2018/06/22

夢を信じる iRAD治験、まもなく開始!

 来週はいよいよ透析学会。米国にはASNのKidney Weekと、NKFのスプリング・ミーティングというのはあるが、「透析学会」というのはあまり聞かない。まさに、世界に冠たる透析医療の最先端を学べる素晴らしい機会だ。

 米国では目だった透析学会を聞かないが、英国にはUK Annual Dialysis Conferenceというのがある。今年で11回目と歴史は浅いようだが、9月にマンチェスターで開催されるその大会を、私はひそかに心待ちにしている。

 なぜか?

 人工腎臓(写真はUCSFウェブサイトより)治験の途中経過が発表されることになっているからだ(記事はこちら)!




 試されるのは、以前にも解説した人工腎臓、iRAD(開発しているUCSFの動画サイトはこちら)。シリコンポア膜によるフィルター、尿細管細胞をいれたバイオリアクター、そして膜には血栓形成やファウリングを防ぐため食虫植物の原理を応用したSLIPSコーティング技術を用いた、腎アシストデバイス。なんてクールな(写真はUCSFとサンフランシスコを掛けた)!



 ブログ紹介の当時はproof of conceptを終え治験の準備に改良をすすめていたが、ついに英国でその治験が始まる見通しだ。こういう規制緩和も、Brexitと関係あるのだろうか。英国医療はNHSといって国営化されているのに、米国より先にこんなことができるなんてすごい。さすが、産業革命とダイソンを生んだ国は技術革新に積極的なのだろうか?あるいは医療費削減につながることを期待しているのか?

 人工腎臓なんて、夢だと思っていた。iRADだって、ブタで成果が出たといっても、治験をはじめれば血栓とか感染とかいろいろ不具合がでてくるかもしれない。でもよくかんがえれば、透析だって移植だって始める前はみんな夢だと思っていたに違いない。

 いまある技術を安全に提供し改善していくことも大切で、ブレイクスルー・革新への確信も必要なのだなと、あらためて感じた。




[2018年11月追加]上記の英国カンファレンスでは、めだった発表はなかったようだ。最近の報道によれば、今年終わりから来年はじめまでに治験が認可されるのを待っており、被験者に埋め込まれるのは早くても2020年という。2020年を楽しみに待つ理由がもうひとつ増えた(Implantable artificial kidneyでニュース検索すれば、投機熱がじわり高まっていることもわかる)。