2011/10/08

NGAL

 今日は小児腎領域でAKI研究の中心人物から話を聞くことができた。この人は"renal angina"という考えを提唱している(CJASN 2010 5 943-949)。AKIの研究で分かっているのは、Scrが0.3mg/dl上昇しただけでも死亡率が4-5倍に跳ね上がるということだ。つまりScrの上昇はAKIのlate markerで、そのもっと前からAKIは起こっているのである。

 心筋梗塞では、CKが上昇するより早期に上昇するマーカーTroponin Tなどが用いられ、さらに狭心症またはangina equivalentといった症状、リスクファスターを総合してできるだけ早期に診断しようとする。AKIも、そのようなバイオマーカーはないものか。AKIを発症するリスク因子はないか。

 マーカーは、NGAL(Neutrophil gelatinase-associated lipocalin)、IL-18、KIM-1、L-FABPなどが実験で用いられ始めている。NGALはとくに早期のマーカーで、たとえば心肺バイパス術後2時間で上昇する。心肺バイパスはinsultの起きる時間がはっきりしているので研究対象にしやすいのだ(Lancet 2005, 365, 1231-38)。またKIM-1は尿細管細胞の膜貫通タンパク質なので、腎臓に構造的なダメージが起き始めてから上昇する。

 この先生はとくにNGALに注目しており、先生の病院では尿NGALレベル(point of care)が試験的に臨床応用されている。NGALが陽性だがScrが上昇していない例は、Scrが上昇している例と同様に予後が悪いことわかった。これを先生はsubclinical AKIと呼んでいる(JACC 2011, 57, 1752-61)。

 リスク因子はどうか。心臓とちがってAKIになっても腎臓は痛まないので、「この症状がある患者さんはAKIの可能性が高い」という症状はない。だが、ICUの患者層を分析すると、人工呼吸器管理、昇圧剤の使用、fluid overload(15%)、造血幹細胞移植後、などはindependentなリスク因子と判った。これらを総合してリスクを層化し、マーカーを使ってAKIをrule inまたはrule outする研究が行われている。

 Scrが0.3mg/dl上昇しただけで死亡率が跳ね上がるということで、腎臓がいかに重要な臓器か分かる。また腎臓がものすごい予備能をもっており、最後の最後までScrは上昇しないことも分かる。また、他の臓器は働きがおちたら負荷をかけないようにするのに、腎臓は働きが落ちても輔液に利尿剤にと鞭打たれるのが可哀そうだ。でもそれでも黙って頑張るのが腎臓だ。