Ca 13.4mg/dl
iCa 1.77mmol/l
IP 2.1mg/dl
iPTH 128pg/ml
1,25(OH)2・25(OH)VitD 基準範囲内
蓄尿Ca 19mg/d
Ca/Crクリアランス比 0.004
Q:診断は(症例はNEJM 2004 351 362より)?
高カルシウム血症にかかわらずiPTHが抑制されていないが、尿中のカルシウム排泄がとても少ない。原発性副甲状腺機能亢進症では、多くの場合Ca/Crクリアランス比が0.02以上となる(ビタミンD欠乏の合併例はその限りではないが、本例では除外されている)。副甲状腺腫もみられなかった。
いわゆる「低カルシウム尿性高カルシウム血症(hypocalciuric hypercalcemia、HH)」であるが、家族性(FHH)だろうか?
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FHHには1型(CASR遺伝子)、2型(G蛋白α11サブユニットをコードするGNA11遺伝子)、3型(アダプター関連蛋白複合体2のσ1サブユニットをコードするAP2S1遺伝子)が知られているが、いずれも常染色体顕性遺伝であり、世代間の浸透度も高い(日内会誌 2007 96 681も参照)。
(Best Pract Res Clin Endocrinol Metab 2018 32 609より) |
孤発例もありえるが、そもそも本例は以前に血清カルシウム濃度が正常であったことが確認されている。となると、後天性(AHH)も考えなければならない。さらに、自己免疫疾患の病歴、ステロイド中止後の発症(じっさいは、再発)も考えると・・。
A:抗CaSR抗体によるAHH
本例では、CaSRを発現させたHEK細胞に患者血清を添加するなどして、IgG4サブクラスの抗CaSRポリクローナル抗体(CaSRの細胞外ドメインに結合)の存在が証明された。ステロイド量と抗CaSR抗体価・血清Ca値に相関がみられ、ステロイドの再開でコントロールされたという。
AHHでは、抗CaSR抗体によりCaSRのスイッチが入りにくくなる(PTHの抑制が起きにくくなる)。ただし、どの経路を阻害するか(Gq蛋白によるイノシトールトリスリン酸の蓄積、Gi蛋白によるERK1/2のリン酸化)は、抗体の種類によって異なるようだ。
本例や、抗グリアジン抗体・抗甲状腺抗体陽性例(J Clin Endocrinol Metab 2003 88 60)、抗核抗体・抗RNP抗体陽性例(J Clin Endocrinol Metab 2011 96 672)などの「いかにも」な症例だけでなく、高血圧だけの症例(PNAS 2007 104 5443)も報告されており、注意が必要だ。
AHHはおろかFHHの理解すら「ふんわり」の筆者であるが、じつはAHHは日本内科学会雑誌の「今月の症例」に取り上げられている(日内会誌 2014 103 1180;なお前掲PNAS論文も日本からの報告)。「セルフトレーニング」に取り上げられる日も近い?・・かもしれない。
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