2019/12/05

片腎患者さんの診療を考えてみる(とくにRAA系阻害薬使用に関して)。

みなさんの外来にも片腎で腎機能のフォローを行いながら経過を見ている人はいるだろうか?
先日私の外来にもそんな患者さんがいらっしゃった。片腎で高血圧の患者さんである。
みなさんは、どのように考え血圧の管理をしていくだろうか?

■片腎について
まず、片腎になる理由として先天性のものと後天的に腎臓を取らざる負えない状況(悪性腫瘍、外傷、腎移植での腎提供、生検後の出血)がある。
先天性のものに関しては透析などの腎代替療法が必要になる割合として小児期に40%、成人後は0.6%と言われている。
CAKUT(以前ブログで説明)は様々な重症度にわけられるが、腎の無形成と膀胱尿管逆流症は小児期の腎不全の原因の最多である。

■代償に関して
片腎に伴い、残った腎臓の代償がはたらく。
下図に示したように、腎臓の糸球体や尿細管のサイズにかんしては変化は乏しくネフロンの数が倍増する。また、皮質の肥大化を生じる。

片腎になったあとは1ヶ月以内に残腎の血流量が増え腎肥大が生じる。
生体腎腎移植ドナーの場合を考えてみよう。ドナーは片腎をレシピエントに提供する。
生体腎移植ドナーでは残った腎臓に代償がはたらく。先に述べたような代償機構は特に腎臓にとってリスクがないのかというと、腎臓が突然なくなる場合に残った腎への過剰濾過が生じ、糸球体硬化前の病理像を示したり、腎組織の進行性のダメージをあたえる。そのため、CKDやESRDになるリスクが高くなる(JAMA2014KI2014)。

■RAA系は重要?
胎生期において腎の血管のコントロール、適切な塩分・水分のコントロール、腎臓の発達に非常に重要(Pediatr Nephrol 2014)。 また、RAA系は障害性サイトカインや成長因子など腎ダメージの進展との関連がある。
片腎においても腎機能維持のためにRAA系は非常に重要である。

■その点でRAA系阻害薬の使用は推奨されるのか?
RAA系の使用が先天性or後天性片腎の患者さんのGFR低下に有効に働くかに関して、一部で研究はされているが、はっきりとしてはいない。しかし、腎保護効果はあると考えられている。
・子供にとってAngiotensinⅡの濃度は腎臓の発達や成熟に必要なものである。その点でもRAA系阻害薬の使用は適切である。
・女性はRAA系の活性が低下している(AngiotensinⅡ産生低下と受容体の発現低下)。このことは高血圧や心血管疾患発症をおこしにくくするという点ではいいが、片腎の女性であればRAA系の低下は残った腎臓の機能低下につながる。その点では女性でもRAA系阻害薬の仕様は理にかなっている。
・片腎で高血圧や蛋白尿がでている症例:使用が推奨される。
・腎移植レシピエントへのRAA系阻害薬の使用は推奨されている。

もちろん、RAA系阻害薬使用での副作用には留意しなければならない(下表)
低血圧にも留意する必要があるし、片腎への腎動脈狭窄もどうなのか?にも留意する必要性はある。

■個人的には、片腎へのRAA系阻害薬の使用を女性や子供、蛋白尿の症例には考慮していくべきであると感じた。また、その際には投与後の腎機能のフォローはしていく必要がある(以前の記事)。