「私は米国にいたので長期留置カテーテルからの透析経験があります」と言っても、自慢にも何にもならない。長期留置カテーテルは言うまでもなく感染や塞栓・狭窄のリスクがあるので出来れば避けたいブラッドアクセスだからだ。それでも、「長期留置カテーテルが詰まった時にt-PAをルーメンに30分留置したら再開通したことがある、何なら次の透析までロックしてたこともある、ルーメン内を充たすだけなので体内には入らない」と言えることが診療に役立つこともある。
とはいえ自分でt-PAをカテ内に充填したわけでもない(オーダーしたら透析看護師さんがやってくれた)し、それについてのエビデンスを知るわけでもなかった。それが、いまいる職場の先生が「ヘパリンロック群と(週一回を)t-PAロックにした群でカテーテル塞栓リスクを比較したカナダのスタディ」を紹介してくれた(NEJM 2011 364 303)。まあ、予想されるとおり結果は週三回のうち一回をt-PAにしたら開存率が高く出血や感染の合併症率は変わらなかった。
t-PAは高い薬だが、塞栓症やら菌血症やら起こした額もあわせるとずっと安くつくというのがこのスタディの売りだ(理解できることに、t-PAを売る会社がこのスタディに資金提供している)。留意すべきことは、透析の血流速度が少なくとも300ml/minと日本より高く、ヘパリンは5000単位/mlだったこと(日本では普通1000単位/mlだったはず)、それから、日本でそもそも長期留置カテーテルがとても少ないということだ。