CKDクリニックで議論になるのが痛風のない高尿酸血症の取り扱いだ。治療するべきか、しないべきか。言い換えれば、高尿酸血症はCKDとのマーカーなのか、増悪因子なのか。これは学界でも議論され、ここ一年で同じようなレビューが二つ(doi: 10.1093/ndt/gft029、ACKD 2012 19 386)でた。今私達はこれについて何を知っているのだろうか?
Acute urate nephropathyという概念はあって、尿酸値が急激にとても高くなると(腎細動脈や間質の障害を介して)腎機能が悪くなる。動物実験でuricaseを阻害すると腎障害が起こるし、腫瘍崩壊症候群でも腎障害が起こるから多くの場合rasburicaseで尿酸を溶かして予防する(ヒトをはじめ霊長類にはなぜかuricaseがない)。
いくつもの観察スタディが高尿酸血症とCKDの相関を示しているが、高尿酸血症がCKDの増悪因子かはまだ分からない。治療したい人は、スペインの小さなスタディ(CJASN 2010 5 1388)をよく引用する。eGFRが60ml/min以下で安定した113人のCKD患者を対象にしたこのスタディでは、24ヶ月のfollow-upでallopurinol 100mg/d投与群のeGFR declineが少なく(1.3 v. 3.3)、心疾患イベントも少なかった。
ただし患者さんのmean 尿酸レベルは治療前で7.9mg/dlと軽度だったにも関わらずこの結果なので、尿酸を下げたせいなのかallopurinolによる独自の心・血管保護作用のせいなのか分からない。低用量のallopurinolには害があまりなさそうに思えるが、allopurinolによるStevens-Johnson syndromeは本当に起こるので、経験あるスタッフほどallopurinol投与に慎重だ。Febuxostatは尿酸レベルをよく下げるようだが、CKD進行や心血管疾患予防のデータがまだ余りない。
なお私のボスは、高尿酸血症のCKD患者さんがいると「あなたには痛風や尿酸結石のリスクがある。しかし痛み止めのなかでもibuprofenなどは腎臓に良くないから気をつけて。それからERで間違ってもketolorac静注などもらわないよう、受診時はドクターにCKDのことを説明して」と注意を呼びかけていた。