尿路結石のレクチャが一時間あっても、なかなか一時間ですべてをカバーするのは難しい。でも例の教育熱心な先生はカバーしちゃうから凄いなと思う。おそらくまず総論、そして結石の生成に関わるプロセス(高カルシウム尿、高シュウ酸尿、低クエン酸尿、高尿酸尿)について各論で述べたから出来たのだろう。
総論ではsupersaturationとmetastableという概念を教わった。溶解度積に近い概念だが、尿にはさまざまな溶質が混ざっているのでそれぞれの相互作用を加味して計算される。結石患者さんでは治療してもsupersaturationが1を切ることはまずないが、尿酸結石やシスチン結石の患者さんでは切ることもあり、その時には石が溶ける。
Metastableとは、supersaturationを越えているので既存の石は成長するが、新しい石はできないレベルを言う。ここに留まっておればいずれ全ての石が去るはずである。Metastable域を越えると、新しい石ができる。石ができるには核が必要だ。最近の研究でメタボの人は尿が酸性のため尿酸が析出して核になり、そこからシュウ酸カルシウムが雪だるまを作ることがわかった。
クマさんがおしっこしないで冬眠できるのも、じん臓が一日に体液の何十倍もろ過してから不要なものを残して再吸収するのも、じん臓の替わりをしてくれる治療があるのも、すごいことです。でも一番のキセキは、こうして腎臓内科をつうじてみなさまとお会いできたこと。その感謝の気持ちをもって、日々の学びを共有できればと思います。投稿・追記など、Xアカウント(@Kiseki_jinzo)でもアナウンスしています。
2012/05/09
2012/05/06
Randall's plaque
尿路結石は尿細管内腔で出来るのかと思ったら、idiopathic hypercalciuriaの患者さんにおいてはそんなことはない。 腎皮質の尿が最も濃縮されるところで、 間質にRandall's plaqueと呼ばれるリン酸カルシウム(アパタイト)の塊が蓄積する。それが腎髄質のcalixに達するとポロポロと尿管にこぼれていくというわけだ(JCI 2003 111 607)。しかし、消化管異常によるhyperoxaluriaの場合は別で、こちらは集合管の内腔でシュウ酸カルシウムが析出する。
2012/05/04
AQP2
腎性尿崩症と深部静脈塞栓症をきたす家族性の疾患と言われれば、AQP2の変異だ(J Clin Endocrinol Metab 1997 82 686)。これはV2 receptorの変異(もっとも多い、そしてX-linked)の次いで多い家族性の腎性尿崩症だ。文献ではautosomal recessiveとされているが、日本の医科歯科大グループがautosomal dominantの症例を報告している(Am J Hum Genet 2001 69 738)。
Aquaporinは疎水性の細胞膜にあって唯一水の出入りを司るとても大事なチャネル分子だが、ADH支配下にあるのはAQP2だけだ。AQPが機能しないので下垂体は頑張ってADHをたくさん作るが、V2 receptorは機能しているので、血管内皮細胞ではADH支配下にFactor VIIIaとvWFが放出され塞栓症をきたす。
Aquaporinは疎水性の細胞膜にあって唯一水の出入りを司るとても大事なチャネル分子だが、ADH支配下にあるのはAQP2だけだ。AQPが機能しないので下垂体は頑張ってADHをたくさん作るが、V2 receptorは機能しているので、血管内皮細胞ではADH支配下にFactor VIIIaとvWFが放出され塞栓症をきたす。
familial neurohypophyseal DI
尿崩症を疑う家族歴のある子供が、毎日5Lの水を飲まなければならず、多尿と夜尿で相談されたとしよう。腎性尿崩症で多い遺伝様式はX-linkedだが、この症例の家族歴はautosomal dominant、しかも他の家族はdesmopressinが効くという(腎性だったら効かないのでは)。
絶水試験で血漿浸透圧が285mOsm/kg、尿浸透圧が477mOsm/kgになった。これが心因性多飲症だったら、血漿浸透圧はもっと高く、尿浸透圧ももっと高くなるはずだ。絶水に反応してADHは出ているから完全な中枢性尿崩症ではない。腎臓は反応しているから、腎性尿崩症でもない。
というわけでこれはpartial central DI、疑うべきはneurophysin IIの異常だ。正確にはADH pre-prohormone geneの異常で、neurophysin IIはこの前駆体がADHになる際に出来る副産物だ。いずれにせよこの遺伝子異常によりmisfolded ADH precursor分子が神経分泌細胞内で詰ってしまう(J Cell Sci 2009 122 3994の図10)。だがdesmopressinを投与すると「(スタッフによれば)詰りが改善する」らしい。
絶水試験で血漿浸透圧が285mOsm/kg、尿浸透圧が477mOsm/kgになった。これが心因性多飲症だったら、血漿浸透圧はもっと高く、尿浸透圧ももっと高くなるはずだ。絶水に反応してADHは出ているから完全な中枢性尿崩症ではない。腎臓は反応しているから、腎性尿崩症でもない。
というわけでこれはpartial central DI、疑うべきはneurophysin IIの異常だ。正確にはADH pre-prohormone geneの異常で、neurophysin IIはこの前駆体がADHになる際に出来る副産物だ。いずれにせよこの遺伝子異常によりmisfolded ADH precursor分子が神経分泌細胞内で詰ってしまう(J Cell Sci 2009 122 3994の図10)。だがdesmopressinを投与すると「(スタッフによれば)詰りが改善する」らしい。
GFR
計算されたGFRは個人差があるし、steady stateでなければならないし、密かに単位がml/min/1.73m2で体表面積を加味してある。だからより正確な腎機能が知りたければ24時間蓄尿してクレアチニンクリアランスを測る。A g/24hrsのクレアチニン排泄量を血中クリアチニン濃度(B mg/dl)で割るので、単位を補正すると A/B x 69 ml/minだ。大雑把にはA/B x 70でいい。
ただしクレアチニンクリアランスはGFRが低下した時にoverestimateしてしまう、というのもクレアチニンは尿細管から分泌排泄されるからだ。だから純粋なfiltration由来のクリアランスは少し低い。どれくらい低いかというのは何とも言えないが。そこでスタッフが使っていたのが尿素クリアランスだ。
尿素クリアランスは、クレアチニンクリアランスと対照的にGFRをunderestimateしてしまう、というのも尿素は尿細管からすこし再吸収されるからだ(確か集合管の最後のところで水分子と一緒に)。だからクレアチニンクリアランスと尿素クリアランスの間がだいたいのGFRではないかというわけだ。実際の患者さんで測定したら、前者が8ml/min、後者が4ml/minで、GFRは6ml/min位かなということになった。
ただしクレアチニンクリアランスはGFRが低下した時にoverestimateしてしまう、というのもクレアチニンは尿細管から分泌排泄されるからだ。だから純粋なfiltration由来のクリアランスは少し低い。どれくらい低いかというのは何とも言えないが。そこでスタッフが使っていたのが尿素クリアランスだ。
尿素クリアランスは、クレアチニンクリアランスと対照的にGFRをunderestimateしてしまう、というのも尿素は尿細管からすこし再吸収されるからだ(確か集合管の最後のところで水分子と一緒に)。だからクレアチニンクリアランスと尿素クリアランスの間がだいたいのGFRではないかというわけだ。実際の患者さんで測定したら、前者が8ml/min、後者が4ml/minで、GFRは6ml/min位かなということになった。
2012/04/29
Hypogammaglobulinemia
移植の月には入院してきた腎移植患者さんをたくさん診る。入院するのは移植を受けた患者さんの1%かそこらで、残りの99%は透析も不要で、仕事・趣味・家庭などで幸せに暮らしているわけだが、病院にいるとそれを診ることはあまりない。
さて移植患者さんの入院は大抵が感染症か腎機能障害、どちらも免疫抑制剤の副作用だ。感染症、とくに細菌感染を繰り返す人を診た時にスタッフが決まって「immunoglobulin levelは調べた?」と口にする。Hypogammaglobulinemia(HGG、低γグロブリン血症)を疑っているわけだ。しかし今まで疑った数例でチェックしたが免疫グロブリンレベルは正常だった。
スタッフがレビュー論文をくれ(Curr Opin Organ Transplant 2008 13 581)、孫引きして腎移植患者を対象にしたスタディ論文(Transplant International 2008 21 57)に当たってみるとHGGは移植後早期に多く見られるらしい。
さて移植患者さんの入院は大抵が感染症か腎機能障害、どちらも免疫抑制剤の副作用だ。感染症、とくに細菌感染を繰り返す人を診た時にスタッフが決まって「immunoglobulin levelは調べた?」と口にする。Hypogammaglobulinemia(HGG、低γグロブリン血症)を疑っているわけだ。しかし今まで疑った数例でチェックしたが免疫グロブリンレベルは正常だった。
スタッフがレビュー論文をくれ(Curr Opin Organ Transplant 2008 13 581)、孫引きして腎移植患者を対象にしたスタディ論文(Transplant International 2008 21 57)に当たってみるとHGGは移植後早期に多く見られるらしい。
Oleander
スタッフが「スリランカから来た人が自殺目的にOleander(夾竹桃)の種を大量摂取して運ばれてきたら、どうする?」という問題を回診中に出した。何のことやらと思ったが、話を聞くと夾竹桃にはoleandrinという強心配糖体が含まれ、Na-K-ATPaseを阻害して房室ブロックやら高カリウム血症やらを起こす。治療はDigibind(digoxin derivativeに感作されたヒツジの血清から取られた免疫グロブリンFabフラグメント)。強心配糖体はどれも分子量が大きく、かつ脂溶性でvolume of distributionが高いため透析除去できない。
[2019年8月12日追記]夾竹桃の花が咲くのは、盛夏(写真は筆者撮影)。夾竹桃の描写で始まる夏川草介著『神様のカルテ0(2015年)』の一短編、『有明』を読むまで知らなかった。咲き誇る夾竹桃の描写も、人物達の熱い思いや純情も、どこか涼しげに感じられる。信州が舞台なことと、漱石を意識した文体、そして医師でもある作者のクールな視点がそうさせるのだろう。まだお読みでない方はどうぞ。
[2019年8月12日追記]夾竹桃の花が咲くのは、盛夏(写真は筆者撮影)。夾竹桃の描写で始まる夏川草介著『神様のカルテ0(2015年)』の一短編、『有明』を読むまで知らなかった。咲き誇る夾竹桃の描写も、人物達の熱い思いや純情も、どこか涼しげに感じられる。信州が舞台なことと、漱石を意識した文体、そして医師でもある作者のクールな視点がそうさせるのだろう。まだお読みでない方はどうぞ。
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