腎臓内科外来には腎臓が悪いことで来院されるが全く症状のない人もいる。例えばこんな症例が忙しい外来の間にやってきたら、みなさんどう考えるだろうか。
52歳男性、既往歴は虫垂炎術後のみであり内服歴もなし。自覚症状はないが、10年ぶりに健診を受けたところ、BUN 34、Cr 2.3で紹介され来院した。採血上は血算、生化学検査異常なく、尿検査ではタンパク陰性、潜血陰性、沈渣も異常なし。腎臓の超音波でも血流正常、腎サイズも問題なし。
さてあなたはこの患者をどうするか?こんな患者さんに出会って「はて?」と思ったことはないだろうか。少々トリッキーな質問である。
少々雑ではあるがクリニカルクエスチョンとするならば、「尿検査正常だが腎機能のみ悪化している患者さんの原因は一体なんなのか?」だ。
最初は、改めて病歴を詳しく聞き、身体診察を入念に確認するだろう。場合によっては、検査の感度・特異度も考慮しながら再現性があるか再度確認するだろう。
中には尿検査の限界に思いをはせる方もいるかもしれない。尿試験紙の添付文書には、尿蛋白が偽陰性となる因子として尿pH<3や非Alb性蛋白尿があるとされている。同様に尿潜血が偽陰性となる因子としては大量のアスコルビン酸や高比重、高タンパク尿があるとされている。
ではいずれも問題なかったら?原因不明の慢性腎臓病であり腎生検をするのか?様子を見るのか?これは悩ましい問題かもしれない。
これまで悩んだことのある内科の先生いないのかな?そんなきっかけで調べてみて見つけたのが、少し古いがこれ(Clin Nephrol 2012 77 283)とこれ(Ren Fail 2006 28 389)。
1つ目の論文は、10年くらいの枠組みでCr≧2mg/dlの患者で尿検査異常がなかった症例512人の原因疾患を追求したもの。そこで出てきた原因としては、まずは当然ながら腎前性と腎後性を呈する疾患であった。次に腎硬化症、腎血管疾患や多発性骨髄腫、高Ca血症、低K血症性腎症、また腎細胞がんや間質性腎炎をなどが出てきたようである。
2つ目の論文は5年くらいかけて、腎機能異常があるが正常尿検査の患者15人を腎生検してみたというもの。なお、糖尿病、高血圧、慢性肝障害、悪性腫瘍、自己免疫疾患、薬剤、低K血症、年齢<18歳のいずれも除外されている患者である。
最も多かった診断は急性間質性腎炎で、引き続いて高血圧性腎硬化症であった。また慢性間質性腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎、急性尿細管性壊死、続発性アミロイドーシス、巣状糸球体硬化症とminor glomerular changeが続いた。年齢で分けると、<40歳では急性間質性腎炎、>40歳では腎硬化症が多かった。
たまに出会う疑問に関して文献的に考えると意外と色々深くて面白いことが多い。
クマさんがおしっこしないで冬眠できるのも、じん臓が一日に体液の何十倍もろ過してから不要なものを残して再吸収するのも、じん臓の替わりをしてくれる治療があるのも、すごいことです。でも一番のキセキは、こうして腎臓内科をつうじてみなさまとお会いできたこと。その感謝の気持ちをもって、日々の学びを共有できればと思います。投稿・追記など、Xアカウント(@Kiseki_jinzo)でもアナウンスしています。
2019/01/25
2019/01/10
PIVOTAL 後編
(前編のつづき)
ESA量は有意に減った(高用量でEPO29757単位/月、低用量で38805単位/月)。プライマリ・エンドポイントは心血管系の複合イベント(致死的でない心筋梗塞・致死的でない脳梗塞・心不全による入院・総死亡)で、数字としては図のように高用量のほうが低かった(低用量に対する優越性は有意差なく、非劣性のみ)。
高ESAと鉄過剰、どちらをとるかで地域ごとおおきく診療スタイルに差があるなか、英国なりにスタディを組んでこの結果になった。歯に物が挟まったような書き方だが、わが国でどうかという話には直接はならないということだ。
それはなぜか。「うちはうち、他所は他所」だからか。
そういうと身も蓋もないが、どう「うち」と「他所」が違うのかを、いくつかの観点から考えたい。
1. アクセス
前編でも触れたように、おどろくほどカテーテル透析だった。わが国の現況でもカテーテルが高齢者・女性を中心に増えてはいるが、いまだ数パーセントだ。カテーテル透析患者が細菌感染を起こしやすいことを考慮すると、鉄の易感染化は微生物学的に言われるほどではないのかもしれない(CRP 5mg/dL以上、まさに感染を起こしている、などの例は除外されているが)。
2. 腎代替療法
PIVOTALスタディは登録時に12ヶ月以内に生体腎移植を受ける予定の患者を除外している。さらに、フォローアップ中に移植を受けた患者も除外している。その数は、両群約2000人のうち、371人(約18%)だ。さらに在宅透析にうつったのが81人(4%)、腹膜透析にうつったのが30人(1.5%)。18%、サブスタンシャルな数字だ。
3. 心血管系イベント、死亡率
より健康で若い患者が移植された可能性は高い。2年間フォローして死亡が2000人中505人なんて、日本では考えられない。以前紹介したLANDMARKスタディ(Ca非含有のランタン酸をCa含有のリン吸着薬と比較したもの)でエンドポイントに有意差が出なかったのも、そもそも有害事象の発生率がきわめて低いからだと言われる。
こういうトピックは、学会などでディベート方式で議論(利益の相反も公開して)があったら、聞いて見たい。視聴者参加型だったら、参加もしてみたい(写真は、やはり鉄分摂取。地下鉄と小田急がいっしょになって箱根湯本に至るリゾート/通勤特急、メトロはこね)。
ESA量は有意に減った(高用量でEPO29757単位/月、低用量で38805単位/月)。プライマリ・エンドポイントは心血管系の複合イベント(致死的でない心筋梗塞・致死的でない脳梗塞・心不全による入院・総死亡)で、数字としては図のように高用量のほうが低かった(低用量に対する優越性は有意差なく、非劣性のみ)。
高ESAと鉄過剰、どちらをとるかで地域ごとおおきく診療スタイルに差があるなか、英国なりにスタディを組んでこの結果になった。歯に物が挟まったような書き方だが、わが国でどうかという話には直接はならないということだ。
それはなぜか。「うちはうち、他所は他所」だからか。
そういうと身も蓋もないが、どう「うち」と「他所」が違うのかを、いくつかの観点から考えたい。
1. アクセス
前編でも触れたように、おどろくほどカテーテル透析だった。わが国の現況でもカテーテルが高齢者・女性を中心に増えてはいるが、いまだ数パーセントだ。カテーテル透析患者が細菌感染を起こしやすいことを考慮すると、鉄の易感染化は微生物学的に言われるほどではないのかもしれない(CRP 5mg/dL以上、まさに感染を起こしている、などの例は除外されているが)。
2. 腎代替療法
PIVOTALスタディは登録時に12ヶ月以内に生体腎移植を受ける予定の患者を除外している。さらに、フォローアップ中に移植を受けた患者も除外している。その数は、両群約2000人のうち、371人(約18%)だ。さらに在宅透析にうつったのが81人(4%)、腹膜透析にうつったのが30人(1.5%)。18%、サブスタンシャルな数字だ。
3. 心血管系イベント、死亡率
より健康で若い患者が移植された可能性は高い。2年間フォローして死亡が2000人中505人なんて、日本では考えられない。以前紹介したLANDMARKスタディ(Ca非含有のランタン酸をCa含有のリン吸着薬と比較したもの)でエンドポイントに有意差が出なかったのも、そもそも有害事象の発生率がきわめて低いからだと言われる。
しかし、有害事象の発生率が高いコホートのPIVOTALでも低いコホートのLANDMARKでも、結局差が出なかった。それじゃあ、「Caはダメ!」「鉄はダメ!」などといっても「ほんとかな?」ということになってしまうかもしれない。まあ、歯磨きのようにエビデンス云々を越えた常識的な知識や治療というのはあるわけだが。
こういうトピックは、学会などでディベート方式で議論(利益の相反も公開して)があったら、聞いて見たい。視聴者参加型だったら、参加もしてみたい(写真は、やはり鉄分摂取。地下鉄と小田急がいっしょになって箱根湯本に至るリゾート/通勤特急、メトロはこね)。
2018/12/31
お疲れ様でした
さてきょうは大晦日で、仕事納めがない人も自動的に仕事納め(明日は仕事始め)になる。それで、腎臓内科の身内を勇気づけるこんな論文(JAMA Netw Open 2018 1 e184852)で2018年を締めくくろうと思う。
「腎臓内科外来は、すべての専門内科のなかで最も大変!」という論文だ。
これはカナダ・アルバータ州の外来患者データを科ごとに解析し、併存疾患数・精神疾患・処方・救急搬送・入院・入施設・死亡など9つの観点(さらに、社会経済的な面も加味)から複雑さの度合いを出して比べたものだ。
それによれば、科ごとの複雑さは次のような順番になった。
1. 腎臓内科
2. 感染症科
3. 神経内科
4. 呼吸器内科
5. 血液内科
6. リウマチ内科
7. 消化器内科
8. 循環器内科
9. 総合内科
10. 内分泌内科
11. アレルギー・免疫科
12. 皮膚科
13. 家庭医療科
論文著者は、「どの科がどうかより、科ごとに違いがあると知るのが大事」といい、「それを支払いに反映させたらどうなるか」などの議論を提案している(政治的だが、元来支払いは手技に重きが置かれてきた、こちらも参照)。
私たちは、どうすればいいか?私は不意に持ち上げられて戸惑った(個人的には、もっと大変だろうなと思う科がたくさんある)。根治療法が限られたり処方する薬の数が多かったり患者さんに申し訳ない思いもある。
それでも、「ありがとう、来年もまたがんばります!」といい気分でよい年を迎えさせてくれる論文ではないか。
そんなわけで、来年もよろしくお願いします。
(このブログが2007年11月にはじまってから、11年が経ちました。12年目も引き続きよろしくお願い申し上げます!)
「腎臓内科外来は、すべての専門内科のなかで最も大変!」という論文だ。
これはカナダ・アルバータ州の外来患者データを科ごとに解析し、併存疾患数・精神疾患・処方・救急搬送・入院・入施設・死亡など9つの観点(さらに、社会経済的な面も加味)から複雑さの度合いを出して比べたものだ。
それによれば、科ごとの複雑さは次のような順番になった。
1. 腎臓内科
2. 感染症科
3. 神経内科
4. 呼吸器内科
5. 血液内科
6. リウマチ内科
7. 消化器内科
8. 循環器内科
9. 総合内科
10. 内分泌内科
11. アレルギー・免疫科
12. 皮膚科
13. 家庭医療科
論文著者は、「どの科がどうかより、科ごとに違いがあると知るのが大事」といい、「それを支払いに反映させたらどうなるか」などの議論を提案している(政治的だが、元来支払いは手技に重きが置かれてきた、こちらも参照)。
私たちは、どうすればいいか?私は不意に持ち上げられて戸惑った(個人的には、もっと大変だろうなと思う科がたくさんある)。根治療法が限られたり処方する薬の数が多かったり患者さんに申し訳ない思いもある。
それでも、「ありがとう、来年もまたがんばります!」といい気分でよい年を迎えさせてくれる論文ではないか。
そんなわけで、来年もよろしくお願いします。
(このブログが2007年11月にはじまってから、11年が経ちました。12年目も引き続きよろしくお願い申し上げます!)
2018/12/18
事実は小説よりも奇なり
たまには腎臓以外の臓器にも思いを馳せてみる。
NEJM pictureシリーズ とても面白く興味深いものを提示されることが多い。今回もよくある心不全患者の治療中という状況のはずだったが、、、
話題となったのはこの記事。
慢性心不全の急性増悪で入院した36歳の男性で既往にEF20%の心不全、A弁術後、大動脈瘤に関して血管内治療後、完全房室ブロックに対してペースメーカー留置されている。
呼吸不全の管理のために補助人工心臓とヘパリンを使用していた。咳をしていたところ患者さんの口から噴出したものが下記のもの。
こんなの見たことない。事実の前には自分の常識は通用しない。
"Truth is stranger than fiction. " Lord Byron / George Gordon Byron, 1788-1824
2018/12/15
高ナトリウム血症:Adipsic Hypernatremiaに関して
以前に低ナトリウム血症の投稿でも話したように、低ナトリウム血症も高ナトリウム血症も基本的には水(自由水)の異常である。水に比べ相対的にNaが多くなれば高ナトリウム血症となる。
高ナトリウム血症の原因は、下記のようなイラストにもあるように、過剰なNaの摂取(基本的には人は浸透圧変化→ADH作用→口渇し飲水で高ナトリウムを起こさないが、集中治療室などで飲水できない場合などでメイロンの投与などで起こりうる)浸透圧利尿を生じるマンニトールなどの使用、尿崩症、下痢などでの自由水の喪失、口渇があるのに全く自由水を摂取しないなどが原因としてあげられる。
(※ADH:Anti-Diuretic Hormone 抗利尿ホルモン)
高ナトリウム血症の原因は、下記のようなイラストにもあるように、過剰なNaの摂取(基本的には人は浸透圧変化→ADH作用→口渇し飲水で高ナトリウムを起こさないが、集中治療室などで飲水できない場合などでメイロンの投与などで起こりうる)浸透圧利尿を生じるマンニトールなどの使用、尿崩症、下痢などでの自由水の喪失、口渇があるのに全く自由水を摂取しないなどが原因としてあげられる。
(※ADH:Anti-Diuretic Hormone 抗利尿ホルモン)
今回、Adipsic Hypernatremiaについて話そうと思う。
この言葉は、あまり耳慣れない人も多いのではないだろうか?
人体は口渇により水を飲み、高ナトリウム血症にならないように働く。その重要なキーマンが下垂体後葉から出るADHである。
厳密には、ADHは口渇だけでなく尿Na量も変化させ排尿量も調整を行なっている。
Adipsic Hypernatremiaは日本語では無飲性高ナトリウム血症と言われるように、口渇感がない高ナトリウム血症である。
原因として、口渇が働かなくなる中枢性のものを鑑別にあげる必要がある。
頭蓋咽頭腫、中枢性サルコイドーシス、胚細胞腫、Willis動脈輪の前交通動脈へのClippingや破裂などがあげられる。
Adipsic HyponatremiaにはtypeがありTypeA〜Dまで分かれる。
TypeAはもっとも多いTypeで、口渇を感じることとADHを分泌する上行性の閾値が高くなり、口渇が感じずADHも出ず高ナトリウム血症になるものである。
しかし、原因自体は明確にわかってはいなく浸透圧受容器の障害では?などの議論がある。
TypeBはADHが出てはいるが少量しか出ないものである。原因は浸透圧受容器の一部がなくなることによって起こると言われる。
TypeCは全くADHが出ないことによる。原因はTypeBと異なり、全ての浸透圧受容器がなくなったためによる。
TypeDは診断されることも少なく特に稀である。ADH分泌は保たれているが口渇だけないものである。
もちろん治療はしっかりと水を飲ませることである。
口渇がないが、しっかりと水を飲むことの重要性を認識させる。また、原因疾患となるようなものがないかはチェックすることは重要である。
DDAVPも使用し良好といった報告もあるが、しっかりと自由水摂取させることは忘れてはならない。
※DDAVP:デスモプレシン
この診断をつけるために大事なことは、高ナトリウム血症の患者さんが目の前にいた時に「喉は乾いてますか??」と聞くのが一番大事である!!
「全然乾いてないですよ。」というようであれば、この疾患を想起してほしい。
2018/12/12
間質性腎炎のステロイド投与期間
ここ最近で間質性腎炎の腎生検での報告件数は増えていることはご存知であろうか?
この論文(QJM2015)はスコットランドの報告ではあるが、割合が増加していることが示されている。
また、報告によっては急性腎障害の原因のTop3に間質性腎炎が入っているのではないかとも言われている。
最近は免疫チェックポイント阻害薬のぺムロリズマブやニボルマブによる間質性腎炎の報告も多くなっており、Hot Topicなのではないだろうか?
薬剤性間質性腎炎の際に、治療として薬剤の中止が原則となる。薬剤中止により腎機能が改善する場合も多いが、全く改善しないまま透析や軽度改善したがCKDに移行するということも少なくない(NDT2004)。
薬剤中止以外の治療オプションとしてステロイドを使用する場面も非常に多いと思う。
ただ、薬剤性間質性腎炎においてのステロイド投与の効果は前向き研究などでの証明もされていないが、コホート研究では間質性腎炎の診断後早期に使用したほうがいい結果が出たという報告がある(KI 2008)。
今回、下記の図のようにretrospectiveな研究ではあるが、薬剤性急性間質腎炎における投与期間について述べている論文があったので紹介する。
スペインの13施設で182人の薬剤性急性間質性腎炎(腎生検で証明されたもの)で、ステロイド投与をおこなった研究である。ステロイド投与量に関しては、平均は0.8±0.2mg/kg/dayで開始している(ちなみにUp to dateの記載では、下記のようになっている)。
この研究では、6ヶ月後の腎機能のフォローを行い腎機能の変化を見ている。
間質性腎炎の原因薬剤に関しては、この研究ではNSAIDsが27%、抗生物質が22%、PPIが4%、薬剤の原因が不明が30%となっている。
研究の結果は、完全に改善(41%)も部分的に改善(46%)、改善しない(13%、そのうち半数は維持透析に移行)であった。
改善と改善しないものに関しての違いとして、ステロイドの早期投与と腎生検組織の繊維化(>50%以上)の程度が関連していた。
この研究では、
・腎生検時期から急性間質性腎炎の診断の平均期間は11日(5.75~22 days)であった。これは、日本でも外注の場合に依頼し結果を得るまでにはそのくらいの期間になる。
・治療開始後に腎機能の変化は1ヶ月での反応が重要である。1ヶ月目以降の変化はどの場合でも乏しい(下表参照)。
・投与期間に関してはステロイド開始し3週間以上は高容量で投与しても効果乏しく、またそこから減量していくのも5~6週以上を要しても意味がないことが示された。
つまり、薬剤性急性間質性腎炎の際は
・まずは原因薬剤の中止。
・その後、早期治療!生検を行なった場合には繊維化はどうかはチェック。
・0.8~1mg/kg/dayのステロイド投与を開始。最高でも3週間。
・徐々に減量していき、5~6週以内にはOFFにする。
ということが今回の報告からは言われている。
今後、これについても色々とエビデンスが構築されればなと思う。
また、Twitterでもご意見をいただければ幸いです。
https://twitter.com/Kiseki_jinzo
この論文(QJM2015)はスコットランドの報告ではあるが、割合が増加していることが示されている。
また、報告によっては急性腎障害の原因のTop3に間質性腎炎が入っているのではないかとも言われている。
最近は免疫チェックポイント阻害薬のぺムロリズマブやニボルマブによる間質性腎炎の報告も多くなっており、Hot Topicなのではないだろうか?
薬剤性間質性腎炎の際に、治療として薬剤の中止が原則となる。薬剤中止により腎機能が改善する場合も多いが、全く改善しないまま透析や軽度改善したがCKDに移行するということも少なくない(NDT2004)。
薬剤中止以外の治療オプションとしてステロイドを使用する場面も非常に多いと思う。
ただ、薬剤性間質性腎炎においてのステロイド投与の効果は前向き研究などでの証明もされていないが、コホート研究では間質性腎炎の診断後早期に使用したほうがいい結果が出たという報告がある(KI 2008)。
今回、下記の図のようにretrospectiveな研究ではあるが、薬剤性急性間質腎炎における投与期間について述べている論文があったので紹介する。
![]() |
| CJASN 2018より引用 |
スペインの13施設で182人の薬剤性急性間質性腎炎(腎生検で証明されたもの)で、ステロイド投与をおこなった研究である。ステロイド投与量に関しては、平均は0.8±0.2mg/kg/dayで開始している(ちなみにUp to dateの記載では、下記のようになっている)。
One possible regimen is prednisone at a dose of 1 mg/kg per day (to a maximum of 40 to 60 mg) for a minimum of one to two weeks)
この研究では、6ヶ月後の腎機能のフォローを行い腎機能の変化を見ている。
間質性腎炎の原因薬剤に関しては、この研究ではNSAIDsが27%、抗生物質が22%、PPIが4%、薬剤の原因が不明が30%となっている。
研究の結果は、完全に改善(41%)も部分的に改善(46%)、改善しない(13%、そのうち半数は維持透析に移行)であった。
改善と改善しないものに関しての違いとして、ステロイドの早期投与と腎生検組織の繊維化(>50%以上)の程度が関連していた。
この研究では、
・腎生検時期から急性間質性腎炎の診断の平均期間は11日(5.75~22 days)であった。これは、日本でも外注の場合に依頼し結果を得るまでにはそのくらいの期間になる。
・治療開始後に腎機能の変化は1ヶ月での反応が重要である。1ヶ月目以降の変化はどの場合でも乏しい(下表参照)。
・投与期間に関してはステロイド開始し3週間以上は高容量で投与しても効果乏しく、またそこから減量していくのも5~6週以上を要しても意味がないことが示された。
つまり、薬剤性急性間質性腎炎の際は
・まずは原因薬剤の中止。
・その後、早期治療!生検を行なった場合には繊維化はどうかはチェック。
・0.8~1mg/kg/dayのステロイド投与を開始。最高でも3週間。
・徐々に減量していき、5~6週以内にはOFFにする。
ということが今回の報告からは言われている。
今後、これについても色々とエビデンスが構築されればなと思う。
また、Twitterでもご意見をいただければ幸いです。
https://twitter.com/Kiseki_jinzo
2018/12/06
PIVOTAL 前編
62歳男性、81kg。糖尿病性腎症による末期腎不全のため血液透析をはじめて、4.9年。ヘモグロビン10.6g/dl、EPO32000単位/月(ネスプ®約40mcg/週相当)、フェリチン214mcg/l、TSAT20%。鉄補充はうけていない。
Q:何か問題ありますか?
日本のガイドライン(透析会誌 2016 49 89)は、ESA投与下でHgbが維持できない患者であっても、「フェリチン100未満」と「TSAT20%未満」のどちらも満たさなければ鉄補充療法は推奨していない(1B)。
これより緩和された、「フェリチン100未満」と「TSAT20%未満」のどちらかがあれば鉄補充を提案する(ただし鉄利用障害を除く)、というステートメント3.2もある。しかし、これはなんと「作成ワーキンググループ会議にて全会一致ではなく 2/3 以上の合意をもって採択された唯一の記載」だ。
それくらい、ひとことで言うと(高ESAの害よりも)鉄過剰の害を嫌う。鉄の害とは感染症、酸化ストレス、沈着による臓器障害(要はヘモクロマトーシスのような)、などのことだ。
それで、鉄含有リン吸着薬も「リンが減って鉄も補充できて一石二鳥!」とはならない(残念ながら鉄が少しは吸収されてしまいます・・・という売り方になる)。「補充時にフェリチンが 300を越えないように」という閾値も、世界で最も厳しい。極論すると、フェリチンが一桁でも、現場は意外とこれはまずい!ということにならない(慢性的な消化管出血の除外などは考慮するにしてもだ)。
では実際のところ、鉄の害(以前学会ではこんな話もあった)と高ESAの害ではどちらが悪いか?という話は、日本だけでなく世界各国でされている。それで、実際に鉄補充によるESA反応性改善のメリットと、鉄過剰のデメリットをくらべたPIVOTALスタディが英国で組まれた(DOI: 10.1056/NEJMoa1810742、2018年米国腎臓学会でも注目された)。
冒頭の患者は本スタディの平均的な症例だ。この試験にはフェリチン400未満、TSAT30%未満でESA使用中の血液透析患者が登録された。
なお、4割が透析カテーテルで、6割が内シャントまたは人工血管で透析されていた。
平均2.1年のフォロー中、毎月フェリチンとTSATを測り、高用量群では400mg/月のスクロース鉄をフェリチン700、TSAT40%を越えないように打った(Vifor Pharma社のVenofer®を、同社が無償提供)。
実際の投与量は264mg/月で、フェリチンは650、TSATは28%となった。264mg/月と400より低いのは、最初の数ヶ月で鉄が一気に満たされ、以後は打たなくてよくなったからでもある(下図青線、縦軸はフェリチン)。
いっぽう低用量群では毎月0-400mgのスクロース鉄をフェリチン200以上、TSAT20%以上を保つように加減して投与した。そして実際の投与量は121mg/月で、フェリチンは200、TSATは20-22%であった。
それでどうなったか?つづく(写真の新型スーパーあずさを鑑賞するのは、別の「鉄」分補給。いつかできるかもしれないリニア中央新幹線よりずっと遅いが、車窓はなかなか)。
Q:何か問題ありますか?
日本のガイドライン(透析会誌 2016 49 89)は、ESA投与下でHgbが維持できない患者であっても、「フェリチン100未満」と「TSAT20%未満」のどちらも満たさなければ鉄補充療法は推奨していない(1B)。
これより緩和された、「フェリチン100未満」と「TSAT20%未満」のどちらかがあれば鉄補充を提案する(ただし鉄利用障害を除く)、というステートメント3.2もある。しかし、これはなんと「作成ワーキンググループ会議にて全会一致ではなく 2/3 以上の合意をもって採択された唯一の記載」だ。
それくらい、ひとことで言うと(高ESAの害よりも)鉄過剰の害を嫌う。鉄の害とは感染症、酸化ストレス、沈着による臓器障害(要はヘモクロマトーシスのような)、などのことだ。
それで、鉄含有リン吸着薬も「リンが減って鉄も補充できて一石二鳥!」とはならない(残念ながら鉄が少しは吸収されてしまいます・・・という売り方になる)。「補充時にフェリチンが 300を越えないように」という閾値も、世界で最も厳しい。極論すると、フェリチンが一桁でも、現場は意外とこれはまずい!ということにならない(慢性的な消化管出血の除外などは考慮するにしてもだ)。
では実際のところ、鉄の害(以前学会ではこんな話もあった)と高ESAの害ではどちらが悪いか?という話は、日本だけでなく世界各国でされている。それで、実際に鉄補充によるESA反応性改善のメリットと、鉄過剰のデメリットをくらべたPIVOTALスタディが英国で組まれた(DOI: 10.1056/NEJMoa1810742、2018年米国腎臓学会でも注目された)。
冒頭の患者は本スタディの平均的な症例だ。この試験にはフェリチン400未満、TSAT30%未満でESA使用中の血液透析患者が登録された。
なお、4割が透析カテーテルで、6割が内シャントまたは人工血管で透析されていた。
平均2.1年のフォロー中、毎月フェリチンとTSATを測り、高用量群では400mg/月のスクロース鉄をフェリチン700、TSAT40%を越えないように打った(Vifor Pharma社のVenofer®を、同社が無償提供)。
実際の投与量は264mg/月で、フェリチンは650、TSATは28%となった。264mg/月と400より低いのは、最初の数ヶ月で鉄が一気に満たされ、以後は打たなくてよくなったからでもある(下図青線、縦軸はフェリチン)。
いっぽう低用量群では毎月0-400mgのスクロース鉄をフェリチン200以上、TSAT20%以上を保つように加減して投与した。そして実際の投与量は121mg/月で、フェリチンは200、TSATは20-22%であった。
それでどうなったか?つづく(写真の新型スーパーあずさを鑑賞するのは、別の「鉄」分補給。いつかできるかもしれないリニア中央新幹線よりずっと遅いが、車窓はなかなか)。
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