2020/10/01

速報 The 2020 Clinical Practice Guideline for Diabetes Management in Chronic Kidney Disease

 腎臓内科医にとって重要な診療指針の1つであるKDIGOの新しいガイドラインが発表された. CKDと糖尿病の関係はこれまでも, そしてこれからもきっと続いていくだろう.

 ガイドラインは5つのチャプター, 3つのポイント(エビデンスはないが概念的に重要),  12個の推奨(エビデンスあり)より構成されており, 昨今話題のSGLT2阻害薬の使用についても当然に言及されている. 

 下記, 一部抜粋 

 CKDとDMが認められる患者さんへ集学的治療を行う理由は, CKDの悪化の進展の抑制と心血管イベントの抑制のためである.

 集学的治療とは具体的には下記である.

 ・全例:血糖管理, 血圧管理, 脂質異常症への対応, 運動, 栄養, 禁煙

 ・大部分の患者:SGLT2阻害薬, RAS阻害薬

 ・ごく一部の患者:抗血小板薬

 ではさらに一部を細かくみてみる. 

 RAS阻害薬は, DM+高血圧+アルブミン尿が認められる場合は可能な限り最大量を投与する. 特に初回投与後2-4週間後に血清K値とCr値を確認しCr上昇とK値の変動がないか確認する. また, アルブミン尿のみでも投与を検討して良い. しかし, 高血圧もアルブミン尿もなければ投与の意味合いは薄いだろう. RAS阻害薬の開始量, 調整すべき点が具体的に記載された表があり参考にする(下記参照).

 血糖管理に関しては, HbA1cは年2回ないし血糖管理が悪い時はその都度行う. 目標値は<6.5-8.0%で個別化して対応する. HbA1cは腎機能障害の進行と共に正確性が低下する為, 注意する. よって腎機能が高度低下した症例ではHbA1cの代わりにCGMを行うことが血糖コントロールに有効となりうる.

 食事運動に関しては, タンパク摂取は0.8g/日, 透析始まれば1.0-1.2g/kgである. 塩分はNaClで5g<日. 中等度の運動を≧150分/週行う.

 具体的な治療に関しては, 食事運動で体重を落とすことに加えて, 2型糖尿尿の場合は薬剤ではメトフォルミン, SGLT2阻害薬が第1選択である. どちらの薬を最初に投与するかは決まっていないが, メトフォルミンが多いようだ. さらに, メトフォルミン単剤で治療が達成されてもSGLT2阻害薬の投与の余地を検討しても良いようだ. 

 なお上記2剤の使用に関してだが, メトフォルミンの投与はeGFR<45で減量, eGFR<30または透析開始では中止であり, SGLT2阻害薬はeGFR<30では開始せず, 透析開始で中止となっている. 

 その次の薬剤は患者の好み, 合併症, eGFR, 費用までを考慮するがGLP1受容体作動薬が好まれるようである(ここでのeGFR cut offは30であるが, SGLT2阻害薬に関しては, DAPA-CKDの結果を受けて引き下げられる可能性もある.). 他の薬剤の組み合わせについても図がガイドラインの中に記載されている.

 これだけでもまだ抜粋である. 情報量がとても多い. 

 個人的な意見としては, 今回の改定は本文を読まなくてもかなり理解が進むよう図が多様されている点と, 具体性を重視した記載をされている点が素晴らしいと思った. 例えば, RAS阻害薬という括りだけでなく具体的なACEI阻害薬の中での薬剤別の使い方まで詳細に記載されているのが印象的であった. どこから読んでも勉強になるようなガイドラインだなと思うので皆様も是非一読をされると良いだろう.


図:ARB/ ACEIの薬剤別の投与量と注意点(日本の保険用量との差異に注意)