2013/09/27

代謝性アルカローシス 3/5(aka CDA)

 私が腎臓内科フェローになったばかりの頃、スタッフが「contraction alkalosisはもう古い、今はchloride-depletion metabolic alkalosisだ」と教えてくださり、NephSAPのeditorial(2011 10 91)をコピーして配ってくれた。そこには体液喪失によるアルカローシスはNaPO4によって戻らず、KClによって戻り、必要なのはNa+ではなくCl-と結論できる、とあった。それから、「そうなんだ」と実験結果を受け止めつつも分からないままにしていた機序が、いま少し分かった。

 そもそもcontraction alkalosisとは、ECFが減ってもHCO3-は減らない(Cl-が豊富な体液にはHCO3-が少ない)という前提で、要は「HCO3-が濃くなる」ということだ。そして、ECFが減ると(どういうわけか)近位尿細管でのHCO3-再吸収が増えて、代謝性アルカローシスが進行・維持されると考えられた。

 では、chloride-depletion alkalosis(CDA)はどういう考えなのか。最近のレビュー(JASN 2012 23 204)によれば、代謝性アルカローシスにとって重要だと分かってきた遠位ネフロン、そのなかでもβ介在細胞が鍵だ。Cl-欠乏で遠位ネフロンへのCl- deliveryが減って、β介在細胞がPendrinによってHCO3-を排泄することが出来ないから、代謝性アルカローシスが進行・維持される。

 これは、たとえNa+を補っていても、Cl-が欠乏するだけで起こる(Na+とリンクしていない)。また、ENaCによるNa+再吸収で起きた代謝性アルカローシスであっても、Cl-を補充してβ介在細胞からHCO3-を排泄しない限りは代謝性アルカローシスは改善しない(前回、PendrinがHCO3-を捨てたらENaCが活性化するとか書いたが、それでも結果的にはCl-補充で代謝性アルカローシスは補正される)。

 ここまで書いて、やっと次に代謝性アルカローシスの各論(嘔吐とか)を説明できる。