2020/01/08

人を指差すときは 3

 読者のなかには、昨年10月の投稿を覚えておられる方もいるかもしれない。浮腫の鑑別診断で、教科書的なもの(心・肝・腎・甲状腺・低栄養・DVT・還流障害・・)を除外して残るのは、全身ないし局所の血管透過性亢進くらいだというお話だった。

 このカテゴリーは腎臓内科以外の科(とくにリウマチ内科)で主に扱う疾患なことが多く、腎臓内科外来にきても紹介することが多い。それでも、できれば「〇〇と考えたのですが、いかがでしょうか・・?」くらいは言いたい。

 そんなわけで、この疾患を紹介する。以前の日本腎臓学会誌にも「稀な疾患ではあるが、特に浮腫性疾患を数多く診療する腎臓内科では鑑別疾患の一つとして常に念頭におくことが正確な診断・治療に重要であると考え」報告され(日腎会誌 2001 43 44)、最近筆者も経験したものだ。


 ずばり、好酸球性血管浮腫(angioedema with eosinophilia)。


 反復的に(episodic)起こるものはGleich症候群とも呼ばれ、基礎に血液の異常(CD3-CD4+のT細胞など、Haematologica 2015 100 300)があると考えられている。こちらは、日本にはあまり多くないようだ。

 いっぽう、日本では反復しない(non-episodic)タイプが多い。典型的には20-30歳代の女性で蕁麻疹や両下肢・上肢の浮腫が出現し、血液検査で著明な好中球増多(1万/mm3以上、白血球分画としても60%以上)がみられる。

 ただし、実際には男性なこともあるし、蕁麻疹や掻痒を伴わないこともある。浮腫を「関節痛」と訴えることもある。好酸球増多も、病初期であればマイルド(2000/mm3未満、白血球分画としても20%未満)なこともあり、注意が必要だ。

 遺伝性血管浮腫などの関連疾患も除外したうえ、診断がついたら治療は経口ステロイドが第一選択で、反応は良好だ。もっとも、ステロイドなしで自然軽快することもあるという。周辺疾患もふくめた詳細は、こちらもご参照されたい。

 

 ご存知の方も多いかもしれないが、筆者は正直これを知らなかった。腎臓専門医試験には出ないだろうが、「腎の中の蛙(写真は、セサミ・ストリートに登場するKermit)」にならぬよう、浮腫の鑑別疾患として念頭におこうと思った。



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