RESPECT")