2012/10/15

Glycocalyx

 糸球体で血液をろ過する仕組み、という基本的な腎の生理学トピックですら決着がついていないのが腎臓内科の興味深いところだ。一般的には「基底膜が分子量サイズと陰性電荷によってタンパク質の透過をブロックしている」と考えられている。しかし、長らく"retrieval hypothesis(アルブミンは完全に基底膜を透過し尿細管で再吸収されるとする)"と呼ばれる仮説が唱えられていた。

 "retrieval hypothesis"は否定されたが、現在でも基底膜のみならず、血管内皮細胞、そこにあいたfenestration(窓)、基底膜を作るmesangial cell、それに足細胞とそこから伸びた足突起、など様々な要素が血液と尿のinterfaceで物質交換に関わっていると考えられている。現在注目されている一つは、内皮細胞を内側からコートするglycocalyxとESL(endothelial surface layer)だ。

 レビュー(Curr Opin Nephrol Hypertens 2012 21 258)によれば、GlycocalyxやESLを染色する技術のおかげで、それらを除いて蛋白尿が出たという研究結果がどんどん出るようになった。最近のJASNにも出た(JASN 2012 23 1339)。足細胞の異常が報告されてきた糖尿病腎症だが、内皮細胞の異常もあることが分かってきた。内皮細胞・メザンジウム・足細胞のそれぞれが大事ということか。