2020/06/01

それぞれの人生を歩む

 とある日の慢性腎臓病の外来

 1人目、55歳男性, 糖尿病性腎臓病でeGFR 12 ml/分/1.73m2
 2人目、58歳男性, ADPKDでeGFR 10 ml/分/1.73m2
 3人目、98歳男性, 糖尿病性腎臓病でeGFR 8 ml/分/1.73m2
 
 3人とも、腎代替療法を考える時期である。

 皆が全く別の物語の中で生きているなと感じるのが、腎代替療法の説明の時だ。腎代替療法とは血液透析、腹膜透析、腎臓移植である。この説明の時に、これら腎代替療法のそれぞれの利点や欠点を話しながら徐々に方針を決めていく。

 患者さん本人はもちろん身の回りの人も含めた話し合いになり、普段の外来では窺い知れなかった患者さんの一面も知ることができることが多い。

 ただし、具体的な療法選択の話をする前に最初に確認しなければいけないことがある。

 そもそも患者さんの治療のゴールは何かということである。ここを意識して確認しておかないと、皆で同じ目的に向かって進んでいくことは難しい。

 中には、「腎代替療法をそもそもやるつもりがない。」という人もいる。

 ただ、「やりたくないのであれば、やらない。」ではなく、「どうしてやりたくないのか?」を具体的に確認していく作業が必要だと思われる。実は単なる勘違いだった、質問の意図が理解できていなかったということもある。

 単純にやりたくない→ではやらないという形にならない、非常にナイーブな問題を抱えている。これまでも日本透析医学会から「透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言」が2014年に発表されていたが、今回その情報がupdateされた(透析会誌 2020 53 173)。

 いろいろと考えることや得ることがあるので、この提言を隅々まで見ることをお勧めする。

 透析の選択に関わる人は必読と思われる。






提言に記載されている、考え方のフローチャート