2026/01/15

【専攻医・若手腎臓内科医向け】腎腫瘤(Renal Mass)が見つかったら?腎臓内科医が知っておくべき評価と管理のポイント

ご無沙汰しております。今回、上記のタイトルで記載をしてみました。私も勉強になるので、少しずつブログも再開していきます!

 以前に腎癌についての記載を行っていますのでそちらも参考にしてください。


現在、画像診断技術の向上により、他疾患の検査中に偶然発見される「偶発的腎腫瘤(Incidental Renal Mass)」が増加しています 限局性腎細胞癌(RCC)の5年生存率は100%に近く、**「癌そのもの」よりも「基礎疾患(CKDやCVD)」が生命予後を左右する**時代になっています


今回は、泌尿器科任せにせず、腎臓内科医としてどのように介入し、腎機能を守るべきか、AJKDの最新Core Curriculum(2025)をもとに解説します


1. 腎細胞癌(RCC)とCKDの密接な関係

まず押さえておきたいのは、RCCのリスク因子とCKDのリスク因子は大部分が重複しているという事実です

【RCCとCKDの共通リスク因子】

  • 高齢: 加齢とともに両疾患のリスクは上昇します

  • 男性: 男性に多い傾向があります

  • 喫煙: 確実なリスク因子です

  • 高血圧: RCC患者では一般人口の2-3倍の高頻度で見られます

  • 糖尿病: 術後のCKD発症リスクを増大させます

  • 肥満: RCCのリスクですが、予後はむしろ良い傾向があるという「肥満パラドックス」が知られています

さらに、透析患者(末期腎不全)では一般人口と比較してRCCの発生率が100倍高いとされており、双方向の関連性があります




2. 腎臓内科医による「術前評価」の大切さ

「手術は泌尿器科、その後腎機能が悪くなったら腎臓内科」では遅すぎます。術前の段階で腎臓内科医が介入することで、術後の透析導入リスクを減らせる可能性があります

  • 蛋白尿・アルブミン尿の評価は必須 

eGFRだけでなく、尿蛋白(または尿アルブミン)定量を必ず確認しましょう 。術前のアルブミン尿の存在は、術後のeGFR低下やCKD発症の独立した予測因子です
  • 糖尿病の隠れ家を見逃さない 

術前検査で尿糖陽性や軽度の血糖上昇があれば、未診断の糖尿病がないか精査します 。糖尿病は術後のCKD発症リスクを60%(非糖尿病は43%)まで引き上げます
  • 術前管理チェックリスト

    • 血圧管理: 130/80 mmHg未満を目標にコントロール。

    • 血糖管理: HbA1cの確認とコントロールを行います。

    • 腎機能評価: クレアチニンだけでなく、必要に応じてシスタチンCや腎シンチグラム(分腎機能評価)を検討します

    • 禁煙指導: 必須です


3.治療選択:腎機能を守るための優先順位

かつては「腎全摘(根治的腎摘除術)」が主流でしたが、現在は**「腎温存(Nephron-Sparing)」**がキーワードです

  1. 腎部分切除術 (Partial Nephrectomy)

    • 第一選択: 小径腎腫瘤(T1a: 4cm以下)では、全摘と比べて癌の予後は同等ですが、腎機能温存効果は圧倒的に優れています(CKD発症リスクを61%低減)

  2. アブレーション治療 (Ablation)

    • 適応: 手術リスクが高い患者や高齢者

    • メリット: 腎実質の喪失が少なく、腎機能への影響は全摘より軽微です

  3. 能動的監視 (Active Surveillance)

    • 適応: 高齢、多併存疾患、手術困難例

    • 根拠: 小径腎腫瘤の転移リスクは当初3年間でわずか2%程度です 。腫瘍径が3cmを超えるか、年5mm以上の増大がなければ経過観察も立派な選択肢です

腎臓内科医のスタンス 

「全摘」が予定されている場合でも、CKDステージ3b以降や蛋白尿があるハイリスク症例では、泌尿器科医と相談し、部分切除やその他の温存療法が可能かディスカッションすることが重要です


4. 進行癌と薬物療法:Onco-Nephrologyの知識

進行癌(T4など)で全身化学療法が行われる場合、薬剤性腎障害に注意が必要です

主な薬剤と腎合併症

  • 抗VEGF薬(アキシチニブ、スニチニブなど)

    • 注意点: 高血圧(11-43%)、蛋白尿(41-63%)、TMA(血栓性微小血管症)

    • 対応: 降圧薬での管理が基本です。TMAや高度腎障害時は休薬を検討します。

  • 免疫チェックポイント阻害薬 (ICI)(ペムブロリズマブ、ニボルマブなど)

    • 注意点: 急性間質性腎炎 (AIN)

    • 対応: ステロイド治療が有効ですが、重篤な場合は中止が必要です。




5. まとめ:腎臓内科医の役割

  1. 早期発見・介入: 偶発的に見つかった腎腫瘤に対し、CKDリスク(蛋白尿、DM、HTN)を徹底的に評価・管理する

  2. 治療方針への助言: 腎機能温存(部分切除など)のメリットを提示し、過剰な腎全摘を防ぐ

  3. 術後・治療中のフォロー: 術後のeGFR低下や、化学療法に伴う腎障害(高血圧・蛋白尿・AIN)を管理する


腎腫瘤の患者さんにとって、癌のサバイバーになった後の「腎臓の寿命」を守れるのは、私たち腎臓内科医です。泌尿器科と連携し、最適な治療戦略を立てていきましょう

参考文献 Tillquist K, et al. The Nephrologist’s Perspective in Evaluation and Management of Localized Renal Masses: Core Curriculum 2025. Am J Kidney Dis. 2025;86(5):690-701.