報告では、大人では50-80%の頻度で生じ、子供では47-82%に生じるとされている。
特に高血圧のコントロールができないと心血管死亡率や移植腎生着率の低下につながる。
なので、しっかりと血圧コントロールを行うことは非常に重要である。
★血圧を上げるリスクファクター
・体重の増加
→移植後もしっかりと体重コントロールを継続することが重要である。
・腎動脈狭窄(TRAS :transplant renal artery stenosis)
→移植後どの時期に生じてもいいが、多くは移植後3ヶ月〜2年の間に生じる。生じる
リスクとしては、手術が困難の場合・強い動脈硬化・サイトメガロウイルス感染・
腎機能の回復が遅いものがある。
診断:血管造影、腎血管エコー、MRI検査やCT検査が用いられる。腎血管エコーでは
最大収縮速度≧2.5m/secが感度・特異度が非常に高く相関性がある。
治療:血管形成術や手術。血管形成術でバルーンを広げるだけで80%の狭窄例で成功
するが20%で再狭窄をきたす。ステントを置く症例は狭窄を繰り返す症例に
用いる。外科手術は成功率は60-90%程度であるが、再狭窄を10%に認める。
・拒絶(急性拒絶反応・抗体関連拒絶反応など)
→タンパク尿・血尿などの尿検査や腎機能なども含めしっかりとしたフォローをする。
・薬物(ステロイド、カルシニューリン阻害薬)
→ステロイド:通常は容量をすぐに落とすので慢性的な高血圧になるリスクとしては低
い。RCTでも5mgのステロイド維持量とステロイドなしの群で比較しても差が出なかっ
たという報告がある。
→カルシニューリン阻害薬:シクロスポリンとタクロリムスではシクロスポリンの方が
高血圧の合併症は高い。機序としてはRAA系の増加は一因である。シクロスポリンで
は全身の血管抵抗や腎血管抵抗の増大を生じさせることによって高血圧を生じる。ま
た、両薬剤ともNa再吸収を亢進させNa貯留を起こす。
AJKD 2011 |
腎移植直後は患者さんは体液過剰の状態にあり高血圧は、自然に利尿がついて体液過剰が改善すれば高血圧のコントロールもできてくる。
今回は、移植後の高血圧に関しての前半の部分に触れた。次は治療はどうするかを触れたい。