Renal Fellow Networkで薦められていた論文(AJKD 2011 58 626)を読み、代謝性アルカローシスという目でもう一度ネフロンを眺めて、尿細管イオン輸送の理解が深まった。H+排泄といえば以前に書いたNH4+の話と、α介在細胞の話がメインだが、そこで話は終わらない。
近位尿細管では、H+がテレポーテーション的にクルクル回っている。まず内腔にH+が(NHE3、H+-ATPaseなどにより)出る。そのたびに、細胞内にHCO3-が(一度H2CO3になってから)CO2として入り、CO2が再び細胞内でHCO3-になるときにH+が作られる。だから、細胞から消えたと思ったらまた細胞に現れているわけだ。
HCO3-のろ過量が増えると、近位尿細管でNHE3、H+-ATPaseが活性化する(H+が一層クルクル回る)。その結果HCO3-の再吸収が増えるので、これも代謝性アルカローシスが持続する原因の一つだ。またこの論文によればK喪失によっても(もしかするとendothelinの作用を介して)NHE3、H+-ATPaseなどが活性化するらしい。
ヘンレ上行脚のNKCC2チャネルが異常だったり薬でブロックされたり(遠位尿細管のNCCチャネルも同様)すると、いくつかのことが起こる。下流の集合管にNa+が多く流れるのでENaCが働き、α介在細胞でH+-ATPaseが働きH+を排泄する。ENaCが働くと(たとえ低K血症があっても)ROMKとmaxi-K(尿細管流量依存チャネル)が開いてK+が失われる。
K+喪失はα介在細胞のH+/K+-ATPaseも活性化し、さらにH+が失われる。それ以外にも、細胞内からK+を出す代わりにH+を細胞内にシフトさせたり、近位尿細管でのアンモニア産生を増やしたり、NH4+とNKCC2チャネルで競合してNH4+排泄を増やしたり、NKCC2チャネルを回らなくして集合管へのNa+ deliveryを増やしENaCを活性化させたり、さまざまな方法で代謝性アルカローシスを助長する。
集合管の主細胞にあるENaCは、上流からNa+をたくさんもらって活性化するのみならず、アルドステロンによっても活性化するから、原発性アルドステロン症、GRA、AMEなどはどれも代謝性アルカローシスになる。アルドステロンはα介在細胞にあるH+-ATPaseも活性化させることができるから、なおさらだ。長くなったから、続きは次回。