SNGFRを保ちながら少しずつネフロンが減って、全体のGFRが下がっていくのは、老化であって病気ではないということだろうか?CKDのヒート・マップが広まり始めた頃、「高齢者で、蛋白尿などもなく、eGFRだけでCKD3A期になった人を、CKDと呼ぶべきなのか?」という議論があった。SNGFRの概念は、この問題をより明確にしてくれるかもしれない。
また、上図で70-75歳のSNGFRが際だって高いのはエラーだというが、高齢者・後期高齢者のネフロン数、SNGFRがどのように推移するのかはまだ調べられていないのかもしれない。ネフロンエンダウメントというと子宮内・妊娠中のイベント、出生体重など出産前後の話が多いが、老年医学についても、剖検症例などから学べることがあるかもしれない。
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ここまで、ネフロン数、ネフロンエンダウメント、SNGFRなどについて基本的なことを概述してきた。今回の切り口に含まれなかった、出生前後にネフロン数をさげるイベント・機序・遺伝子などについて、また、ネフロンを増やす試み(再生医学が発達すれば自分のiPS細胞からつくったネフロンを移植することも可能になるかもしれない)などについて詳しく知りたい方は、成書など参照されたい。機会があれば触れられると思う。
ネフロンにも命(写真はカワセミ)にも限りがある。かけがえのない日々を大切に送りたいものだ。