2019/07/18

早とちりは禁物

 特記すべき既往のない70歳女性。数ヶ月の倦怠感、体重減少などあり受診した前医で腎機能障害を指摘され、腎臓内科を紹介された。

Cr     1.5mg/dl
潜血尿   なし
蛋白尿   定性陰性、定量1/gCr
総蛋白   9.5g/dl
アルブミン 3.5g/dl

Q:骨髄腫以外に、何を疑いますか?

 
 ポイントは、蛋白尿で非アルブミン尿がみられ(試験紙法はアルブミンしか検出できない)、血液検査で高グロブリン血症がみられる(総蛋白とアルブミンの差が開いている)ことだ。もちろん、これらをみたらまずは骨髄腫を疑ってほしい。

 しかし、非アルブミン尿と高グロブリン血症がみられる疾患はそれだけではない。

 尿細管が障害されれば、本来メガリンやキュビリンによって再吸収されるはずの低分子蛋白が漏れる。間質性腎炎や、Dent's diseaseなどはそのよい例だ。また高グロブリン血症も、モノクローナルだけでなくポリクローナルな可能性を考える必要がある。自己免疫疾患などは、そのよい例だ。

 だから、こういう場合でも骨髄腫一本の決めうちは禁物で、間質性腎炎を起こす自己免疫疾患(シェーグレン症候群など)も頭の隅にいれておきたい。M蛋白もB-J蛋白も陰性の代わりに、SS-A・Bが振り切れるほど高値で、腎生検したら間質性腎炎であった・・などということも、ときにはある(「告知」を取り消したり、わりと大変だ)。

 シェーグレン症候群なんて、目や口の乾きなどの腎外症状、低カリウム血症を伴う遠位RTAを起こす(米国腎臓学会の機関紙Kidney Newsの人気コーナー、Detective Nephronにも取り上げられた)から普通気づくと思うかもしれない。しかしそれも、「そういう眼でみれば」の話である(写真は、「後医は名医」を意味する英語のことわざ)。