ちょっと先の見えない患者さんがいる。手を尽くしているが、押してもだめ、引いてもだめである。このままジリ貧かと思うときつい。透析医療は、慢性期のどんづまりの医療である。導入された時点で、患者さんは死を意識するという。じっさい、段々状態がわるくなってくる。でも、死を意識しながら生きることに人はたえられない。心の準備ができる人など居ない。
ある意味では、先が見えているのである。しかし、医者がもう助かる方法はありませんと言ったら大変なことだ。死にゆく人のそばにいること。あまり抱え込むと、燃え尽きてしまう。心の底に冷たさを宿していなければ、心の安定を保つことは難しい。