SNGFRは、理論上は輸入細動脈、輸出細動脈の圧(静水圧差ΔP、浸透圧πcap)や糸球体のろ過係数Kfなどでスターリンの法則に基づいて以下のように決められる。
SNGFR = Kf x (ΔP - πcap)
これはこれで、血圧が下がっても輸入細動脈を締める(ΔPをあげる)ことでGFRを維持する、など糸球体を一個取り出してその調節機能を研究するときには役立つ式だ。
しかし、あなたのネフロン何十万個それぞれのSNGFRがどんなかを一個一個測るのは今のところ現実には無理だ。そこで、GFRをネフロン数で割った平均のSNGFRが代用される。
SNGFR = GFR / ネフロン数
本稿の冒頭であげた問題提起にあるように、実際ネフロン数の小さい(と思われる、低出生体重の)動物モデルでは、SNGFRが高くなっているので全体のGFRはかわらない(Hypertens 2003 41 457など)。
しかし、このようにSNGFRを増やして代償した動物たちを観察すると、高血圧だったり、尿たんぱくが出ていたり、困ったことも起きていた。それで現在では、SNGFRが高くなる→腎臓の負担が増える→ネフロンがさらに(糸球体硬化などで)失われる→さらにSNGFRが高くなる、という悪循環が考えられている(図はBrenner9版22章より)。
あなたのネフロンを数えましょうの初回に紹介した論文(NEJM 2017 376 2349)も、その流れに符合するものだ。続く(写真はOfficially missing youを2012年にアレンジしてカバーした韓国のGeeksとSoyou)。