2019/02/22

こつこつとコツをひろう道

 腎臓内科を目指す人はやっぱり病態生理とかを詳しく知りたいのかなあと思っていたら、バスキュラーアクセスの各手技に習熟したいという情熱を持った人も多い。英語だとinterventional nephrologyと呼ばれ、やはり米国でも注目を集めている(CJASN 2013 8 1211)。かくいう筆者もそこへ足を踏み入れたひとりだ。

 さまざまな工夫がモノを言う世界なので、最初はとにかくお師匠たちの教えてくれるコツをひとつひとつ書きとめていたが、だんだんやりながら自分なりに得たコツもでてきた。お師匠たちのコツにくらべれば小さなことだが、このような媒体でシェアすればなんらかの形で役に立つかも知れない。たとえばこんなことだ。

1.局所麻酔

 「シャントPTAは内側からだから局所麻酔は効かない」という話もあるが、キシロカイン1ml程度をしっかりと拡張部位の周囲に置いてくれば、けっこう効く。

2.バルーンの進め方

 内シャントでシャント本幹の側からガイドワイヤーに沿わせてバルーンを進めても吻合部でつかえて越えない時には、①動静脈が吻合部でつくる角度を鈍にする、②ワイヤーのたわみをまっすぐにする、などを習った。が、③バルーン部分を指でやさしく「くい」っと入れ込むのがけっこう効く。

3.清潔野

 患者さんを覆う清潔野と物品を置く清潔野(台など)は、連続しているとなにかと便利(図は右内頚静脈への透析カテ挿入時だが、大腿静脈やシャントPTAでも同様だ)。




 たとえば、①患者さんのうえに穿刺針などをおかないので安全でマナーに適う、②ガイドワイヤーが不潔になりにくい、③術者が動いたり振り向いたりする手間が減る(筆者の施設では台が術者の後ろにあった)、④エコープローブを落としにくい、などが挙げられる。

 おそらく、こういったコツは筆者が気づくよりずっと前からよく知られていると思われる(筆者も1.は手術時の経験を転用している)。でも、自分で気づくのはうれしい。こういう繰り返しで、『羊と鋼の森』のように道を分け入っていくのかなと思う(こちらも参照)。