食欲の秋に、ビックリ?な発見だ。JASN・8月号の表紙をご覧になった方はもうご存知だろうが、アルカリン・タイド(食事摂取時に胃酸が放出される分、身体にアルカリがたまる現象)後に腎がどのようにして過剰なアルカリを排泄しているかが明らかになった(JASN 2020 31 1711)。
(ビックリ・・ならぬ、栃の実) |
β介在細胞にセクレチン受容体があるだけでも驚きだが、この受容体の刺激により活性化された細胞内のホスホキナーゼA(PKA)は、Cl-チャネルCFTRを活性化する。そして、活性化されたCFTRがHCO3-/Cl-交換輸送体のベンドリンを活性化・安定化させるのだという。
(図は前掲論文より) |
CFTRといえば嚢胞線維症(Cystic Fibrosis、CF)の責任遺伝子であるが、そもそもこの発見はCF患者さんの観察から得られたもの。CF患者さんは腸液や膵液だけでなく尿中アルカリ排泄も障害されており、セクレチンに対する反応が乏しいことが知られていた。それで、その仕組みを調べたわけだ。
なお、実験にはCFに対する新薬も使われている。海外のCFTR遺伝子異常で多いのはΔF508であるが、この病型に対しては既にシャペロンやポテンシエイター(elexacaftor、ivacaftor、tezacaftor)が存在する。実験ではこれらの薬によってCFTR発現を調節し、セクレチンによる反応がどう変わるかを調べている。
β介在細胞はCl-と交換にHCO3-を排泄するので、尿細管内腔にCl-がないと働くことができない(それが、Cl-欠乏時に代謝性アルカローシスが維持される仕組みなことは、以前も紹介した)。しかし、CFTRチャネルがあると、細胞内から尿細管内腔にCl-を供給してペンドリンを回せるので、何かと都合がよさそうだ。
CFTRチャネル・・セクレチン・・今まで「素通り(腎臓には関係ない?と思っていた)」してきた筆者としては、反省しきりである。とくにCFTRチャネルは、腎臓内科の「裏テーマ」とも言うべきCl-の腎ハンドリングで大きな役割を果たしているかもしれず、今後に期待したい。
(Biophys Rev 2009 1 3より) |