2014/02/25

最近の透析経験 1

 米国から帰って透析患者さんを診るとき耐えなければならないのは「米国透析医療の成績は悪い」という統計的事実だ。しかし患者さんの成績はさておき、「米国透析医療のトレーニングの質」は「日本の透析医療トレーニングの質」に比べてそんなに悪いのだろうか。私はそんなことはないと思う。

 たしかに米国には日本腎臓財団が30年以上前からやって延べ3万人以上を送り出してきた「透析療法従事職員研修」はないし、日本のように透析回診を月水金(または火木土)やったりもしない(「透析療法従事職員研修」は、今いるところに実習に来る人がどんなことをするかは知っているが、集中講義には出ていないのでコメントは控えたい)。

 しかし、日本に「透析バイト」のような診療機会がある一方、私が腎臓内科フェローシップの間にした透析回診では、フェローひとりとスタッフひとりがペアになって、経験豊かなスタッフから透析に関する様々な臨床上の問題を対応する術を学んだ。日本では毎回の透析ごとちがう医師が回診するところもあるそうだが、米国では同じ患者さんを半年担当することでラポールも生まれた。

 だから、自分としては「いくら透析患者さんの生存成績の悪い国からやってきたとはいえ、自分の受けた透析のトレーニングは決して悪くない」と思っている。しかし学び続けなければならないことに変わりはないと日々診療にあたっているが、最近「やっぱりそうだ」と自信になる経験と「それでも甘い」と痛感する経験をした。

 「甘い」経験は、透析患者のシャント関連菌血症。「シャント部の発赤は感度が低い」とはいえ、注意深い観察をすればうっすら紅いことはある。蜂窩織炎ではないので、たとえ紅くなってもうっすらだ。透析患者の発熱でフォーカスが不明なら、たとえ感度が低くてもシャント部は注意深く診察しなければならないし、たとえシャント部が普通に見えてもVANCを始めたい。自信になった経験は、次に書く。