2013/07/04

やっぱカルシウムでしょ

 Milk-alkali syndromeは歴史があり(1915年にシカゴのBertram Welton Sippy医師が始めた胃潰瘍治療Sippy dietの副作用が最初)、病歴で臨床診断でき、病態生理が多臓器にわたる興味深い疾患だが、実は高カルシウム血症の原因として悪性腫瘍、副甲状腺機能亢進症に続き三番目に多いとは知らなかった(Clinical Endocrinology 2005 63 566)。これは透析患者さんを除外したランキングだ(透析患者さんはphosphate binders、activated vitamin D、透析液のHCO3-などにより高リスク群)。

 といっても、Sippy dietが復刻ブームになったわけではない。理由は一つにはカルシウム(とビタミンD)補充が盛んになったためである。ことにpost-menopausalや高齢の方ではカルシウムのnet fluxがout of boneなので、カルシウムを大量摂取しても骨がreservoirになりにくい。もう一つには、この病態生理が広まるにつれミルクとアルカリ以外の症例にも広く適応されるようになったからだ。

 たとえば妊娠中は、placental lactogenやprolactinなどの影響で腸管のカルシウム吸収が高まり、悪阻などvolume depletionでmetabolic alkalosisと尿中カルシウム排泄低下をきたすので、GERD症状にカルシウムを内服して高カルシウム血症になることがある(JGIM 2011 26 939)。Betel nuts chewing(檳榔子を石灰と混ぜキンマの葉で包んで噛む台湾以南の東南アジアとインド地域の嗜好品)による高カルシウム血症なんてのもある(Tzu Chi Med J 2005 17 265)。

 これらを総して、Milk-Alkaline syndromeをCalcium-Alkali syndromeと改称しようという人もいる(JASN 2010 21 1440、Proc Bayl Univ Med Cent 2013 26 179)。JASN articleのタイトルは"GOT Calcium? Welcome to the Calcium-Alkali Syndrome"で、これは米国牛乳普及キャンペーン"Got Milk?(日本で昔やってた「やっぱ牛乳でしょ」のような)"のパロディだ。