外来でも入院でも「先生、腎臓を治す薬ってのはないんですね?」とおっしゃる患者さんたちにはいつも申し訳ないと思っている(日本版バルドキソロンがどうなるか)。アメリカのTVシリーズ『スター・トレック』では腎臓病がなおる未来からきたDr. McCoyが透析患者さんに薬をあげるシーンがある(おばあさんが、The doctor gave me a pill and I grew a new kidney!と喜ぶ、写真)し、不可能を可能にするプロジェクトにお金を出すXPRIZE財団も腎臓病研究をリストに入れている。
そんなわけで今月のJASNに載ったIgA1プロテアーゼの研究結果(JASN 2016 27 2622)が、次につながればいいなと思っている。ヒトのIgA1と受容体の可溶性CD89をマウスに強制発現させたモデルではある。IgA1プロテアーゼというのは細菌由来のいわば毒で、マウスはいいがヒトではさまざまな免疫反応を惹起するらしい(BMC 2007 7113)。
それでもIgA1プロテアーゼはメザンギウムにおける免疫複合体を一旦は消失させるんだから、方法論としては合っているんじゃないかと思う。この先が分子エンジニアリングで毒性を落としたプロテアーゼなのか、抗IgA1ヒンジ部モノクローナル抗体なのか、GALT/NALTに関わりIgAを減らす治療なのかはわからないけれど。