2013/07/11

皮膚と体液保持

 夏になれば汗をかく。発汗には体温調節の意味もあるが、その反面体液が失われているかもしれない。逆に言うと、汗を余りかかない人は体液貯留になりがちかもしれない。歴史を振り返れば、これを経験的に知った奴隷商人が航海を生き延びる奴隷を探すのに彼らの皮膚を舐めていた(塩気が強ければ体液喪失が多いと考えられた)という忌まわしい話もある。

 体液調節には腎臓だけでなく皮膚も関わっていることが徐々に明らかになっているが、先日JCIに新しい研究結果がでた(doi:10.1172/JCI60113)。皮膚の単球・マクロファージ・樹状細胞は塩負荷に対してTONEBP (tonicity-responsive enhancer-binding protein)を介してVEGFC発現を増やし、リンパ毛細管ネットワークを密にして塩を逃がす(受容体はVEGFR3)。

 この研究で興味深いのは、TONEBPノックアウトやVEGFR3を抗体でブロックした群に塩負荷すると皮膚間質のCl-濃度・量は増加したがNa+濃度・量は変化しなかったことだ。その意義は未だ不明だが、皮膚とCl-といえばCFTRもあることだし、今後の研究で「忘れられた電解質」などと言われることもあるCl-と体液保持の関係が明らかになるかもしれない。