2019/02/17

ループス腎炎に対しての腎移植の有効性

 ループス腎炎の人を診療する機会は多い。

 一般的にループス腎炎はSLE患者の30−50%に発症し、ループス腎炎患者の10−30%が末期腎不全に至るとされている。もちろん、SLEの重症度、遺伝性の要因、社会的な要因、薬剤のコンプライアンス、最初の治療の反応の有無などが大きく関連している(Lupus2010:review)。
 
 ループス腎炎に伴う末期腎不全で一番懸念されるのは、患者の罹患年齢も低いことも一因としてあるが、premature death(早すぎる死亡)である。

 NDT2012の報告では、他の疾患に伴う末期腎不全患者に比べて26倍もpremature deathのリスクが高いというから驚きである。

 ループス腎炎のpremature deathの主な原因は感染とSLEのflareである。CKJ 2018の論文では、AKIの存在、治療開始後1年での寛解不良、治療に対するコンプライアンス不良はpremature deathの単独のリスクになると報告している。

 その中で腎移植が、どんな原因にかかわらずESRD患者の生存率を改善させたという報告がされている。では、ループス腎炎の患者さんに対してはどうなのだろうか?というのを見たのがAnnals of internal medicine 2019である。

 今回は、少しその内容を見てみる。

 研究は米国の大規模データを用いて、1995年1月1日〜2015年12月31日までの期間の患者で行われた。20974人の患者がいて、9659人(46%)が移植の待機リストになり、そのうちの5738人(59%)が腎移植を施行された。

 Primary endpointは全死亡率。

 Secondary endpointは死亡原因に設定している。

 結果:

 ・全死亡率は移植を受けた人で973人、移植を受けていない人で1697人であった。下の図を見てもらえばわかるように、移植を受けていない人に比べ受けた人のHazard ratioは0.3と低かった。


Annals 2019より引用

 ・死亡原因では移植を受けることで心血管死が74%低下し、冠動脈疾患(70%)、脳卒中(61%)も低下した。先に述べたループス腎炎の死因のtopの感染も移植を受けた人では減少していた(下図)。


Annals 2019より引用


 移植がここまで聞くととてもいいなと思ってしまう。

 ただ、懸念されるのは他の報告でもあるように、

 ・他の原因による末期腎不全で移植を受けた患者に比べて、SLEではallograft failureが多いのではないか?
 ・ループス腎炎末期腎不全の移植患者では、免疫抑制療法をしっかり行うために感染の発症率は上がっているのではないか?

 などもある。

 日本では、移植治療はまだまだ少ないがSLE患者のpremature deathはしっかりと防ぐ必要がある。移植の治療はとても希望のある分野であるし、おそらく今後は再生治療などがこの分野を席巻していくのであろう。