2015年7月22日水曜日

EAH

 血よりも濃いものを作れるのはなんだろう?B'zの"RUN"(1992年)は、「時の流れ」だと言っている。しかし体内では、血よりも濃いものを作れるのは腎臓だけである。

 だから熱中症で低張の体液である不感蒸泄が増えただけなら、ナトリウム値は上がりそうである。それで、熱中症の予防には一般に体液喪失を防ぐと共に水分補給をすることが奨励される。しかし、overhydrationをした場合 and/or 浸透圧上昇・体液不足などでAVPが出ている(腎が水排泄を抑制している)場合には、水摂取が水排泄を上回るので低ナトリウム血症になる。総水分量と体液量(volume)を別に考えなければならないのがtrickyだ。そして、これに関連してexercise-associated hyponatremia(EAH)にも言及しなければならない(Google Scholarに"hyponatremia heat stroke"と入れるとEAH関連の論文に飛ぶ)。

 マラソン(NEJM 2005 352 1550)でも軍事演習でもハイキングでもアメフト練習でも水泳でも、汗があまり出ず(slow-pacedな人で起こりやすい)口渇もないのに水を過剰に摂取することがEAHのリスクになる(EAHの国際コンセンサスを日本の教授に教えていただいた;Clin J Sport Med 2015 25 303)。つまりEAHの本態はdilutionalということだ(塩喪失の関与もないことはないが、ultramarathonなど極端な例に限られるとされている)。EAHは急性のナトリウム低下であり、脳ヘルニアのリスクがosmotic demyelinationのそれを上回るので、重症EAHは直ちに高張液で治療することが推奨されている。3%NaClでもよいし、もし手元になければ8.4%NaHCO3でもよいと(逆に言うとそれだけ8.4%NaHCO3は高張だという認識が必要だ)。