2019/01/10

PIVOTAL 後編

前編のつづき)

 ESA量は有意に減った(高用量でEPO29757単位/月、低用量で38805単位/月)。プライマリ・エンドポイントは心血管系の複合イベント(致死的でない心筋梗塞・致死的でない脳梗塞・心不全による入院・総死亡)で、数字としては図のように高用量のほうが低かった(低用量に対する優越性は有意差なく、非劣性のみ)。




 高ESAと鉄過剰、どちらをとるかで地域ごとおおきく診療スタイルに差があるなか、英国なりにスタディを組んでこの結果になった。歯に物が挟まったような書き方だが、わが国でどうかという話には直接はならないということだ。

 それはなぜか。「うちはうち、他所は他所」だからか。

 そういうと身も蓋もないが、どう「うち」と「他所」が違うのかを、いくつかの観点から考えたい。

1. アクセス

 前編でも触れたように、おどろくほどカテーテル透析だった。わが国の現況でもカテーテルが高齢者・女性を中心に増えてはいるが、いまだ数パーセントだ。カテーテル透析患者が細菌感染を起こしやすいことを考慮すると、鉄の易感染化は微生物学的に言われるほどではないのかもしれない(CRP 5mg/dL以上、まさに感染を起こしている、などの例は除外されているが)。

2. 腎代替療法

 PIVOTALスタディは登録時に12ヶ月以内に生体腎移植を受ける予定の患者を除外している。さらに、フォローアップ中に移植を受けた患者も除外している。その数は、両群約2000人のうち、371人(約18%)だ。さらに在宅透析にうつったのが81人(4%)、腹膜透析にうつったのが30人(1.5%)。18%、サブスタンシャルな数字だ。

3. 心血管系イベント、死亡率

 より健康で若い患者が移植された可能性は高い。2年間フォローして死亡が2000人中505人なんて、日本では考えられない。以前紹介したLANDMARKスタディ(Ca非含有のランタン酸をCa含有のリン吸着薬と比較したもの)でエンドポイントに有意差が出なかったのも、そもそも有害事象の発生率がきわめて低いからだと言われる。


 しかし、有害事象の発生率が高いコホートのPIVOTALでも低いコホートのLANDMARKでも、結局差が出なかった。それじゃあ、「Caはダメ!」「鉄はダメ!」などといっても「ほんとかな?」ということになってしまうかもしれない。まあ、歯磨きのようにエビデンス云々を越えた常識的な知識や治療というのはあるわけだが。


 こういうトピックは、学会などでディベート方式で議論(利益の相反も公開して)があったら、聞いて見たい。視聴者参加型だったら、参加もしてみたい(写真は、やはり鉄分摂取。地下鉄と小田急がいっしょになって箱根湯本に至るリゾート/通勤特急、メトロはこね)。