2019/07/04

TTPへのPLEX

 表題を見てそりゃ当然と思った方が多いだろう。ただその先は?と聞かれると、はて?と思う方が多いだろう。

 TTPには先天性と後天性があるが、特に後天性に対する治療の最初にして最大の治療は血漿交換療法(Plasma Exchange: PLEX)である。

 血漿交換療法の登場前は10%程度しかなかった救命率が、この治療により70-80%ほどの救命率になったことで一躍脚光を浴びた。異論は特になく詳細に関しては以前のここに記載してあるので参考にしたい。

 病態として、1.ADAMTS13の補充、2.生理的止血に必要な正常サイズのvWF補充、3.IgGADAMTS13抗体の除去、4.UL-vWFの除去、5.高サイトカイン血症の是正などの効果により有効だったと考えられている。

 今回紹介するのは、そんな当たり前の事実に一石を投じうる報告である。

 臨床状況としては、「宗教上の理由などで血漿交換のできない患者さん」が後天性TTPを発症した場合どうする?
 
 とても悩ましい臨床状況であると誰もが思うだろう。

 ここで登場するのはcaplacizumabである。後天性TTPの本態がvon Willebrand因子マルチマーと血小板の無制限の結合であり、この薬により結合を阻害することができると考えられている。
 
 HERCULES試験でその名を聞いたことがあるかもしれない。

 ただ、今回の報告ではcaplacizumab+Rituximab+ステロイドで治療できたとするものである。PLEXは一度も使われていない。

 びっくりした。興味深い。まだ症例報告なので追加の試験が待たれるが、これまでの常識が塗り替えられるかもしれない。ちなみに日本ではまだ使用することはできない。

 悩ましい状況をなんとか切り抜けようと考えた末のアイデアだろうなと思い、考え続けたことは素晴らしいなと思う。